進みの遅い小説ではありますが、地道に進めていきます。
ツェンドルグの調整がほとんど終わり、王都で御披露目をする日程が近付いてきた頃、シルエットトルーパーの基礎的な粗は大方取り除くことができた。ここからは、武装の仮置きによる擬似戦闘演習と、以前から考えていた偵察装備の開発である。
「以前から思っていたんですけど、
「基本的にはそうなるな。一応操縦席の横に覗き窓があるっちゃあるが、緊急用だからな」
「では、眼球水晶の前に遠眼鏡を置いた場合、
そう、望遠装備である。遠くに見えた影を、もっとよく見ようとしても
「……ふむ、考えたこともなかったな」
ダーヴィドが顎に手を当て考え出す。無論、透明度が高く歪みのないレンズを作るのは難しいだろうし、ましてや
「というわけで、シルエットトルーパーの偽装頭部に眼球水晶を設置して、人間用の遠眼鏡を覗く試験をやってみたいんですよ」
「
「はい。稼働試験はしないで、まず機能するかだけ確かめたいですね」
「それなら、なんで
「
「お前、結構そういうこと気にするよな……」
発案者私の実験だが、だからこそ身近な物で効果を証明してから実用型を作りたいのだ。万一失敗した時、高級な粗大ゴミができても困る。
――――――
そんなこんなで眼球水晶が仮設置され、剥き出しの
今回はコストを気にして単眼型である。『目すらもケチるのか……』とダーヴィドには呆れられたが、ケチじゃなきゃチェックシートをこんなにみすぼらしく設計しない。それに、『単眼は単眼でかっこいい』と
まあともかく、今回は私が操縦席に座り、ダーヴィドたち
ちなみに、遠眼鏡は私の私物である。壊れたら泣くかもしれない。
「んー……もうちょっと左に寄せて、そこそこ、その位置をキープ。そのままゆっくり眼球水晶に近付けて……」
「指示が細かいなぁ」
そうして頭の上でバトソンがわちゃわちゃしながら位置調整された遠眼鏡は、見事に拡大表示を成功させた。そして当然のように、課題も見付かった。
「これ移動中でも戦闘中でも、手に持ってピント合わせるの無理じゃない?」
「固定したら固定したで、常時拡大した狭い視界で戦うとか無茶にも程があるな」
切替式でも固定式でも問題が起きるのである。
完全に停止した状態でもこの始末なのに、稼働中にピント合わせとか事故の元にしかならない。
固定式も、遠眼鏡を覗きながら近接戦闘してください。なんて言われたら大抵の
どうしたものかと
思わずバトソンの頭を両手で掴み、じっくりとゴーグルを見てしまった。
「ちょ、なになになに!?」
「固定式と可動式の両立案……ゴーグルみたいに耳の部分で固定して、使う時に覗ける位置まで遠眼鏡を下げる。使わない時は額まで持ち上げる方式なら、毎回細かい調整がいらない!」
「あっ…、あー……そういうこと?」
バトソンが実演するように、ゴーグルを目の位置まで下げる。これなら、可動部品は耳の部分に付けるだけで実現できる。
集まっていた工房の一角が変な空気になったものの試作機の開発が始まり、完成した試作機は見た目からして問題だった。
「なんというか……長いね?」
「長いな。前に」
「機能は問題ないんだろうけど、見た目があれだね……」
前世の知識曰く『リーゼント』と呼ばれる髪型のように、遠眼鏡を組み込んだ仮設望遠ユニットは頭部前方に突き出していた。まあ、結局は機能するかどうか調べるためのもので、見た目を整えるのは実用型からだ。
「それじゃあ、仮設望遠装備……名前どうしよう」
「あとで決めればいいから、さっさとやろうよ」
「んまぁ……仮設望遠装備の試験を始めます」
そんな、かなりグダグダした始まりだったが、稼働試験そのものは問題なく消化されていき、遠近切り替え、首振り試験等も機能上は何ひとつ問題なくクリアしていった。
そして試験後対策会議では――
「実験結果としては、仮設望遠装備……スコープバイザー型は今後
「見た目は後で整えればいいと後回しにしてたけど、これ構造上短くするの難しくない?」
「遠眼鏡も双眼鏡も、俺たち
やっぱりあの長い額は見た目的にも構造的にも駄目だったのか、どうにかならないものかと考え出す。
「もういっそのこと、遠眼鏡ごと頭の中に埋め込みますか」
「なにいってんだお前」
「眼球水晶を後頭部の位置まで押し込んで、遠眼鏡を埋め込む形にするんですよ。前に張り出さないし、使わない時は今回のスコープバイザー型で使った技術で隠して保護できます」
「それじゃあ通常視界確保できねぇじゃねえか」
ダーヴィドたち
しかしながら、彼らは忘れていることがある。
「今回の実験はそもそも、眼球水晶を通して遠眼鏡を覗いた時に、
「……そうだったな」
「なので、遠眼鏡を覗く眼球水晶と通常視界用の眼球水晶を分けて付けます」
「三つ目にでもするのか?」
「必要なら三つ目でも四つ目でもやりますよ」
ダーヴィドはなにか言おうとして、そのまま黙り込んだ。既に降着機構という人体を逸脱した構造を搭載しているし、ツェンドルグという下半身が馬という
落ち着きを取り戻した
まずその見た目。妙に横長で平たく角張り、両端部が四角く盛り上がり眼球水晶が配置されている。中間部はといえば、操縦席から操作を行えば装甲カバーが上へ開き、装甲で囲まれた遠眼鏡を覗く眼球水晶が見えるようになる。世にも珍しい三眼の頭部となった。
「食器トレーが載ってるみてぇだ」
「これほんとに頭…?」
頭の位置にあって、眼球水晶から外部視覚情報を取得する装置なので頭部なのである。
新型頭部を正面から見た図
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両端部が通常視界用の眼球水晶、中央が望遠用の眼球水晶となっています。両端部を大きくしているのは、通常視界用の眼球水晶を保護し、視界の歪みを抑えるためです。