ナイツ&シグナル   作:伊倉軍貫

11 / 11
いつも閲覧ありがとうございます。
5時に間に合わなかったので初投稿です。


第十一話

第二章 第十一話

新型

 

 さて、ほとんどなにも知らないまま騎士団……銀鳳騎士団に所属したわけだが、早速というか当然の疑問が団員から上がってきた。

 

――魔力式無線通信機(マギシグナルコード)とは、そもそも一体なんぞや?

 

 というわけで、早速説明会である。

 

魔力式無線通信機(マギシグナルコード)は、現在開発中の新たな情報伝達手段である。……というのは、エル団長の紹介にもありましたね」

「そうだね。だが全ての幻晶騎士(シルエットナイト)に装備されるべきというのは、まだ納得出来ていない」

 

 ディートリヒ先輩が疑問を挟んでくる。それに同意するかのように、何人もの団員が首を縦に振る。

 

「この魔力式無線通信機(マギシグナルコード)の開発目的は、信号弾と同等の速度で、伝令と同等の情報量を、遠く離れた味方と双方向に情報交換を行えるようにするというものです」

「ふむ……?」

「簡単に言えば、特定の人……この場合は、無線機を持つ人にしか聞こえない音声通信術式で会話する装備を作っています。今は、簡単な文章を符号で送れるようになったところです」

 

 その言葉で理解できたのか、ディートリヒ先輩が恐る恐る聞いてきた。

 

「つまり、その無線機があればもっと複雑な命令を送ったり、幻晶騎士(シルエットナイト)の視界を、距離を離して相互に補えるようになるということか?」

「そうなります。元々は、偵察隊に持たせて外部の眼とするための装備ですから、ディートリヒ先輩の運用は考慮の内です」

 

 私の回答に、理解できた団員たちがどよめく。どう考えたって技術革新だからだろう。

 

「ただ現状の問題点として、確実に通信可能な安定距離が二百五十メートル。これは消費魔力量を九倍にすることで延伸が可能でしたが、コストが重すぎるとして棄却されています。別種の延伸手段として、送信された信号を受信、再発信することで通信可能距離を伸ばす中継機の開発に成功したものの、中継機を二台以上組み合わせた運用で、致命的な問題が発生しています」

「二台以上で問題が起きたとは、なにがあった?」

「中継機同士が延々と叫び合っていました」

「……は?」

 

 質問してきたエドガー先輩が固まる。気持ちはすごく分かる。

 

「魔導具は人間ほど融通が利かないので、中継機同士で送られた信号を、律儀に延々と送り返し続けていたんです」

「絵面は面白いけど、一言送ったらもう終わりになっちゃったのね」

「そういうことです」

 

 ヘルヴィ先輩が雑にまとめてくれる。とてもありがたい。

 

「中継機の改良ができなければ、延伸は難しいですね」

 

 とりあえずの説明はこんなところだろうか。

 

「……とりあえず、今の説明で完成すれば、全幻晶騎士(シルエットナイト)に載せるべき装備というのが分かったよ」

「ご理解いただきありがとうございます」

 

 そう、今の段階では成果は出ているものの、採用するには到らない代物なのだ。特に距離の問題は大きい。通信途絶を許容すれば多少伸びるとはいえ、再送の手間を考えるとなんともといったところだ。

 

「まあリヴァも重要人物であると分かったところで、次の幻晶騎士(シルエットナイト)を作りましょう!」

「えっ???」

 

 エルの言葉に騎士団員たちが、特に騎操鍛冶師(ナイトスミス)が困惑している。

 あの、テレスターレ開発したばかりですよね? なにを言っているのだろうか? そうは思ったが、理由自体は極めてまともだった。

 

「カザドシュ事件で、僕たちはセキュリティ……強奪に対する意識の不足と機動力の不足を実感しました。なのでテレスターレを土台として、足の速い幻晶騎士(シルエットナイト)を作りましょう!」

 

 こうして、テレスターレを土台にした新型機が二種類、建造されることになったのである。一方は機動力を重視した新型機。もう一方は、問題点の多かったテレスターレを改良した制式提出用とのことだった。

 

 

――――――

 

 

 私自身は、自衛能力を持たせるためとして上等部の生徒たちの訓練に放り込まれ、幻晶騎士(シルエットナイト)の操縦を仕込まれたりしていたが、実際に幻晶騎士(シルエットナイト)へ乗ってみるとその視界の狭さに驚く。

 

 人間の視野角は意外と広い。横に伸ばした手をどこまで認識できるかには、多少個人差があるが大体、真横より少し前方に伸ばした手の辺りまでは見ることができる。集中すると意識している範囲は九十度前後に狭まるが、その分、動くものを捉えやすくなる。

 

 さて、幻晶騎士(シルエットナイト)に搭載された幻像投影機(ホロモニター)の視野角は、九十度。ほとんど前しか見えていない。騎操鍛冶師(ナイトスミス)のダーヴィドに聞いたところ、装甲配置との兼ね合いでこうなったそうだ。眼球水晶は文字通り幻晶騎士(シルエットナイト)の眼。魔獣の攻撃で簡単には壊れないようにしているのだとか。

 そうなっているなら、下手に装甲の隙間を開けて視界を拡げるのも難しそうだ。

 

 

 そうして時は経ち、上等部に揉まれて多少鍛えられた頃。工房で騎操鍛冶師(ナイトスミス)が骨組みでできた幻晶甲冑(シルエットギア)を着用して作業していた。

 開発者であるエルに聞いたところ、あれはモートリフトという小型魔導演算機(マギウスエンジン)を積むことで、特殊な訓練なしで扱えるようになったモートルビートの改良型なのだとか。戦闘・精密作業用であるモートラートもあるそうだが、そこで以前から構想していた偵察装備について思い出した。無線機運搬プラットフォームとして採用できないかという話だ。計画を練って、資料を作っておこう。

 

 実際に提案するには、いささか時期が悪い。なにせ近日中には、王都で新型機御披露目を兼ねた模擬訓練があるからだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。