ナイツ&シグナル   作:伊倉軍貫

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ナイツマ二次創作なのに、幻晶騎士に全然乗らないリヴァの今後の活躍にご期待ください。

追記 2026/09/06 本文修正。原作タイムテーブルを確認した所、幻晶騎士開発はまだでした。


第八話 距離

 

 

 試作型魔力式送信機と受信機の試験が始まった。構造としては、送信機側はボタンを押すと攻撃性の無い特定の魔力波を放ち、受信機側で受け取ると魔力灯が点灯する極めて簡単な構造だ。

 これをそれぞれ五機制作し、ランダムな組み合わせで受信試験を行わせて再現性を確認する。これは、誰が作って誰が使っても同じ動き方をして初めて運用可能になる代物だからだ。

 

 そうして行われた一次試験は、無事成功した。

 

 制作に協力した教官方も喜びを隠せていない。なにせ、自身が制作に関わった新しい理論が証明された瞬間に立ち会ったのだ。教官と言えど理論を修めた学徒、喜びも一入だろう。

 だが新しい理論であるからこそやることが多い。教官方は理論のレポートを書き上げ、私は次の実験場の選定を行っていた。

 

 次は、通信がどこまで届くかの計測だ。

 

 

――――――

 

 

 前回の成功から一週間後、幻晶騎士訓練場の隅を借り計測の準備を行っていた。訓練場では、妙に手脚の長い鎧が動きを確かめるように、ゆっくりと動いていた。なんだあれ…?

 

「オービター、こっちの準備は出来たぞ」

「こちらも完了です」

 

 計測試験もやることを文字で説明すると簡単だが、実際にやると大変な作業だ。まず百メートル間隔で杭を打つ。その後コンパスを用いて十メートル単位で線を引く。余裕を持って千メートルまで作ったが、この距離を受信機と手旗を持ったまま往復するとなると気分が落ち込む。

 そう、移動役は私なのである。ある意味発起人権限というか、言い出しっぺなのに、実質なにもしていないのに耐えられなくて志願したのだ。

 

 まあ閑話休題、試験内容である。

 

 送信機側は机の上に固定し、受信機を持った人が百メートル単位で移動して、通信成功で白の手旗を振り、通信失敗で赤の手旗を振る。成功した場合は、次の百メートルへ移動。失敗すれば十メートル単位で送信機に近付く。これを一日に五回、一週間にわたって地道に繰り返し、安定して通信できる距離を探り出すのがこの試験の目的である。

 

 結果はまあ、ちょっとなんとも言えないものになった。

 

 通信可能限界が日によって違う。最長記録は六百十メートルだが、次の日は三百メートルで信号が途絶した。そうして積み上げた実験結果から導き出した安定通信距離は――二百五十メートル。それが現段階での通信距離だった。

 

「さて、初期型にしてはそれなりに伸びたと言うべきか、たった二百五十メートルしか届かないと見るべきか……」

「魔力の出力を上げればどうにかなる問題でもなさそうなんですよね……」

 

 魔法は思ったより遠くに届かない。戦術級魔法なんかを見るとわかるが、膨大な魔力を使っても意外と射程が短いのだ。有効射程二百メートル、最大射程三百メートルといったところか。通常の魔法とは比べ物にならない魔力を消費して放つ戦術級魔法がその有り様なら、出力を上げても通信距離が伸びる可能性は低い。一応やってはみるが、あまり期待できないだろう。

 このままではあまりにも使用に制約がかかるため、あーでもないこーでもないと教官たちと顔を突き合わせて意見交換している中、前世の知識が囁いた。

 

『途中で通信を拾って、同じ信号を放つ機械を中間に置くのはどうか?』

 

 それはまさしく天啓だった。伝言が一人だと難しいなら、複数人で繋げばいい。

 

「――信号に用いる魔力波の構成を変えるのはどうか?」

「試してみる価値はありそうだな。実験リストに入れよう」

「……あの、送信機と受信機の間に信号を受け取り、再発信する魔導具を挟むのはどうでしょうか?」

 

 教官たちの議論が一瞬止まり、全員が私を見る。……すごく怖かった。

 

「……どういう事だね?」

「はい…。この送信機って、例えるなら人の耳には捉えられない拡声術式を使っているようなものなんです。それがたったの二百五十メートルしか届かないから問題なわけですが……間に送信機が発する声を聞いて、同じ内容を叫び直す魔導具を置いたら、伝言のように遠くまで届くのではないかと」

「……一理あるな」

「基礎研究は続ける必要があるが、短期的に距離を伸ばすなら十分だな。やろう」

 

 こうして魔力式無線通信の根幹技術、中継機の開発が始まった。

 

 

――――――

 

 

 試作型中継機一台での通信距離延長実験は、概ね成功に終わった。安定距離内に置けば、ほぼ倍の距離まで安定して送信が可能になったのだ。

 

――そしてこの時、予備として置いていた受信機が奇妙な反応をしていたのを見逃していたのが、珍事件の幕開けだった。

 

 試作型中継機二台を用いた実験は、早速暗礁に乗り上げたのである。送信機側が信号発信をやめても、なぜか受信機が光り続ける事件が発生したのだ。これは一体なんだと原因調査を行った結果、試作型中継機二台で送信を繰り返しループ状態に陥っていた。

 要するに、中継機Aが全力で『こんにちは!』と叫び、それを聞いた中継機Bが全力で『こんにちは!』と叫び返す。中継機Aがそれを聞いて全力で……となっていた訳だ。

 人間ほど融通が利かない魔導具らしさが出たと言うか、なんとも言えない問題ではあるが、通信距離延長においてその問題は深刻だった。

 

「発想は良かったのだが、まさかこうなるとはな」

「魔導具が全力で『こんにちは!』と叫び合うなんて、相当な珍事件ですよね」

 

 なにせ、問題を解決しなければ中継機二台以上での通信距離延長が実質不可能になってしまったのだ。これには前世の記憶(不審者おじさん)も苦笑い。

 その後も教官たちとあーだこーだと話し合い、現段階では解決策無しとして基礎研究を進めることになった。

 

 私はその間できる事はほとんどないので、学園内を見て回りアイデアを探すことになり――やけに動きにくそうに動く手脚の長い謎の鎧を再び発見するのであった。




送信機<こんにちは
↓
中継機A<こんにちは
↑  ↓
中継機B<こんにちは
↓
受信機<あそこずっと叫びあってるな…

だいたいこんな関係。
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