第一章 第三話
学園
入学してからそれなりに時間が経ち、今では十一歳になった。ちんまりしていた身体もそれなりに大きくなり、武器や杖に振り回されることも減った。父は、健やかに成長する娘への嬉しさと、次第に逞しくなる娘への嘆きをごちゃまぜにした複雑な顔をしていた。父は今日も娘大好きが隠せていない。
……杖と言えば、入学してすぐの頃にあった魔法適性測定で、いきなり授業の免除を申し出て怒った教官に無茶振りされたかと思えば、普通に突破した凄い子がいた。
魔法も凄かったが、使っていた杖が問題だった。前世の記憶が囁くことによれば、あれは『銃』と呼ばれる兵器によく似ていた。片手撃ちをしていた為精度は判らないが、的として置かれていた鎧がズタボロになっていたから精度も高いのだろう。
あれは、一般的な杖より遥かに遠くを正確に狙う為の形状をしていた。そして、それでも杖として機能していた。
実際使ってみれば、足元が狙いにくい以外は
どうやら私は、きちんと狙いを付けられる道具との相性の方が重要だったらしい。
その後、その暴力的な魔法の才能で、可哀想なことに教官の意識も粉砕されてしまったのか。後日測定をやり直すことになったのである。
――これが、後に長い付き合いになる世紀の天才、エルネスティ・エチェバルリアとの最初の邂逅だった。
――――――
入学してからしばらく経ち、エルネスティが
手には地図を持ち、腰回りのポーチに地図関連の道具を色々と入れた騎操士希望の子供がウロウロと歩き回っていれば、有名になるのも止む無しである。
…弁明するならば、地理や地図の講義の中で、周囲と比べると明らかに飛び抜けた才覚を示してしまったのが要因である。前世の記憶が囁く通りに、一般常識の範圍で地図を読み解いたら物凄いざわつかれてしまい、どこで習ったと聞かれても前世の記憶由来のカンニングペーパー状態なので答えられず、仕方なく自己学習の結果と答えるしか無かったのだ。
そうして課題として出された地図作製で、教官の想定以上の地図を出してしまったのが運の尽き。地図を読めて描ける
閑話休題、魔法の話だ。
魔法適性測定の結果、私は希少な雷系統への高い適性を持っていたらしい。ただ、この系統扱いがとんでもなく難しく、破壊力はあるものの射程が極端に短く、操作を間違えれば自滅の危険ありと大変なじゃじゃ馬なのである。更に言えば、同年代の子に魔法の天才であるアデルトレートがいるので希少性しか自慢出来ない始末。
そんな訳で慎重に慎重を重ねて訓練して、銃の形をした杖――
とはいえ、私としては雷系統の極端な破壊力を演習で使える程度まで抑えた結果、ついでに行動阻害能力が付いただけの低威力魔法である。実戦運用では、魔獣相手に刃が通らなかった場合でも動きを止め、その隙に急所を刺すための補助魔法なのだ。
同級生曰く
「予兆らしい予兆がないから、発動を感知したときには既に手遅れ」
「対人戦に特化しすぎてる。魔獣に通じるのかそれ?」
「卑怯。特に発動していても雷系統らしい雷光が見えないのが酷い」
「剣と槍で打ち合ってる最中に剣で受け止めたら食らった。槍の穂先にも流してるだろそれ」
「何故演習で使用許可されているのか。これがわからない」
とボロクソに叩かれている。そんなに酷いかな……?
そんなちょっとずれた学生生活を送る中、私の価値観を一変させる出来事が近付いてくる。
――野外演習、第一の事件、ベヘモス事変だ。
・リヴァの銃杖
サラッと所持を明かされたもの。
「また無茶な注文する奴が来やがった」と思われながら工房で作られた。
形状は全長160センチメートル。形だけエンフィールド銃に似せ金属の芯材を木材で覆う形にしつつ各所を補強、魔法触媒のすぐ下に短剣、つまり銃剣が固定されている。強度を考えて銃剣の取り外し不可。同級生からは「杖と短槍と短剣を合体させた変な武器」と見られている。