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新型頭部のテストが終わり、中央の望遠用眼球水晶を展開した姿を見たエルが『「信じて!」と言いながらパイロットを投げてそうな顔になりましたね』などと言い出した以外は、何事もなく武装化試験を始める準備に入った。
王都カンカネンへ旅立つのも目前に迫る大事な時期に、なんでこんなスケジュールを詰め込んでいるのかといえば、このシルエットトルーパーも持ち込んで行きたいらしい。
まだまだ未完成だけどいいのかと聞けば、途中経過でも報告した方が色々と楽なのだとか。
確かにそれは事実なので、遅れないように武装化試験の準備を進める。
今回の試験では、実戦で想定される全備重量を搭載した上での稼働試験になる。目的は、必要となる
ここで大きな問題がなければ、調整の後に仮想実戦演習を行って運用上の問題点を洗い出し、ようやく実戦を意識したシルエットトルーパー二号機の開発に取り掛かることができる。
「しかしまあ、チェックシートもだいぶ頼もしい見た目になったんじゃねぇか?」
「最初は、ほぼハリボテでしたからね」
搭乗者が剥き出しだった胴体は装甲に覆われ、頭部としてやけに大きい平べったい頭が乗っている。搭乗者が乗り降りしやすいように、ハッチは胴体正面下部から胴体上面を頭部ごと跳ね上げる構造で、減速機構を組み込んで開閉速度を抑え、所定の位置で機械的にロックする仕組みだ。手足にも装甲が取り付けられ、短杖型に取っ手を付けただけの試作短機関銃型
そしてついに、かなりの軽量化と簡素化がされた
「そんで、なんで今まで
「そもそもチェックシートは、動くかどうかを調べる代物だったので、実戦で動かせるかもしれないって段階にならないと無駄になる可能性の方が高かったんですよ……」
なんだかんだ戦えそうな雰囲気を醸し出すチェックシートだが、そもそもこいつは仮説検証機である。
・
・
・偵察装備と無線機を積んで動かせるか。
・戦闘を実現する上での課題はなにか。
・運用上の問題点はなにか。
これらを調べるための機体であって、戦闘はそもそも最初の想定には入っていなかったのだ。
「それに、消費魔力を考えると瞬間火力を高くしても、あっという間にマナプールが尽きて行動不能になるので、
「
今装備させている短機関銃型
なにより、大火力投射は
じゃあなんのために
「なんにせよ、ちゃんと形になってきたのが嬉しいですね」
「確かにな」
実戦配備を想定したシルエットトルーパー二号機の開発は、王都での模擬試合には間に合わないだろう。それでも、距離を詰められている。
――――――
今までの試験同様、初期魔力注入役兼緊急停止役の
「今後作るシルエットトルーパー二号機は、装甲を薄くして、
「本当に装甲薄くして大丈夫なのか?」
「生身の騎士が使うどの鎧よりも、装甲自体は厚いですからね。決闘級魔獣以上の攻撃に耐える装甲を持たせると、今度は稼働に必要な魔力不足と機動力不足で本末転倒になってしまいますし……」
「……それもそうか」
シルエットトルーパー二号機では、脚部出力に余裕を持たせて急速離脱が可能なようにするのもありだろうか? 腕部は最悪
今のフレメヴィーラ王国で主流となっている遠眼鏡と双眼鏡は、前世の知識に照らし合わせれば、いわゆるガリレイ式と呼ばれる簡素な構造のものらしい。実用上の最大倍率は四倍程度だそうで、プリズムと呼ばれる透明な物体を組み込むことで、光路を折り畳んで小型化できるらしいが、どうやって作るのかは分からない。相変わらず肝心なところで役に立たない知識である。
閑話休題、試験中でも気になってはいたが、やはり稼働試験だけでも消費魔力量の増加は避けられなかったようで、試験後の会議では軽量化と出力調整が課題だと確定した。
「降着機構も期待通りに動いて一安心ですね」
「最初は重量に耐えられるのか不安だったが、なんとか無事に使えそうだ」
「ここまでくると、『なにをしたいか』より『なにを捨てるか』を考える段階だと思うんですよね」
「それが、試験中に言ってた装甲を削るあれか」
「そうなります。シルエットトルーパーは軽装歩兵の役割を担うものになるので、足の速さと最低限身を守れる法撃火力と装甲があれば十分機能しますからね」
「僕としても、シルエットトルーパーはできることとやることが多い割に、マナプールという明確な活動限界があるので、マナプールを増やして活動限界を伸ばすのは賛成です」
今後作る予定のシルエットトルーパー二号機の開発要件として上がったのは――
・全高四メートル前後の機体であること。
・マナプール容量と脚力を重視した設計であること。
・装甲は必要最低限に抑え、重量を軽くすること。
・近接戦闘で重要な腕力と機体重量を確保できないため、攻撃手段は法撃に偏ること。
・降着機構、望遠装備を必ず組み込むこと。
以上の五点が開発要件としてまとめられた。
「最初は実現可能かどうかを調べる代物だったのに、実用するための課題が集まりましたね」
「リヴァ、まだ仮想戦闘演習が残ってますよ」
「その前に、この要件にあったチェックシートの調整だな」
ゆっくりとではあるが、着実に進んでいる。
そして始まった仮想戦闘演習で、多くのことができるからこその問題点が露呈したのである。
2026/10/01 当小説内での誤字修正しました。
筋肉結晶を結晶筋肉に修正。
魔力炉心を魔力転換炉に修正。