やりたいことを全力でやる   作:SGMY

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転校生の少女

わたし、夢野星中学三年生の久遠ゆかり。双子の妹のひかりと共に魔法少女をしている。日々学業に励みながら世界から夢を奪おうとするフリームという悪の組織と戦っている。

もちろん私達二人だけじゃ荷が重すぎる。魔法少女にはそれぞれ担当の区域がある。ちなみにヒーロー戦隊と呼ばれる日本全体を守っている集団がいたり、世界ではまた別のヒーロー達が日々悪の組織フリームから人々を守っている。

 

朝、教室に向かうと外が見える窓際の一番後ろに見知らぬ机が置いてあった。クラスメイト達の声に耳を傾けるとその机の話が聞こえてくる。

 

「ねぇねぇ、今日転校生が来るんだって―――」

「可愛い子かな?」

「女の子だってよ!」

「彼氏いるのかな」

 

転校生の話で持ち切りというわけではないようで一部では他の話題が上がっていた。

 

「アイドル事務所脱退の上に活動休止かぁ」

「しばらく見れないのかぁ…」

「メンバーの虐めが―――」

 

今朝のニュースに上がっていたアイドルの話みたい。日本でも世界的に人気グループのセンターであり、一番人気の東雲アカツキというアイドルが事務所を抜けたというニュースだった。事務所脱退の理由はメンバー内の虐めではないかと憶測が飛び交っていたが実際のところは不明。

 

「行方不明じゃないだけまだ…」

 

あの日わたし達の前から消えた幼馴染。生きているのか死んでいるのかすらわからない。彼は今何処で何をしているのだろうか。

鞄をロッカーにしまい、朝のHRが始まる前の一人の時間を楽しむ。今までなら彼や妹が着ていた。だけど今は誰もいない。

 

「みんな〜席についてー!」

 

担任が入室し、立っていた生徒達が各々席に着く。先生が話す前に一人の男子が先生よりも先に声を出す。もちろん転校生のことだ。女子と言うことで楽しみなのだろう。

先生の合図とともに教室のドアが開かれ、転校生が入ってくる。ざわっと教室の空気が変わるのがわかる。それは男子だけでも女子だけでもない。その両方がその人物を見る。

 

「えっと、はじめまして!東雲アカツキです!」

 

今朝のニュース、先ほど話題に上がっていたアイドルが目の前にいた。東雲アカツキが今日からクラスメイトとなった。転校生のアイドルはすぐに学校中に広まったのは言うまでもないだろう。休み時間になれば他クラスの生徒がやってきてはアイドルに話しかける。

 

「ごめんね、アイドルはしばらくやる気ないの!今は1人の学生としていたいの。だからアイドルの話はもうやめてね?」

 

ドアの近くでクラスメイトとアイドルの話を聞いていると妹のひかりがやってくる。長い青がかかった白髪にヘッドホンを首からかけて落ち着いた雰囲気を出している妹。その手には校内の売店で売られているおにぎりが握られていた。

 

「あれ、転校生?」

「そう。転校生の東雲アカツキさん」

 

一口、二口とおにぎり食べるひかり。何味を食べているのかと見ると塩がかかっただけの塩むすびだった。具も海苔もないと生徒達から不満な声が上がっているおにぎりだが一部の生徒からは人気らしい。

 

「どうしてここに来たんだろ」

「さぁ?」

 

確かに謎すぎる。仕事の都合でとかならまだ理解は出来ただろう。しかし彼女は今アイドル休止中。親の都合とかは考えにくい。

 

「あ、こっち見た」

 

おにぎりを食べ終わったひかりが東雲アカツキと目が合ったようで小さく手を振る。優しく微笑む彼女はなぜこの学校の来たのだろうか。ひかりの隣にいたわたしにも東雲アカツキの視線が来る。

 

「謎ね」

 

昼休み、屋上にて双子で朝食を取っている時だ。ピッツが校内だと言うのに、人に見られてはいけないと自分から言っていたのに姿を現す。何か慌てている様子のピッツを捕まえる。

 

『2人は感じなかったッツか?あの転校生、魔力を帯びてたッツ!』

 

わたし達2人では彼女から魔力を感じれなかった。魔法生物であるピッツにはすぐに見抜けたらしい。もしピッツでも見抜けない相手が出たらそれは高度な隠蔽力を持つものか、本当に魔力を持っていないかの二択になる。

 

「つまり彼女も魔法少女っていうこと?」

『少し違うッツ。ボクたちの純粋の魔力と違う、人工的に作られた魔力ッツ』

 

魔力って自然にあるものだと思っていたけどどうやら違うらしい。しかし人工魔力を持っているからって何かあるのだろうか?

 

『まだ確証はないッツけど…十分に注意をしたほうがいいッツ』

 

ピッツがそんなに警戒するなんて初めて。今までも初めて見るものや魔力が感じれるものなどを警戒していることはあったけど、人に対してそんなに警戒するなんて。

 

「これは実際に何かありそう」

「そうね。東雲さんには悪いけど―――」

 

わたし達が今いる屋上は普段誰も来ず、いつもわたし達2人とピッツの3人しかいないから全く警戒していなかった。それは妹もピッツも同じはず。だからわたしの後ろにいる人物がとても怖かった。

 

「えっと、わたしがなにか?」

「東雲さん…」

 

わたし達を写すその綺麗な瞳からは何かを企んでいるように見えない。転校したばかりで道が分からず迷子になり、偶然辿り着いたような―――

 

『2人とも気を付けるッツ!何かしかけて―――』

「クラスメイトの久遠ゆかりさん、だよね。2人ともそっくりだし双子とかかな?」

「うん、わたしはひかり」

「ひかりさんって言うんだ!よろしくね!い(・)つ(・)も(・)2(・)人(・)な(・)の(・)?」

 

わたしとひかりの2人しか見えてないというの?

東雲さんにはピッツが見えていないと言うことは東雲さんは魔力を持っていないということになる。ピッツ達魔法生物達は普通の人には見えない。自ら姿を見せるか魔力を持つ人にしか見れない。

 

普通の人ならふわふわ飛ぶぬいぐるみのような生物を見れば少なからず驚くだろう。しかし東雲さんは驚くどころか認識すらしていない。

 

「今はね。前はわたしとひかり、それからもう1人いたのだけれど」

「今はいないからわたし達2人」

「いないって…転校したとか?」

 

正直に言えば行方不明。しかし彼の親が心配するかもとヒーロー戦隊が政府に掛け合い、彼は今未知のウイルスに感染し、隔離しているということになっている。

 

「ちょっと体調が悪くて休んでいるだけよ。きっとすぐに治るわ」

 

わたし達の話はここまで、とひかりが一度手を叩く。次は東雲さんについて聞く番になる。と言ってもアイドルのことや仕事などについて話してくれるわけでもなく、普段の生活などについて話す。

今までは親と過ごす予定だったけどこの中学には寮があるらしく、そこに住むことになったそう。

ここに寮なんてあったんだ。初めて知ったかも。

 

「ここに寮なんてあったんだ…三年間過ごしてたけど初めて知った」

「ええ?!三年間いるのに!?」

 

驚かないほうがおかしいでしょうね。三年間通ってて学生寮があることを今知るなんて。でも確かに入学した時担任の先生とか校長が言っていたような気がする(三年前の話)

 

 

 

午後の授業も終わり、東雲さんに街の案内をするという話になる。最近はフリームの襲撃が少なく、自由な時間が増えているため友人を作るのもいいだろう。

近付きたいが東雲さんの周りを多くの人が囲っており近付くことができない。外から東雲さんが見えない。

 

「えっと、久遠さんにお願いしてるから大丈夫」

 

お近付きにと色々な人が案内役を買って出たようだが東雲さんは先約がいると人集りを出てわたしのところへと来る。

 

「行こっか」

 

彼女に引かれるがままに校舎を出る。途中で合流したひかりとこの街の案内が始まった。最初は少しめんどくさがっていたひかりだけど、自分の好きな店の前を通るたび楽しそうに笑っていた。

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