やりたいことを全力でやる   作:SGMY

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全力で燃えてみた

いつからか知らないがいつの間にか誕生していた悪の組織『フリーム』。トップである自称異世界から来た魔王ユメナシは幹部や怪人達を生み出しこの世界を侵略しようと人々へと攻撃を開始した。だが何処からか知らないが魔法少女や巨大ロボットを操るヒーロー達が生まれ、日夜フリームと戦い人々を守ってきた。

 

そんな世界で今日6月9日、時間は夜の7時を過ぎた頃だ。1人ケーキ屋から出て夜の街を歩いている男がいた。その名も―――いや、伝えなくてもいいだろう。何処にでもいる普通の名前だから誰からでも覚えやすいし何処かでしれっと出てもそのまま流されるだろう。

 

その男は今日が誕生日であり、ケーキ屋で予約していた誕生日ケーキを受け取り家へと帰宅途中だった。街灯とお店の光が男の道を照らし、何台もの車が車道を通っていく。

 

「今日から15歳なんて信じられるかよ」

 

両親は海外に出張中、他に誕生日を祝ってくれるとしたら昔からの双子の幼馴染ぐらいだろう。2人が来ても良いようにとちょっと大きめなケーキを頼んだ男は足早に家へと向かう。

 

丸く綺麗に見える月を見上げていると道路を挟んだ反対側の歩道から聞き慣れた笑い声が聞こえた。いや聞こえてしまったと言ったほうがいいだろう。

その笑い声の主は男の幼馴染である双子の2人だ。だが今は2人ではなく、見知らぬ男性を挟む形で歩いていた。

 

「おっと、あの2人に彼氏なんていたのか」

 

今までほぼ一緒に育ち、一緒の時間を過ごしていた男は双子に彼氏がいたという現実を素直に受け取り、同時に祝福した。

今まで幼馴染達には迷惑を沢山かけて甘えていた男だがこの日を境に心を入れ替え、2人がいなくてもしっかり生きれる男になろう。そう心に誓い2人に気付かれないうちにと足早にその場を去った。

 

「あれ?」

 

双子が完全に見えなくなったあと、男の頭の中に1つの考えが過った。

これはチャンスなのではないだろうか?男には1つ、夢があった。幼い頃に見た夢、それを叶えるためには自分自身が1人にならないとできない。そんな夢があった。

 

「祝ってる場合じゃないぞ!?」

 

男は崩れやすいケーキの存在など忘れ、急いで帰宅し、ケーキを放り投げて自室へと向かう。男の部屋は大きめのベッドが1つと天井まで届くぐらい大きな本棚が2つあり、男は本棚にある1冊の辞書と書かれた箱を取り、その中から本を出して机に広げる。

 

「いける、いけるぞ…!」

 

その本の表紙には『異世界と繋がる本』と書かれ、なんとも胡散臭い本を持ってるんだと今更ながら思う。しかしこれはただの本屋で見つけたわけでも胡散臭い詐欺師などから購入したものでもなかった。

 

「あの日、俺が見た()()()()()()()()()()…!」

 

この本は男が幼少期に見たどの子供が見るような夢の世界から目覚めた時に男が持っていた本。夢の内容を今でも覚えている男はまず絵の具で本に書かれているのと同じ魔法陣のようなものを描く。

黒い絵の具で大きな円を描き、円の中にもそれぞれ赤、青、黄色、緑の円を描く。その円の中にそれぞれ星を描き、余ったところに白い絵の具で漢字の『夢』で塗り潰すように重ね重ねて書く。

 

男は本に描かれるものと全く同じ物を描き終わると魔法陣の真ん中に立ち、カッターで両腕の手首に傷を作る。傷が下になるよう腕を前に出して男は呪文のような何かを唱えた。

 

「永遠の夢、叶う時、厄災来たれり、夢奪われし時、我蘇りし時、夢は永遠、それが永遠の夢―――」

 

男がそれを唱え終わると同時に魔法陣が中央から外側へと燃え始める。炎は円を描き、星を描き、魔法陣を焦がす。その炎が渦を描き男を包み部屋の物を焦がしていく。

 

『ダレダ』

 

男でも女でもない誰かの声が部屋に響く。男は恐れを知らぬのか、その声の主の名を叫ぶ。

 

「魔王ユメナシ!であってますか!?」

 

その名は今世界を恐怖に包もうとする悪の組織『フリーム』の親玉だった。炎は人の形へと姿を変え、男の前へと降り立つ。

 

『ソウダ』

「あの!早速で悪いんですけど、ボクの夢叶えて貰っていいですか!?」

 

炎状のユメナシは溜息を吐き、夢は叶えられない―――と男の夢を拒否したが続けて聞くだけ聞いてやろう。と男の夢を聞いた。

 

「はい!自分だけの理想の怪人とか怪獣とか作りたいです!!なので悪の組織に入れさせてください!!」

『ハ?』

 

ユメナシは呆気に取られていた。この男の夢、それは自分の理想の存在を作り上げること。そのために人権などを大切にする平和な世界では無理だと判断し、人権などないだろう悪の組織へと加入することを決意していた。

 

しかし男はこれだけでは入れてもらえないだろうと考え、今までのヒーローとの戦闘やフリームがしてきた民間人への襲撃などを研究し、幾つかの計画をユメナシへと話した。

 

『……イイダロウ。オマエノゆめヲカナエヨウ』

 

ユメナシは男を自身の炎で包み込む。最初は驚いていたが熱さを感じなかった男はそれを受け入れる。炎は広がりやがて家全体を包み込む。遠くから消防車のサイレンが聞こえる。男とユメナシを包むその炎はやがて細い火柱に変わりその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

6月9日、1つの家が全焼した。消防車や警察が駆けつけた時にはもう全て炭へと変わっていた。現在も警察が周辺地域の調査を―――

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