ブルアカ本編とストーリーが異なっています。
ベッドの横にある棚に置いてあった、一丁のリボルバーと睨み合う。
メガネと同じ位置に置いてあったことを考えると、やはり持ち主はピーターなのだろう。彼が引き金を引くとは到底考えられないが、きっと、銃を持ち歩くのが当たり前なキヴォトスに合わせた結果だと思う。
郷に入っては郷に従えってやつだ。ピーターがそうしていたのなら、僕も一応持っておこう。腰のホルスターにでも入れといて……。
……それより。
「僕、保健室と近くの路地にしか行ってなくね?」
そりゃまあ起きて1時間も経ってないけど、このまま此処に居続けても前には進まない。とりあえず家がどこにあるかとか、今はどの時期か……。
いや待てよ、さっきユズが「まだミレニアムの生徒じゃない」って言ってたよな……。さっきの記事もっかい開くか。
……うーん、ウタハの名前の横に(ミレニアム2年生)って書いてある。
参ったな、本編時点ではユズは1年生、ウタハは3年生だったはず。
つまり、今は本編より1年……いや、外の気温から考えるに数ヶ月前ってとこか。結構寒かったし。
どうせなら先生が来る前にキヴォトスの厄ネタも解決して……いや、僕はピーターとして平穏に暮らすって決めたじゃないか。自分から首突っ込んでどーすんの。
本編開始前は分かんね〜、とりあえず歩きながら色々探してみるか。
ミレニアムエキスポ……つまり科学博覧会みたいなイベントもやってるみたいだし、ピーターの人格を呼び戻す手がかりが見つかるかもしれない!
「……と思いつつ、ミレニアムエキスポに来たはいいものの」
全く、まっっっっったく分からない。
やけに専門的な知識が必要な美容液や、いつ使うのかも分からない観葉植物の打ち上げ装置、おにぎりの米粒の数を数えるAI……。
僕の知識不足なのか、キヴォトスではこれが流行りなのか……。それなりに人が集まっているところを見ると、ウケは良さそうに思える。ほとんどミレニアムの生徒だけど。
さっきから見てるのはこんな展示ばかりだ。面白くないといえば嘘になるけど、手掛かりになりそうなものはひとつもない。
そんなことを考えながら人の流れに沿って会場をぶらりぶらりと歩いて回る。
周囲には色んな学園から集まった生徒達が居て、みんな楽しそうに展示を見て回っている。
研究成果を嬉しそうに発表する生徒、友達と一緒に発明品に目を輝かせる生徒、発表に聞き入る中学生くらいの生徒。
「……普通の学校みたいだ」
腰にぶら下げている銃を除けば、その光景は青春そのものだ。
さっきの戦闘が嘘のように、みんな年相応の笑顔を見せている。彼女達が銃を撃ち、撃たれても平気だなんて……あまり実感が湧かない。
人集りができている展示もいくつか見つけた。
人が多くて近くでは見れなかったけど……『衝撃波を放つガントレット』や、『剣が何重にも連なった翼』、『自在に壁を登れる鉤爪』などが確認できた。
凄いね〜、まるでショッカーとヴァルチャーとプラウラーの武器みたいじゃん!!! すっげぇや!!!
正直、めちゃくちゃ頭を抱えた。
近くのベンチに腰掛けて、何十回とため息を繰り返す。嫌な予感しかしない。
スパイダーマンとして活動しない限り、ヴィランやスパイダーマンに因縁のあるキャラは出てこないと考えていた。
だが、こうもハッキリとヴィランの伏線をお出しされるとは……スパイダーマンが出てこない限り悪用されないとも考えたが、あの人集りの中に悪人が1人もいないとは断言できない。
そもそも、この世界にはヒーローが1人も居ないと勝手に考えていた。
アークリアクターは開発されたばかりだし、ピーターはついさっき蜘蛛に噛まれた。雷神なんていないだろうし、超人血清も存在しないはず。
しかし、ニュースアプリを開いて『ヒーロー』で検索すれば驚くほどの量の記事が出てきた。
えーっと
『[トリニティの悪魔]現る! 黒いマスクの自警団にご注意を!』
『ゲヘナの夜に煌めく怪しい炎のバイク! ヤツも悪魔の仲間か!?』
『突如としてヴァルキューレに飛来した魔法のハンマー! 持ち上げる者は現れるか!?』
ああもう、心当たりしかない。
というか、最後以外はヒーローってタグ付けされてるだけで記事では悪者扱いじゃないか。
……よく見たら『デイリービューグル』って書いてるな。
ちくしょう!! この世界にも居るのかよJJJ!!
他の記事は……火事から子供を救ったり、強盗を止めたりか……。たしかにヒーローだな。
3枚目のハンマーは多分ムジョルニアか? 記事にも『誰にも持ち上げられない』って書いてあるし、写真も見覚えのあるハンマーだ。まさか、ソーが落ちてくる……?
まぁでも、僕が探していたヒーローは今のところ2人だけだ。
恐らくトリニティにはデアデビル、ゲヘナにはゴーストライダーがいるはず。クライムファイターしか居ないの?
いやまぁ、ガーディアンズとか居ても宇宙の脅威が増えるだけだから別に構わないけどさ。キヴォトス三大校にそれぞれヒーローが居るなら、ミレニアムにも1人くらい居ても良くない?
……いや、僕は違うぞ。きっと、その役割はピーターが担うはずだったんだ。
でも今は僕がピーターで、だけど僕はピーターじゃないからスパイダーマンになっても上手くやれないだろうし……。
うわーん! 難しいことは考えたくないです!
一応、他の学園について調べておくか。デイリービューグルのことだし、ヒーローのタグ付けしてないだけでそれっぽい人は居るかもしれないし……。
百鬼夜行は……うーん、怪しい影を見たってくらいか。ヒーローとは断言できないな。
山海経は……特に目立った記事はないな。サヤ辺りが何か作ってそうだけど。
SRTも特になし、連邦生徒会が学園存続のために頑張ってる……か。
レッドウィンターもなし……よく考えたら嫌な予感しかしないな、ここ。ヒドラとか出てきたらいよいよ手がつけられなくなるんだけど。
「まぁあとはアビドスか……。」
ポチポチとキーボードをタップし、馴染みのある学校名を打ち込む。
アビドスといえば、我々先生がいちばん最初に訪れる学校だ。
かなりイレギュラーだし、他の学校とは色々と事情が違うところだけど……個人的にはとても思い入れのある学校だ。
表示された記事は、やけに少なかった。まあ無理もない、かつてはマンモス校だったらしいが、今は砂と借金で埋もれている。
そうだ、ミレニアムの発明品で得た収益をちょっとばかりアビドスに寄付して……。
なんて、ユメを見ていた自分がアホらしく感じた。
「……え?」
記事をスクロールしていた指が止まった。
そこに並んでいた文字を、何度も何度も読み直す。
『アビドス高等学校、廃校』
自分の目を疑いたくなるような文字列が、そこにあった。
どうやら、僕の知るキヴォトスとはかなり違うらしい。