更新頻度の遅い小説ですが、いつも閲覧ありがとうございます。
予定通りに進めばチェックシートの役割は、この仮想戦闘演習の後、王都カンカネンで行われる
そう思えば、私もこの試験に対して思わず張り切ってしまうものだ。
「それでは、
今回の搭乗者は、新しいもの好きなヘルヴィ先輩が務めている。
「操作については事前に説明した通りですが、ひとまず自由に動き回って操作感覚を覚えてください。そして、不明な点があれば無線で聞いてください。送れ」
[こちらヘルヴィ。了解!]
いつも通り、非常停止役も兼ねる
ちなみに今回エルは、アディに拉致されて血涙を流しそうな表情をしながらトイボックスの最終調整に入っているため、ここにはいない。
まずは降着姿勢状態からの搭乗、直立姿勢への変形からである。搭乗席のハッチ開閉は、意図的に低速化しているためにゆっくりだが、重量物である装甲と頭部を上に持ち上げる構造上、急速落下するとギロチンになりかねない。歯車を組み合わせた減速機構で動作を低速化し、末端部では魔獣の革と金属の筒を加工して作った簡易式エアダンパーで衝撃を和らげ、所定の位置になると機械的に固定される仕組みで安全性を高めている。
降着姿勢は、通常の
[この降着姿勢っていうの? 乗り降りしやすいのはいいけど、もうちょっと立ち上がるのが早いと現場としてはありがたいかなぁ]
「まだ安全重視の設計ですからね。でも改善項目として記録しときます」
「どこまで高速化するかは、あとで詰めないとな」
こういった現場目線の意見も拾えるあたり、既に
[踵のアンカーは転びにくいように付けたんだろうけど、格闘戦するならちょっと重いかも]
「そこは、設計段階で十分な打撃力を持たせられないのが分かっていたので、法撃重視の設計にする予定です。盾に打突用のクローは付けますけどね」
[ふーん…。それだと盾で防御しながらクローで攻撃するのは難しくない?]
「………あっ」
法撃重視の
だが、まだそこまで高度な火器管制システムが存在せず、
つまりどういうことかと言えば、普通に外すか、誤射する可能性が高い。そして、片手で防御と近接攻撃を同時に行うのも難しい。あえてやるならシールドバッシュか?
「緊急用とはいえ、
[なんか……やっちゃった?]
「いえ、問題点が見付かったのはいいことです。今まで操作していたエルがだいぶ外れ値なのを思い知っただけなので」
こういった問題点は、ある程度広く情報を集めないとわかりにくいものだ。改善項目として記録して、試験を続ける。
結果として、動作試験自体は問題なかったものの戦闘試験に入ると、一気にヘルヴィ先輩の動きがぎこちなくなった。曰く「同時にやることが多すぎる」とのことで、移動、観測、現在地確認、無線、回避、攻撃の六つを挙げ、常にそのうち四つほどを並行して処理し続けなければならないらしい。ここから更に望遠観測、武器補給、無線中継器の位置取り確認の作業がのしかかってくるので、
――――――
という訳で、稼働試験を終えると対策会議の始まりである。
「気休めだとしても、盾とは別の近接武器を持たせないと誤射が怖いですね」
「二号機の開発要件、近接攻撃の威力担保が難しいっつーから盾で殴る方向で考えてたんだったか?」
「はい。なにも持たせないのも問題でしたし、とりあえず持たせて損がない盾に近接攻撃用の機能を持たせたものを装備させていましたね。……とりあえず小型の片手斧を持たせて多少打撃力を盛りたいですが、必要な威力出せますかね?」
「斧? 剣じゃないのか?」
「剣より使用する鉄の量を抑えやすく、比較的軽量でもそれなりの打撃力を確保できる。ついでに、工具としても使えるのが理由になりますかね。……なにより、
「……無理だな。持つのと運ぶまでは行けても、振るうとなると体格差で両手剣になって、途端に筋力不足が出てくる」
「可能なら
「チェックシートの手が妙にデカいの、それが理由だったのか……」
今現在のチェックシートは、魔力消費量を抑えるために、意図的に腕の
そこで代案として出したのが片手斧。右側の
「それに、
「あくまで主役は
生存に関わる部分は出し惜しみしないが、攻撃面はある程度捨ててもいい。近接武器を積極的に振るうのはリスクが大きすぎる。
「次に、
「もうちょっと言い方ない?」
「分かりやすくていいんじゃねーの?」
実際問題、これは重要な問題である。
「ここはまあ、仕事を分けましょう。実戦では複数機で組んで動かす予定だったので、観測役、無線役、護衛役くらいに分けて一分隊として動かすのはどうでしょうか」
「
「理解が早くて助かります」
つまるところ、兵科を作る。仕事を分けて専業化すれば、少なくとも作業量で忙殺されるのは減るはずだ。
「分業化する際には、テレスターレの機能拡張で作った
「素体と専業装備で兵科を分けるってことか。仕事が増えるな」
「いつも発想を形にしてくれて、ありがとうございます」
本当に、ダーヴィドだけでなく工房全体には頭が上がらない。
「では次、実際に法撃を交えて動いてもらったわけですが……魔力消費量が酷いですね」
「全力稼働させるとマナプール満杯でも四刻持たないとはな……」
「さすがに命を預けるには、ちょっと頼りないわ……」
「この問題を放置すると、
「一回の初期魔力注入で、テレスターレの
「戦闘中でも小休止でも、三割消費はちょっと重すぎない?」
「重いですね。対策考えないと……魔力補給…………ん?」
前世の知識が囁く。内燃機関が広く流通した前世において、その原料となる燃料補給の手段は数多く考えられてきた。補給基地、燃料輸送網、燃料補給車――そう燃料補給車である。
「……親方。ツェンドルグが牽くキャリッジって、今どれだけ載せられますか?」
「なんだ唐突に……。確か、輸送用だと
「では、その積載重量の全てを、一基の
「補修部品でも運ぶのか……? いや、待て、お前、魔力を運ぶのか!?」
「えっ、どういうこと?」
だが仮に、最小限の
「魔力補給専門のキャリッジ。仮に命名するなら、