第二章 第十話
銀鳳騎士団
エル達が
送信機と受信機をひとまとめにした送受信機、いわゆる無線機の基礎設計が完了したのだ。受信は常時受け付け、送信時にはボタンを押す簡単設計。これだけで、簡単な符丁のみではあるが双方向の通信ができるようになったわけである。
それと同時に、問題提起もされた。
「初期型とはいえ、明るい場所だと点灯を確認しにくい。逆に夜間だと目立ちすぎるな」
「受信時に音を鳴らす構造とかどうですかな。短い音と長い音の使い分けが出来れば、符丁はより多くの情報を送れるようになる」
「それだと、文字に対応した短音長音の組み合わせ表が必要になりそうですね…」
こうして、発光型から発音型へ改良されると共に、
初期案はまあまあ酷かったが、最終的に一文字につき上限五音のルールを制定してからは、それなりによくなった。特に情報部教官の指摘『頻発文字の音数は、可能な限り減らした方がいい』が運用した際のもたつき軽減に役立つことを期待された。
……されたのだが、あまり表舞台では活躍しなかったのだ。
後の技術革新による次世代型無線機では音声通話まで可能となり、短音長音で文字を送る必要性が大幅に減ったことが主な要因である。
とはいえ、隠密諜報を主任務とする方々はこの通信方式に目を付けた。送信時に声を出す必要がなく、短音長音だけで明確な文章を送れるため、非常に隠密性に優れていたのだ。
表舞台からは消えたが、別の場所ではちゃっかり生き残った。……つまりはそういうことである。
――――――
エルと定期的に会いに行きお互いの進捗を交換していた頃、ついに恐れていた事態が起こった。
授業が終わり昼休み中、立ち上がったアデルトルートにあれよあれよと連れ去られ、空き教室の中で二人きり。普通ならロマンチックな展開なのだろうが、目の前の若干目に光がないアデルトルートを見た上で、そんなことを言えるなら是非言ってほしい。
私には無理だ。
「アデルトルート。なんとなく要件は分かるけど一応聞くよ。エルの話だね?」
「そうだよ。リヴァはエルのことどう思ってるの?」
どう思っているか、言葉にするのは割と難しい。精神的な同郷、技術者仲間、重度の
その上で、あえて関係性を定義するなら――
「話の合う技術者仲間ですかね。……別に取ったりしないので、威嚇をやめてもらえると助かります」
「……ん?」
アデルトルートの目に光が戻る。できればそのままでいてほしい。切実に。
「……エルのこと、好きで近付いたんじゃないの?」
「清潔であの容姿なので好ましくはありますけど、
「だってリヴァ、エルとの距離すっごく近いもん」
「えっ」
えっ? 距離が近い…?
私は、割と誰に対しても同じような距離感を保っている。エルに対しても同様に、距離感を変えたことはない。それなのに距離が近い…?
そうやって唸っていると、アデルトルートがなにかに気付いたように話しかけてくる。
「リヴァちゃん…もしかして、誰に対してもあんな感じ…?」
「そうですけど…?」
「距離感、おかしい」
「そんなに…?」
「うん」
距離感とは一体……。
その後、急激に機嫌を直したアディ(こう呼んで欲しいと言われた)は、るんるん気分でエルの下に駆けていった。
どうやら私は、異性との距離感がだいぶ近いらしい。適切な距離感とは一体……。
――――――
その後、アディを通して双子のアーキッド・オルター……キッドと知り合いになり、私が
そうしてエルが新型
「魔力波の構築に従来の九倍魔力を注ぎ込めば、安定距離を五十メートル延伸できることはわかったが…」
「ここまで消費量が大きくなると、流石に無視できる量ではありませんな」
「
「それは、最早別物なのでは…?」
「物理的な断線と、
大体こんな感じで、若干迷走したりもした。
大人って色々考えるなぁ……。
そうしている内にエルたちが戻ってきたが、その表情は晴れやかなものではなかった。
新型
――――――
戻ってきたエルたちは、多少怪我こそあるものの全員生きて帰ってきた。エルは、奪取の可能性を考えなかった自分が悪いと対策を考えている。学園上層部やその上もこの事態を重く受け止め、新型機開発関係者に護衛が入ることになり、重要人物であるエルを護衛できる騎士団を結成することになった。
私はどう関係したのかといえば――
「こちら、何度か見たことのある人もいるとは思いますが、リヴァルレーネ・オービターさんです。僕がスカウトしてきました」
「どうも、はじめましての方ははじめまして、リヴァルレーネ・オービターです」
なぜかエルに連れ出されて、騎士団の結成会に参加していた。なんで???
私を見る団員予定の方々が、憐れみの目で私を見てくる。ほんとになんで?????
「リヴァは新型の情報伝達手段、
「えっ、なにそれ知らない」
エル、王宮と伝手あるの? そんな困惑を無視して、私の人事は進んでいく。
「完成次第、リヴァの作る
いつの間にか、そうなっていた。
サプライズエルネスティスカウト理論