私はその歪みを抱きしめる   作:テレサ二号

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皆さんこんにちは!テレサ2号です!
第1話、たくさんの方に読んでいただけたようで嬉しかったです!
その中でもお気に入り登録いただいた方はありがとうございました!( *´꒳`* )
続きを執筆するモチベーションになりました!!

では、引き続き第2話をお楽しみください!



第2話:Actions speak louder than words

 

「こりゃ黒寄りのグレーだな」

 

畳部屋の押し入れを改造したPCルームでモニターに写ったひよりのプロフィールを見ていた。

 

「何見てんのよ?」

 

畳部屋に入ってきたミズキがモニターを覗き込む。

 

 

Name(名前):Hiyori Hiiragi(柊 ひより)

 

Affiliated post(所属):Tokyo Branch Third operation unit(東京支部 第三作戦部隊)

 

Personal code(個人識別コード):LC03103

 

Total evaluation in operational action(作戦行動における総合評価):C

 

 

 

「なんじゃこりゃ?」

 

「ラジアータに保管されているひよりの個人情報だ」

 

「おまっ!?なに気軽にラジアータにハックしてんのよっ!?」

 

「問題ない。延空木の時にラジアータを蘇生させただろ?あの時に予めボク専用の勝手口を作っていたんだ。まぁもちろん長居したり、深く入り込み過ぎるとラジアータにバレるおそれもあるけどな」

 

『そのスリルが楽しいという面もあるんだよなぁ』とクルミは再びひよりのプロフィールを眺める。

 

「なんか違和感でもあるのー?私にはいたって普通の女の子って感じだけどなー」

 

「もう既に違和感しかないだろ」

 

「例えばどの辺?」

 

クルミは総合評価を欄を指さす。

 

「まず総合評価がCなのがおかしい。ひよりはセカンドリコリスだ。セカンドの平均評価はB〜B+。ひより以外でC評価のセカンドリコリスはいなかった」

 

「でもほら、備考に『後方支援及び作戦立案・補佐に高い能力があると認め特例としてセカンドに昇格とする』って書いてあるじゃない」

 

「バカだなぁ...」

 

クルミが大きくため息をつく。

 

「データばかりにとらわれて考えるのを止めるとドンドンバカになるって前に言ったろ?こんなもの、常套句に決まっているじゃないか。つまりDAとしてひよりを昇格させたい理由があったんだよ」

 

「昇格させたい理由って?」

 

「そこまでは分からん」

 

クルミはモニター上の画面を移動させる。

そこにはひよりの実技訓練のスコアが載っていた。

 

射撃速度:C

射撃精度:G(命中率:2/20)

近接戦闘:E

索敵・空間把握能力:D

模擬戦評価:E

 

「見てみろ、とてもじゃないがたきなと戦えば瞬殺されるようなスコアだろ?」

 

「確かにね...」

 

(それよりも訓練のスコアがこの1回しかデータが無いのがおかしい...)

 

クルミは思考を巡らせる。

しかしひよりに関するデータがこれ以上入っていないのも事実であるため、半ば諦める。

 

「まぁ、何かあってもウチには千束にたきな、ミカがいるから大丈夫だろう」

 

クルミが無造作に画面をスクロールする。

そのうちの1ページにミズキは興味を示す。

 

「これはなんのページよ?」

 

「これはDA内でのひよりの評価だ」

 

そこには『楠木司令のお気に入り』『えこひいき』『最弱のセカンド』など褒め言葉がひとつも無い誹謗中傷で埋め尽くされていた。

 

「まぁ引き続きひよりについては調べてみるが、あまり期待はしないでくれ」

 

クルミはモニターの電源を落とすと押し入れから出て、部屋の外に向かって歩き出した。

 

「どこに行くのよ?」

 

「......風呂だ」

 

「仕事しろっー!!」

 

ミズキの悲痛な叫びが畳部屋に轟いた。

 

 

 

 

所変わってホールでは千束とミカが火花を散らしていた。

 

「...ハァ、先生ホントに分かってない」

 

「いいや、分かっていないのは千束の方だ。全く、ここまでわからず屋とは思わなかった」

 

「錦木様...ミカ様...お二人共落ち着いてください...」

 

2人の間に立たされているひよりは、2人の顔を困ったように右往左往しながら見つめている。

 

そこに出勤してきたたきなが合流する。

 

「おはようございます」

 

「おぉー!たきなぁー!!いい所に来た!!」

 

「たきなの意見も聞かせてくれ!」

 

千束とミカがたきなに駆け寄る。

 

「なんですか?」

 

「ひよりの仕事着についてなんだけどさぁ!?私は絶対黒ベースがいいと思うんだよねっ!!ちょっと給仕係っぽくて絶対似合うと思うの!!」

 

「それはダメた!!ひよりには水色の和服が似合うに決まっている!」

 

「だーかーらーっ!水色も悪くないけど、ひよりの素材を活かすなら絶対黒なんだってばっ!」

 

「違うと言っているだろう!」

 

「待ってください!」

 

ヒートアップする2人にたきながストップをかける。

 

「正直、ひよりはどちらでも似合うと思いますが大事なのはそこではありません。店長、和服の色味が分かる布などはありませんか?」

 

「あ、あぁ...布地のサンプルがあるから持ってこよう」

 

約20種類程度の布地が並べられる。

 

「千束さん的にはー、やっぱりこのブラーックが似合うと思うわけですよ」

 

「いいや、水色だっ」

 

「2人は黙っていてください」

 

たきなはひよりの前まで歩いて行き、ひよりと目線を合わせる。

 

「色はひよりが選んでください」

 

「わ、私がですか!?私はどれでも構いませんっ...。なんなら水着でも大丈夫です!」

 

「そこは倫理観を持ちましょう...」

 

「うちはそういうコンセプトのお店じゃない...」

 

たきなとミカは同時に複雑な表情を浮かべた。

 

改めてたきなはひよりが選ぶことの重要性を説く。

 

「いいですか?今後ひよりは自分で何事も選べる人間にならないといけません。仕事着の色を選ぶことはその第1歩です。千束や店長の好みではなく、ひよりがいいと思った物を選んでください。2人もそれでいいですね?」

 

「でもさーブーブー」

 

『ガチャッ』

 

たきなが無言でハンドガンのスライドを引く。

 

「おーけー、無問題(モーマンタイ)だぜ」

 

千束は両手を上げ、たきなの提案を承認する。

 

「ではひより、選んでください」

 

「は、はい。分かりました...」

 

ひよりは数ある布地を1枚1枚触って真剣に吟味し、最終的に薄い桜色の布地を選んだ。

 

「...コレがいいです...」

 

「薄めのピンク色ですか、ひよりに似合うと思います。私はこれ以上のチョイスは無いと思いますが?」

 

たきなは2人に同意を求める。

 

「ひよりが選んだのであればそれが一番だろう」

 

「異議なーし!」

 

「では決まりですね」

 

「それじゃあこの布地で呉服屋に依頼する。できあがるまでは、お店の割烹着を着ておいてくれ」

 

「はい、分かりました」

 

ミカは布地を片付け始める。

その中でミカからたきなに今後のひよりの指導について話された。

 

「ひよりの指導はしばらくたきなが受け持ってくれ」

 

「分かりました」

 

「えー、私じゃないのぉ?」

 

「たきなは教えることより教わることの方が多かったからな。教えることで新たに学ぶことも多いだろう」

 

「確かにねぇ」

 

「店長としてはひよりはホールとキッチンどちらが良いと思いますか?」

 

「最初はホールで構わん。ゆくゆくは誰かにキッチンを覚えて欲しいものだが」

 

「分かりました。ではひより、今日は私と一緒にホールでの接客を覚えましょう」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

たきなはお店の入口に掛けられたプレートを『CLOSE』から『OPEN』にひっくり返した。

 

それを受け、数分後には常連客である漫画家の伊藤が入ってきた。

 

「こんにちはたきなちゃん、今日もゆっくり原稿を描かせて貰うわね?」

 

「いらっしゃいませ。お好きなお席へどうぞ」

 

「たきなちゃん、私はいつもry...」

「シーッ!...注文はお席に着いてから改めてお伺いさせてください」

 

たきなは伊藤の注文を敢えて受けず、席に着くことを促した。

 

いつもとは違うたきなの対応に伊藤は少し戸惑いながらも案内されるまま席に着く。

 

「ではひよりオーダーを取って来てください」

 

「は、はいっ!オーダーを伺う際に何か気をつけることはありますか?」

 

「そうですねぇ...やはり接客業ですかお客様におもてなしの心を持って笑顔で接することでしょうか」

 

「それ、たきなが1番足りてないとこだけどな」

 

カウンターに座っているミズキがたきなに茶々を入れる。

たきなは軽く睨みをきかせてミズキに牽制を入れてからひよりの背中を押す。

 

「で、では行ってきます」

 

「はい、頑張ってください」

 

ひよりは伊藤のもとに向かうとオーダーを撮り始める。

その様子を少し離れた所から千束とたきなが見つめている。

 

「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」

 

「あら、新人さん?」

 

「はい、昨日付けでこちらの部署に所属になりました柊ひよりと申します」

 

「この部署?系列店が他にもあるの?」

 

「そういうコンセプトなのでお気になさらずにー!!」

 

離れたところから千束が叫ぶ。

 

「そういうことなのね。それじゃ私はオリジナルブレンドを...」

 

「オリジナルブレンドですね。承りました」

 

ひよりが頭を下げると伊藤はひよりの頭上からつま先までを見る。

 

「...しっかしまた可愛い子が入ったものね...」

 

「私ですか?私なんて他の皆さんに比べたら...。錦木様と井ノ上様はお可愛いですし、中原様はお綺麗です。ミカ様は...」

 

ひよりはジッとミカを観察し言葉を絞り出す。

 

「ミカ様は、こ、心が綺麗です!」

 

「無理して絞り出さなくていいぞ...」

 

「ブッ!」

 

千束が口元を押さえながら大きく吹き出した。

 

「そういえばクルミちゃんは?」

 

「クルミ様?」

 

「そういえばもう1人紹介がまだだったな。おーい!クルミ!!」

 

「そんなに大きな声を出さなくても聞こえている」

 

ロッカールームから自身の黄色の和服に着替えたクルミが出てきた。

 

「ひよりだな?話は聞いている。これからよろしくな」

 

ひよりは言葉を失ったように無言で1歩1歩クルミに歩み寄る。

 

(ま、まずい...僕の正体に気づいたのか?)

 

「かっ...」

 

「か?」

 

「可愛い...」

 

ひよりは人形を抱きしめるようにギュっと優しくクルミを抱きしめた。

そしてその表情はこの店にひよりが訪れてから最も明るく素晴らしい笑顔になっていた。

 

「よろしくお願いします。クルミちゃん」

 

「なんで僕だけクルミ”ちゃん”なんだ...。僕はこれでもお前より先輩で年上なんだ」

 

「分かりました分かりました。可愛いです可愛いです」

 

「ハァ...」

 

ひよりの奇行に若干呆れながらも、可愛いと言われること自体は満更でも無いので、ひよりの行為を受け入れた。

 

 

 

 

「我を忘れて申し訳ありませんでした...」

 

ひよりは先程までの奇行を全員に詫びていた。

 

「私、小さくて可愛い物を見るとついつい見境が無くなってしまって」

 

「誰が小さいだ」

 

「可愛いは否定しないのかよ」

 

「そこは事実だからな」

 

「あーハイハイ」

 

ミズキはクルミの言葉を華麗にスルーする。

 

「まぁこれでこのお店の全員に挨拶できたわけだね」

 

「はい、皆様にちゃんとご挨拶できて嬉しいです」

 

「落ち着いたところでブレンドが上がったぞ。運んでくれ」

 

「はい、承りました」

 

ひよりはミカからコーヒーを受け取ると伊藤のもとへ運ぶ。

 

「お待たせいたしました。先程はお騒がせして申し訳ありません」

 

ひよりは伊藤から取っ手が左手で掴みやすい位置に置く。

 

「いいのよ。どうせ私は長時間ここにいるし!それにしてもあなた、本当に整った顔立ちしてるわね」

 

「そうですか?気味が悪いとかおすまし人形とか言われてきたので自分ではそうは思いません」

 

「そうなの!?こーんなに可愛いのにー!!」

 

伊藤はひよりを引き寄せるとギュっと優しく抱きしめて頭を撫でる。

 

「ちょいちょーい!伊藤さん!店員への過度なスキンシップは御法度ですよー!」

 

「そうです!!出入り禁止にしますよ!!」

 

「た、たきなちゃん怖いっ!!」

 

珍しくたきなの目が血走っている。

 

たきなはひよりを自身の方に引き寄せると『怖かったねー』となだめながら頭を撫でた。

 

 

 

 

それからしばらくは順調に仕事をこなしていたひよりにミカが声をかける。

 

「ひより、少しいいか?」

 

「はい、どのようなご用件でしょうか?」

 

「なぁに畏まらなくていい。さっきおはぎセットをお客さんに出す前に飾り葉と黒文字の位置を微調整していたな?アレは何故だ?」

 

「ち、注文されていたお客様が頻繁にお写真を撮られていたのでより綺麗に写る角度が良いと思い整えさせていただきました」

 

「なるほど...。ではパフェを出す前にお皿をナプキンで少し拭いていたのは?」

 

「ワッフルの粉が少しお皿にこぼれたのでお客様が不快に感じないようにと思いました。勝手な判断をして申し訳ありません」

 

「なぁに謝ることは何もない」

 

ミカがひよりの頭をポンポンとする。

 

「なぜそうしようも思ったんだ?」

 

「先程、井ノ上様から『おもてなしの心』を持つようにご指示いただきましたので」

 

「そうか。ひよりは良く周りや物事が見えているな」

 

「勿体ないお言葉です」

 

「その辺はもう少し、千束やたきなにも見習って欲しいところではあるな」

 

「「はーい」」

 

ミカに変わって次は千束がひよりの頭をポンポンと撫でて、『良かったね』と褒めた。

 

「ちさとー、それは私の役割です」

 

たきなが拗ねたように千束にジト目をする。

 

「チッチッチッ、褒めるのは誰がいくら褒めてもいいのだ」

 

千束がたきなにバトンタッチと言わんばかりにウインクをする。

 

千束続いてたきながひよりの頭をポンポンと撫でる。

 

「良くできました」

 

「...はい、ありがとうございます」

 

ひよりはお店の雰囲気とみんなの暖かさに少し笑顔を見せた。

 

「あっ、千束っ!!」

 

「見た見た!ひよりが笑った!!可愛いー!!」

 

千束とたきなが声上げて喜ぶ。

その中心にいるひよりは少し恥ずかしそうに俯いた。

 

一連のやりとりを遠くから見ていたミズキやクルミにも笑顔が伝染していく。

 

「ひより、明日からは私の補佐に入ってくれ。ホールもいいが、その丁寧な仕事ぶりはキッチンの方が真価を発揮しそうだ」

 

「はい、よろしくお願いいたします」

 

ひよりが丁寧に頭を下げる。

ひよりはこのお店での自分の役割を与えて貰った気がして嬉しくなると同時に、気を引き締めねばと新たに手綱をしっかり引き締め直すのであった。

 

 





いかがでしょうか?

第1話と比べて少しずつひよりの表情が明るくなって来てます!
喫茶リコリコで少しずつ変わっていくひよりを引き続き見守っていただけたら幸いです(*・ω・)*_ _)ペコリ

では、お気に入り登録や感想などお待ちしております!
ではまた次回!(。・ω・)ノ゙
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