翌日、ヒートグリフォと共に街にある1つの建物の屋上にて座り込んでいた。なぜそんなことになっているのか、前日の襲撃の件はどうなっているんだと聞かれると少し難しい。なぜならハル自身もわかっていないからだ。
「はい、お兄さんと妹さん」
今、2人は少し広めの屋上にいるのだが、そこでアイス屋さんがあった。ハル自身はアイスにさほど興味が無いためスルーしようとしたのだがヒートグリフォはアイスが大好物のようで、襲撃そっちのけでアイスを買いに向かってしまったのだ。
「あ、ありがとうございます」
店員さんに軽く御礼を言ってアイスを食べ始める。この時期のアイスは中々美味いと聞くがハル自身はアイスよりもソフトクリームのほうが良かったと若干がっかりする。
しかしヒートグリフォがアイス好きとは思わなかった。ヒートグリフォは文字通りヒート、炎操る怪人と聞いている。冷たいのは嫌ってたりしていると思っていたがどうやら違うらしい。
「それで、怪人はいつ出せばいいですか?」
「もう作ったのか。しかし何処に…」
ヒートグリフォは辺りを見渡して怪人を探すが見当たらない。それはそうだ。こんな人がいるところで怪人なんて出せるわけない。ハルはアイスを食べながら腰に着けてある赤と青で別れている2つのポーチのうちの片方、赤色のポーチに手を入れ1つビー玉のような物を取り出す。
「これです。ヒーロー達が来ていい感じに暴れる怪人。その怪人の素です」
素ということがどういうことなのか、ヒートグリフォにはわからなかった。ハルは辺りを見渡し何かを探す。が、見つからないようでビー玉をポーチの中に戻す。
ハルはソフトクリームを舐めながら疑問に思ったことを聞く。それは怪人が倒されたあとの話だ。怪人が倒されればすぐに帰るのかな、それともそのままヒーロー達と戦うのか。
「ドクターが作った生物兵器、怪獣を呼び出す」
怪獣という言葉に胸踊るハルは今までどのような怪獣を呼び出したのか聞いた。だがヒートグリフォの解答に驚き、そして引いた。
「同じ怪獣ばかり呼んでるんですか…?」
聞けば新しい怪獣を作るにはコストが高い上に時間がかかる。なので倒された下っ端戦闘員や怪人を混ぜて作る怪獣が安価で早く作れるとのことだった。
生物兵器というのはそういうことなのだろう。列記とした生き物ではなく、改造し命令しか聞けない怪獣、生物の冒涜とも言えるそれは兵器として呼ぶしかない。
「なるほど。ではこちらの飴を―――」
ソフトクリームを食べ終わるのと同時にハルは先ほど見せたポーチとは別のもう一つのポーチから飴を1つ取り出す。それについての説明を軽く済ませ、未だに食べているヒートグリフォよりも先に街への襲撃準備をする。
ヒートグリフォと別れたハルは下の階へと向かった。
降りた先は衣服や小道具など、日用品などを売る店が幾つも並んでいた。ハルは今ここがショッピングモールだと言うことを知る。ドクターサウイが作り出したワープゲート、それを使いここの屋上に来たため下の階層に何があるのか知らなかった。
「ショッピング…何か良いものがあるかもしれない」
ヒートグリフォが食べ終わるまで自由だと考えたハルは3階層に別れているショッピングモールを回ることにした。服屋で着るかわからない服を選び、普段読まない難しい本を取り、並べられている小物のインテリアを見る。
1つ手に取り、これは違うと元ある場所へと戻す。ガラス製の物を慎重に置き、そのお店を離れる。
「あの部屋はリフォームしないとまともに物置けなさそうだな…ん?」
天を見仰いでいると向かい側の1つ上の階に少し面白そうな物を見つける。それはアニメやゲームのグッズなどを置いているお店だった。入り口を2つのパネルで挟んでいる。
そのゲームをやったことがあるハルは懐かしいと中に入ろうとして入り口で止まる。
「なんだこのキャラ…」
入り口から入ってすぐのところに置いてある棚。その中段に何かのキャラクターのグッズがあった。それだけだった、それだけなのだがハルにとってはそれ以上のことだった。
「く、くノ一だと!?」
女性の忍者キャラ、長いマフラーで口を隠し、両手にクナイを持ち臨場感があるその絵を見て何かを閃いたハルは近くの服屋へと向かった。
「そうだよ、今顔丸出しじゃん」
悪の組織的に素顔がバレるのは如何なものかと思い、フードパーカーを買い、季節外れのマフラーを買った
店員から少し不審な目で見られたが寒い地域に行くためと聞かれてもいないことに答え、支払いをしてすぐにお店を出た。買い終わりお店を出たハルに背後から声をかける者がいた。
「見つけた。何をしている」
ヒートグリフォだ。フードパーカーを被り、ファスナーを首元まで上げる。フードを深く被るがヒートグリフォにフードを無理矢理脱がされてしまう。
「それで見つけたのか」
見つけたのか、それはこの怪人の素を使う相手。一般人のことだ。周りを見渡せば一般人は幾らでもる。しかしハルにはこだわりがあった。
「せっかくなら物凄い負の感じがしている人がいいんですよ」
再びフードを被り、ハルは歩き出す。その後ろをついてくるヒートグリフォには拘る理由が分からなかった。誰でもいいのではないかと聞くがハルは手すりから少し顔を覗かせ下の階層を見る。家族連れや友人、恋人と来ている人が多く、ハルが望むような人はいなかった。
「お、良さそうな人がいますよ」
スーツ姿の男性がショッピングモールの1階で一人座っていた。ハルはエスカレーターを使い急いでそのサラリーマンのところに向かい、話しかける。
「ねぇお兄さん、どうしてそんな落ち込んでいるの?」
お兄さんは溜息を吐きながら死んだような目で少し、本当に少しずつ話始めた。聞けば同棲していた彼女に浮気され、会社では同僚に成果を取られ、上司からのパワハラに押し潰されそうになっている。
「そっか」
ハルはお兄さんに共感するように優しく話しを聞き続ける。お兄さんはたったこの1ヶ月で好きだった相手、そして自分の頑張りを奪われた。
「ねぇお兄さん。あなたの夢、教えてくれない?」
突然のことで困惑するお兄さんだが夢が何だったのかを教えてくれる。それは好きな人と幸せな家庭を築くこと。しかし今はこのまま何処かに行きたい、このまま消えたい、それが夢だという。
「ならさ、一緒に夢叶えない?」
ハルは最初にヒートグリフォに見せたビー玉のようなもの、怪人の素を彼の口に入れる。彼は抵抗なくそれを受け入れた。
ビー玉を口にした途端、彼は苦しみ始め、黒いオーラのような物を体から出す。ハルはヒートグリフォがいる3階まで跳んで距離を取る。
周りの一般人は突然苦しみだしたサラリーマンを心配して近寄る者、それをスマホに撮ってSNSにあげるもの、何かのイベントだろうとそのまま通り過ぎるものといた。
『あの黒い靄はなんだ』
怪人状態になっているヒートグリフォはサラリーマンの背後に集まりだしている黒い靄についてハルに聞く。サラリーマンから溢れるように出る黒い靄は次第に勢いがなくなり、完全に出なくなる。出切ったのか人一人分の大きさの霧は大きく膨らみ、人の形へと変わっていく。
ハートのようだが真ん中で2つに別れ、左右で違う色の顔、右手は拳を、左手は離婚届と書かれた長方形の盾がつけられている。
あの飴は食べた者の夢を原動力に怪人を生み出す。これがハルが最初に作り出した怪人の素。試作品ゆえに怪人の形は少し不格好だが期待通りだった。
例えば今回はサラリーマンの幸せな家庭を築くという夢を使った。その夢を反転させて幸せな家庭を壊すという目的を持つ怪人が産まれた。
『アレがお前の怪人か』
怪人は真っ先に近くにいた夫婦らしき男女二人を襲う。左手の長方形の盾に右手で触れる。すると盾が少し開いて離婚届を1枚作り出し、2人に投げつける。
「なにあの攻撃、地味すぎる…」
離婚届を叩きつけるだけの攻撃に一体どんな効果があるのだろうか。突然変なのが離婚届を投げてくる、恐怖ではあるがそれだけなのが酷すぎる。
「体を操作して離婚届書かせるぐらいしろよ!」
手すりを叩くハルと違い、ヒートグリフォは怪人をしっかりと見守っていた。怪人は変わらず離婚届を出すばかりで周りの人間から笑いものにされていた。SNSではきっとこの場にいない人間にも笑われているのだろう。なんと可哀想なことか。
「その右手は飾りか!?」
ハルの声が届いたのか、怪人は離婚届を出すのをやめて右手の拳を高く振りかざし、勢いよく叩き降ろした。拳が振り下ろされた地点を中心に半径3メートルほどのクレーターが生まれる。
ようやく怪人の危険さに気付いたのか、人間達は悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすかのように散り散りに離れていく。
『パワーは申し分ない』
そこへ7人ほどの男女が現れる。逃げ遅れた人達だろうか。しかし怪人へと向かってきているような人間達。ハルがその人間達を見ているとヒートグリフォが柵を越えて1階へと飛び降りた。理由もわからずとハルが少し唖然としている。
しかし一般人にヒートグリフォが出しゃばる理由ななんだろうかとよく見てみる。そこには直近で見たことがある顔が数人いた。誕生日の夜、3人で歩いていた双子とその想い人だった。
流石に旧友に手を出すのは良心的にと柵を乗り越えて1階に降りようとした時だった。双子が謎のペンダントらしき物を前へと出す。するとペンダントから光が溢れ出し双子を包み込み光の球体へと変わる。球体は卵が割れるかのように頂点からヒビが広がり、パカンと割れる。
「うそでしょ…」
中から赤髪の白い服の魔法少女と青髪の黒い服の魔法少女が現れた。ハルの幼馴染である双子姉妹はフリームと敵対する魔法少女だった。
続けて5人の男女は左手首に着けている腕輪をヒートグリフォや怪人に見せるように肘の部分で90度曲げて拳を天へ向ける。空いた右手で腕輪から左手肘までクリームを伸ばすかのように撫で下ろす。すると腕輪からそれぞれ赤色、青色、緑色、黄色、白色の光が体を包んでいく。やがて体全てを包んだ光が収まっていき、頭をヘルメットで隠し、体をヒーロースーツで着込んだ5人が現れた。
「これが生変身…!」
ヒートグリフォはドクターサウイが改造した下っ端戦闘員を無造作に出現させてヒーロー達に向かわせる。ヒーロー達もそれぞれ武器を取り出して走り出す。魔法少女も同時に走り出すが双子の姉より先に妹が前へと飛び出し、少しした辺りで武器をしまい少し屈んで姉へと振り返る。
両手で足場のような物を作っており、姉はそこに足を置く。妹はヒーローゆえの怪力か、姉を高く投げ飛ばした。2階に届くような高さまで飛んだ姉はクルッと一回転して下っ端戦闘員達目掛けて飛び蹴りのような技を繰り出す。
「ラ◯ダーキックかよ!?」
負けじと5人のヒーローもそれぞれの武器である2本の剣、斧、槍、銃、弓を合体させて5人で持てるような巨大なブラスターを作り出してヒートグリフォ目掛けて強力な一発を放つ。ヒートグリフォの前にいた下っ端戦闘員達はブラスターが放つ閃光に巻き込まれてどんどん倒されていく。
「え、こわ」
ヒートグリフォはそんなヒーローの一撃を片手で受け止める。同じように怪人は双子の魔法少女の攻撃を離婚届の盾で防ぐ。先ほどのヒーローの猛攻で戦闘員は全滅し、残りはヒートグリフォと怪人の二人だけになった。
怪人は盾の離婚届を天へと向ける。すると盾から離婚届が何枚、何百枚、何千枚と噴水のように溢れ出す。目眩ましのように使うのかと感心していると宙を舞う離婚届から怪人の拳が飛び出して、ヒーローを横や後ろ、上から殴りつける。
「あれそんな使い道あったのか」
意外な使い道に感心し、ヒーローを翻弄し始めた怪人に拍手を送っていると妹の魔法少女が腰に本のような物を出現させる。左手で本を開き、右手を天に掲げて本に書かれている文字を読み上げる。すると右手から火の玉を出現させる。それを怪人に放つつもりなのかと凝視していると火の玉は次第に大きくなる。
そんな物を投げれば火事になってしまう。
「へ?雨?」
ハルが妹の魔法少女が放火魔になってしまうことを危惧していると室内なのに雨が降り始める。どうやら妹は火を出現させて天井や宙にある橋の下にあるスプリンクラーを作動させたのだ。
それにより離婚届が濡れ、次第に宙を舞う離婚届がなくなり、怪人とヒートグリフォの姿が現れる。
ヒーロー達は先ほど合体させた武器を分解させ、それぞれの必殺技を放つ準備を整える。魔法少女も同じく各々の武器である杖を重ねるように掲げてエネルギーを貯める。
「これはマズイのでは?」
5人のヒーロー達の必殺技でエネルギーを溜めた斬撃やブラスター、矢による一撃と双子魔法少女の杖に溜められたエネルギーを一斉に放つ必殺技が炸裂。怪人はその身で七人分の必殺技を受けて倒れてしまう。
「あちゃちゃ、流石にヒーロー全員の必殺技に耐える耐久力はなかったか」
しかしこれで終わらない。先に屋上でヒートグリフォに手渡しした飴がまだ残っている。ヒートグリフォは怪人の口にハルが渡した飴を入れる。すると怪人はたちまち元気を取り戻す。それどころかショッピングモールを破壊する勢いで巨大化していく。
巨大化によるショッピングモールの崩壊から逃れるためヒートグリフォは早々に月の城へと帰る。ハルは初の巨大化という重大な研究資料と成果を確認するため、ゲートを開いて少し遠い建物へと移動する。
「巨大化は成功かな?」
近くにたまたまあったベンチに腰掛け、50メートルほど巨大化した怪人が下にいるであろうヒーロー達を踏み潰さんと暴れるのが遠くから見える。踏み付ける、蹴り上げる、叩く、怪人はショッピングモールが瓦礫になるまで暴れる。
米粒ほどのヒーローが怪人を攻撃しているのか、時たまに光が見えるがそれも巨大化してパワーアップした怪人には効かないようで叩き落とされていた。
「ふむ…」
巨大化して暴れているのはまだいいが、虫のように怪人の周りを飛ぶヒーローたちに翻弄され始める怪人。そこで街から離れた山々から雄叫びが上がり、土煙を上げて何かが出現する。
「スーパーロボットなんてあったの!?」
真紅に染まるその獣は遥か昔、この星で頂点に立ち他種族と生存争いを繰り広げた陸の王。真紅の獣ティラノサウルス型のロボット。
紺碧に染まるその獣は山や草原を駆け、何処までも追いかけるその脚力と嗅覚で獲物を捕らえる孤高の一匹であり狼王。紺碧の獣ウルフ型のロボット。
常盤色に染まるその獣は猛毒を持ち、その長大な尾で相手の動きを封じる山の王。常盤色の獣コブラ型のロボット。
金糸雀色に染まるその獣は陸の王、その咆哮は大地を揺るがし、圧倒的な威圧感を放つ鬣を持つ百獣の王。金糸雀色のライオン型のロボット。
白銀に染まるその獣は力を象徴する角を持ち、幸運を呼ぶ馬の体を持つ野原を風のように翔ける王。ユニコーン型のロボット。
都市を破壊せず、各々ビルを飛び越えたり、他のロボの背に乗り、巨大化した怪人へと向かう。先制攻撃をしたのはユニコーンだった。ヒーローを踏み潰さんと片足を上げた怪人を背後から突き上げヒーロー達を救い、同時に怪人をヒーローから遠ざける。次にライオンとウルフがそれぞれ左右からその牙と爪で怪人へと攻撃。隙を逃さずコブラが怪人を締め上げ、そこにティラノサウルスが重い一撃を怪人の脳へと叩き込み、怪人は倒れる。
「大きさは怪人と同じかそれ以下なのに…強い」
ティラノサウルスが一度咆哮を上げる。それを聞いてすぐに怪人が立ち上がるがその時には遅かった。
ユニコーンの角が顔から離れる。前足と後足が体の中に畳み込まれ、首が体と90度で垂直になり、ティラノサウルスの足から足首から先が離れる。左手足首から爪先までの部分がユニコーンの体と合体する。同じようにライオンが首元から体と離れ、足が体の中へと畳み込まれ、もう片方のティラノサウルスの右足首と合体する。狼は尻尾が胴体と別れ、コブラの尻尾の先端と合体する。狼の足はお腹側へと畳み込まれ、狼の首が90度曲がり背中とくっつく。それにより首元から新たな拳が出現する。
ティラノサウルスは首と胴体、尻尾が3つに分かれる。また胴体と太腿から先が別れる。狼の体はティラノサウルスの首があった場所と合体し左腕になり、ティラノサウルスの両足は合体し尻尾があった場所と合体し右腕となり新しい拳が出現する。
ティラノサウルスの尻尾とコブラが合体、背中と腰の間ぐらいと合体し、首はティラノサウルスの背中、天辺に首の付け根から合体し、ティラノサウルスの首の部分に新しい巨人ロボットの顔が出現する。
「おぉ〜、すっげー!ロボットだ!」
巨大ロボットは巨大化した怪人と同じぐらいの巨体を持つ。まるでスーパーロボットだ。
武器であるユニコーンの角の剣を右腕に持ち、ライオンの鬣の盾を左手で持ち怪人の前へと立ちはだかる。
先ほどのヒーロー達の合体技で武器であった離婚届の盾は破壊されているからか、怪人は等身大のころとは別で肉弾戦を始める。スーパーロボットに飛び掛かり、右腕の巨腕で殴りつける。が、ライオンの盾で簡単に防がれ、着地のところを狙われて剣で薙ぎ払うように横一線で斬られる。
「え…」
それは呆気ない終わり方だった。怪人はスーパーロボットのたった一撃で体を裂かれて爆散した。試作品ゆえ何かしらの副作用があると思っていたハル自身もスーパーロボットもその呆気なさに放心状態となる。
ユニコーンの剣が強いのか、巨大化の副作用で紙装甲になってしまったのか。次の怪人のための要改善点としてゲートを開き月の城に帰ろうとした時だった。
ふとハルの頭に1つの疑問が生まれた。5人のヒーローが今あのスーパーロボットの中にいるとしよう、魔法少女は今何をしている?
ヒーローが戦えないからと家に帰るわけがない。なら今何を?
屋上の扉が勢いよく開かれる。そこには走ってきたのか息切れを起こしている魔法少女が2人。赤と青の魔法少女が立っていた。
「いたっ!」
魔法少女2人はすぐにハルに駆け寄り、足先から頭の先までくまなく見る。少し恥ずかしいが余計な抵抗はせずそれが終わるのを静かに待つ。数分か数秒か、魔法少女は安堵のため息を吐き、ハルの手を握る。
「アナタ、大丈夫だった?!」
どういうことだろうか。ハルは最初分からなかった。フリームの怪人だと分かっていないのだろうか。
聞けばスーパーロボットに乗っているヒーローからこの屋上に逃げ遅れた人がいると教えられたらしい。ゲートで来たため逃げ遅れてるわけでもないのだがここで変に反論しても悪手だと感じたハルは魔法少女が来たことに安堵するフリをしておく。どうやらここの屋上までの階段が崩落していたらしい。
崩落の原因は不明とのことだったが老朽化だろうか。一般人にとってはパニックになっていたかもしれないが今のハルにとっては感謝しかなかった。
魔法少女に抱き抱えられながらビルを飛び継ぎ、安全な場所まで連れて行ってもらい、そこで魔法少女と別れた。別れてしばらくしてからゲートを開き月の城へと帰還する。
帰還すればドクターサウイから呼び出されてしまった。