大いなる青春には大いなる銃弾が伴うらしい   作:ネギャー

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 アビドス編、あるんでしょうか




ちゃんと天才らしい

 

「……それで、慌てて私に所へ来たのかい。ピート」

 

 

 六角レンチを片手にロボットアームのような機械を弄るウタハ、その正面に腰掛ける。

 

 『アビドス廃校』の文字を目にした時から頭が真っ白になって、気付いたらエンジニア部の部室に居た。

 無意識下でピーターの頃の記憶が蘇ったのだろうか? 本来知るはずのないエンジニア部の部室に辿り着いているし、ウタハと居ると不思議と安心する。

 

 ……でも思い返せば、気が動転してる中でもミレニアムの校内マップを確認してエンジニア部の部室を探していた気もする。

 どちらにせよ、ウタハを頼ったのは確かだ。

 

 

「倒れたせいかちょっと記憶が混濁してて……アビドスが廃校になったって本当?」

 

 

 缶コーヒーを口にしながら、チラリとウタハを見てそう聞いた。

 正直、廃校になった事実は半分認めている。だが、心のどこかでは『まだ残っているんじゃないか』と期待してしまう。

 

 しかし、僕の言葉を聞いたウタハはピタリと手を止め、ゆっくりと此方へ視線を向ける。

 まるで信じられないものでも見たかのように、眉を顰めて小さく首を傾げた。

 

 

「……ピート、最近の出来事で覚えていることは?」

 

「ど、どうしたの急に……覚えてることって……」

 

 

 言い訳が思いつかない、できる限り僕はいつも通りのピーター・パーカーとして過ごすつもりだったのに……流石に記憶がないことは隠し切れないか。

 

 

「……覚えていないんだね、記憶喪失ってやつだろう。ちゃんと検査は受けたのかい?」

 

「あぁ〜……まあね? でもほら、ウタハの名前は覚えてるし。僕の友達はカヤで、ミレニアムの2年生……でしょ?」

 

「短期的なものかな、アビドスの事も覚えているし……ショックだろうけど、アビドスは廃校になったよ。1年ほど前にね」

 

 

 ……待って、1年前? そんな前に廃校になったの?

 ってことは、ホシノが1年生の時……ノノミもシロコも居ない時か。

 ユメ先輩も居ないだろうし……ホシノ、今何やってるんだろう。

 

 確かシロコはアビドスで彷徨っていたところをホシノ達に保護されたんだよね……じゃあマズくない!?

 アビドス編でも最終章でも重要なのに……いや、廃校になってるからアビドス編はないのか……じゃあエデン条約編の覆面水着団は!? ウトナピ……何とかの本船は!?

 ああもう、色々マズいよ!!

 

 頭を抱える僕を横目に、ウタハがヘルメットのような装置をデスクから引っ張り出してきた。

 

 

「今すぐ全てを思い出したかったら、以前私が発明した『走馬灯フラッシュバックくん』を貸すよ」

 

「名前からして危なそうなんだけど……どういう仕組み?」

 

「簡単さ、頭に直接電流を流して、臨死体験をしながら過去の記憶を呼び戻す……ピートが使ったら本当に死んでしまうかもしれないけどね」

 

「じゃあダメじゃん!」

 

「……はは、そういう所はいつもと変わりないね。少し安心したよ」

 

 

 恐ろしい装置を戻しながら、ウタハは微笑む。

 アビドス廃校の件を忘れてるのが余程ビックリしたのか、先程よりも安堵していることが伺える。

 そうか、アビドスはもうないのか……。

 

 だとすれば、本来アビドスに所属するはずだった生徒、アビドスに所属していた生徒……ホシノは今どこにいるのか。

 どこかの学園に編入していることを祈ろう。1年経ったのだから、きっと上手く馴染んでるはずだ。

 

 

「……あ、そうだ。僕家がある場所も忘れちゃってさ……ウタハ知ってる?」

 

「ふむ、それは問題だねピート。何せ、私も……恐らく君の友達も家の場所を知らない」

 

「マジ? ……参ったな、記憶を取り戻す手掛かりになると思ったのに」

 

「『同居人』が居るとか、ミレニアムからかなり離れた場所にあるとかで、行く機会が無くてね。ただのマンションって言ってたような……」

 

 

 同居人か、その人と話せばピーターのことをもっと知れるかもしれない。

 

 

「ねぇ、その同居人って人の名前わかる?」

 

「それも忘れてしまったんだね……残念だけど、私は聞いたことないな」

 

「そっか……モモトークにそれらしい名前もトーク履歴もないし……どうしたものかな〜」

 

 

 背もたれに寄りかかり、天井を見上げる。

 まさか自宅が離れた場所にあるなんて、パーカーラック(不運)と合わせたらとんでもない遅刻魔なるんじゃないか?

 

 

「ここで良ければ寝泊まりして構わないよ。アークリアクターを作る時も数週間ここで寝ていたしね」

 

「そうさせてもらうよ……そうだ、僕が使ってた教材とかある? 時間があるうちに復習したくてさ」

 

「ああ、だったら階段を登った先にあるピートの個室にあるよ。こんな時でも勉強とは、関心するね」

 

「ど〜も〜、それじゃあお先に失礼」

 

 

 ひらひら〜と、ウタハに手を振って個室に入る。

 内装は至ってシンプルで、至る所に発明品が置いてある。木製のデスクと丸い椅子、デスクの上には教材らしきタブレットと図面が置いてあった。……これアークリアクター?

 

 とりあえず、ピーターに追いつくために勉強しないと。全く自信ないけど……やるだけやってみよう。

 

 

数時間後

 

 

 追い付いた。

 自分でもビックリだ、化学の点数は良い訳でもなかったし、数式なんて苦手だったはず。

 

 でも、目に映る技術は頭の中にスルスルと入ってくるし、数式も一度見ただけで完全に覚えた。

 勉強してるってより、本棚に元々置いてあった本を収納していく感覚に近い。脳はピーターのままだから、知っている知識は当然のように受け入れてくれる……のかな? 流石は天才だ。

 

 ……案外、いけるかもしれない。

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