ナイツ&シグナル   作:伊倉軍貫

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本編世界線の何処かに混ざるかもしれない馬鹿話。
書きたくなったらたまに番外編を書きます。


番外編
番外編 たまに馬鹿になる


番外編 たまに馬鹿になる

 

 銀鳳騎士団では、今日もエルが思い付き、工房が組み立て試験し、駄目だこりゃと呆れたり、たまに使える技術が生まれたりする。

 そんな日常の中で起きた出来事である。

 

 トイボックス周辺に積み上げられた失敗作(遊べる玩具)を、エルが楽しそうに見ながら歩き回り、私は二次利用出来る物がないかフラフラと見回っていた時のことだった。

 ふと目に付いたのは、幻晶騎士(シルエットナイト)用に拡大された銃杖(ガンライクロッド)型魔導兵装(シルエットアームズ)である。片手で扱うライフル型という事で、長銃型魔導兵装(マギライフルアームズ)なんて名前が付けられたんだったか。

 

「そういえば」

「なんですか?」

 

 ふと漏らした声に、エルが即座に反応してくる。

 まあ、所詮思い付きだし、技術面に明るい人に聞いた方がスッキリするだろうと口を開く。

 

「魔導兵装(シルエットアームズ)って、単発高威力型といいますか、某ビームライフルみたいな感じのやつばかりですよね」

「あぁ、確かにそうですね! でも一撃必殺って言うのも悪くないと思いますよ?」

 

 確かに、それは悪くない。むしろフレメヴィーラ王国の国是と環境からして、一撃で魔獣を倒せる方がいいのだ。

 その上で前世の記憶(ロマン大好きおじさん)が囁くのだ。

『もっと弾幕作ろう』と――

 

「そうじゃなくてね? 小型掃討用に連射出来る魔導兵装(シルエットアームズ)の発想って、今までなかったのかと思ってね」

「ふむ」

 

 エルが顎に指を添えて考え込む。

 

「技術的には可能だと思いますよ。ただ、魔導兵装(シルエットアームズ)に使われる魔力伝達経路、銀線神経(シルバーナーヴ)が連射する事で発生する魔力の過剰供給に耐えられず、熱断線してしまうんですよね」

「あー、電流流しすぎた豆電球みたいになっちゃうのか…」

 

 確かにそれは、技術的には可能でも実戦運用は不可としか言えないだろう。ただ、弾幕への道(ロマン)はちょっと諦めたくない。

 

「……熱断線が問題なんですよね?」

「他にも問題はありますが、まあ概ねは」

「冷却か熱対策が出来ればやれるのでは?」

「……やれそうですね?」

 

 その時私の脳裏には、一つのロマンの形が浮かび上がっていた。

 

「エル」

「はい」

 

 試作型回転式多連装魔導兵装構想。つまり――

 

「幻晶騎士(シルエットナイト)用両手持ちガトリングガン。興味ありませんか?」

「すっごくあります」

 

 エルが食い付いた。つまりはそういうことだ。

 

 

――――――

 

 

「馬鹿の発想じゃねーの?」

 

 工房に詰めていたダーヴィドに話してみれば、この回答である。さもありなん。

 

「つまりアレだろ? 一本の銀線神経(シルバーナーヴ)じゃ負荷に耐えられない。なら複数列に分散させて一本一本の負荷を減らして、倍以上の速度で戦術級魔法(オーバードスペル)撃ちまくりたいって話だろ?」

「そうなりますね」

「馬鹿の発想じゃねーの?」

 

 二回も言われた。

 

「まず、その連射する分魔力を消費する。幻晶騎士(シルエットナイト)のマナプールなんてあっという間に空になる。次に、その回転機構とやらを付けてどうする? 回転させる為に魔力を使ったら余計に魔力消費増えるじゃないか。おまけに、そんな複雑な魔力制御をどうやって管理するんだ? その新型魔導兵装(シルエットアームズ)がデカくて重いから、最初から両手持ちにするのはまあいいとしてだ」

 

 しかも問題だらけだった。

 

「で、その連射とやらはどれだけ速くなるんだ」

「今の段階では机上の空論ですが、魔導兵装(シルエットアームズ)一門に対して十二倍速くなります」

「馬鹿なんじゃねーの?」

 

 三回も言われた。

 

「まあ、とりあえず作ってやるよ」

 

 私は思わず親方を拝んだ。べしりと頭を叩かれた。エルは五体投地していた。

 

 

――――――

 

 

 そうしてあーだこーだと言い争いながら完成した試作型回転式多連装魔導兵装(テレス・ガトリングアームズ)は、試射の段階で見る者全員の度肝を抜いた。

 

 腰溜めに構え、回転し唸る六本の魔導兵装(シルエットアームズ)が矢継ぎ早なんて言葉では追い付けない速度で、法撃を吐き出している。単機で、小隊よりも遥かに多くの法撃を放っている。操作しているヘルヴィ先輩がものすごく楽しそうな声を上げている。

 編式筋肉結晶(ストランド・クリスタルティシュー)から着想を得た。一本の魔導兵装(シルエットアームズ)に用いる銀線神経(シルバーナーヴ)を編み込む事で、そもそもの魔力抵抗を減らす編式銀線神経(ストランド・シルバーナーヴ)の開発。

 問題だった冷却機構も、六本の魔導兵装(シルエットアームズ)を高速回転させることで空気を激しく撹拌、冷えた空気の取り込みと熱気の排出の双方を行うことで強制冷却されていることが試験段階で発覚、長時間の連続射撃に不安は残るものの連射速度の限界値を大きく引き上げた事が試作段階で発見された。

 

 熱断線への限界値が伸びたなら、もっと速く回せる。もっと多く撃てる。そうなるのも自然な事だった。

 

 結果、試算段階の想定値を大きく上回り、一門の魔導兵装(シルエットアームズ)の実用上の連射と比較すると――なんと二十六倍。

 驚く所はそれだけではない。手持ち部分の下側にある巨大な箱――その内部にはみっちりと板状筋肉結晶(クリスタルプレート)が詰め込まれている。そこから法撃と回転機構機動用の魔力を供給している為、法撃に幻晶騎士(シルエットナイト)本体の魔力を消費しない。反動制御と機体操作に集中出来るのだ。

 周辺の人間が唖然とする中、発案者の馬鹿二人(エルとリヴァ)は「そうそう、これだよこれ」と頷き合っていた。

 

「これは、一体何を想定して作ったんだ?」

「防衛戦や対大群処理ですね」

 

 当たり前ではあるが、欠点も多い。

 まず重量。回転機構搭載や大容量外付けマナプールなんてやったせいで、通常の魔導兵装(シルエットアームズ)十八本分の重量になった。

 馬鹿じゃないの?

 

 そして値段。昨今需要が拡大し続けている小型魔導演算機(マギウスエンジン)の搭載が必須で、その値段従来品の約四十倍。

 馬鹿なんじゃねーの?

 

 しかし、その性能はケチの付けようが無かった。

 

「……馬鹿だが、理屈が通ってやがる」

 

 ダーヴィドが呻くように呟く。半分以上は想定外の機能向上だったから、さもありなん。

 

「……値段的に、大隊編成に数機とか、破城鎚のような特殊装備隊として編成するとかなら悪くはないかも?」

「小隊で並べて撃ちましょうよ!」

「それやったら地形まで変わっちゃうよ。エル」

「でも、絶対楽しいですよ?」

「…………そうだね」

 

 その後、若干の改良が施された制式名回転式多連装魔導兵装(ガトリングアームズ)は少数生産され、王国各所の魔獣と地形を粉砕する光景が見られたとか。




あらすじの様々なものをもたらしていく要素回収回。
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