ナイツ&シグナル   作:伊倉軍貫

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第九話にしてやっと原作主人公と関わるので初投稿です。
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第九話

第二章 第九話

転換点

 

 学園内を見て回っていると、動きのぎこちない、妙に手脚の長い鎧が目に入る。訓練場の一角で目にした謎の鎧と同型であるが、訓練場で見たものは滑らかな動きをしていた。

 使用者の違いだとは思うが、普通の鎧であそこまで動きがぎこちなくなるとは思えない。なにかしら特殊な装置でも入っているのだろうか?

 ……分からないことは聞いてみようの精神で、鎧の人に声をかけに行く。

 

「そこの鎧の人、ちょっとい……あれ、エドガー先輩?」

「ん? 確か…中等部のオービターだったか?」

「はい。騎操士科中等部一年生のリヴァルレーネ・オービターです。はじめまして。……こうやって面と向かって挨拶するのは、初めてですね」

「そうだな。はじめまして、騎操士科上等部のエドガー・C・ブランシュだ」

 

 鎧の中にいたのは、騎操士科上等部のエドガー・C・ブランシュだった。騎操士科の中で、幻晶騎士(シルエットナイト)に乗せれば最も強いと言われている人だ。そして、ベヘモス事変で真っ先にベヘモスの注意を引き、撤退に貢献した功労者でもある。彼の献身が無ければ、総崩れして全滅もあり得た。

 

「話があるなら、歩きながらでもいいか?」

「はい。構いませんよ」

 

 奇妙な鎧を着たエドガー先輩と連れ立って歩く。……随分と動きにくそうだ。

 

「ところで、その鎧は一体なんなんですか? 手脚が長くて、妙に歩きにくそうにしていますが」

幻晶甲冑(シルエットギア)という種別の新型甲冑、モートルビートなんだが……筋肉結晶(クリスタルティシュー)で全身を覆うことで、身体強化(フィジカルブースト)だけでは得られない身体能力を発揮させ、幻晶騎士(シルエットナイト)の操縦技術向上に役立つもの、らしい」

「……それにしては、随分と動きにくそうに見えますが」

「実際かなり動きにくいな。魔導演算機(マギウスエンジン)の補助なしで、幻晶騎士(シルエットナイト)を動かす感覚が必要らしい」

「それは……十全に動かすには相当の訓練が必要なのでは……」

 

 魔導演算機(マギウスエンジン)は、騎操士(ナイトランナー)の操作を幻晶騎士(シルエットナイト)が動けるように変換する。いわば幻晶騎士(シルエットナイト)の頭脳と言える部品だ。これなしで操作するとなると、魔術演算領域(マギウスサーキット)で機体操作を全部やる必要がある。最終的に、騎操士(ナイトランナー)の意図をより繊細に、幻晶騎士(シルエットナイト)に伝えられるようになるということらしい。

 前世の知識曰く、半自動操作(セミオート)手動操作(マニュアル)の違いだそうだ。

 

「全く動けなかった頃よりは慣れてきた。キツいがあと数日で普段通りに動かせるようになるさ」

「流石ですね」

 

 エドガー先輩はとんでもなく優秀だった。

 そこでふと思う。小型軽量で身体能力を大幅に強化するこの装備を偵察に用いれば、生還率を上げられるのではないだろうか? 通信機を現地まで運び、情報を取得して無線で連絡、危険になれば走って逃げる。十全に動かせるなら、可能性はありそうだ。

 

「疑問なんですが、そのモートルビートの性能を発揮できたとして、偵察任務に使うのはどうなんでしょうか?」

「俺自身性能を発揮できてるとは言いづらいから断言は出来ないが……間違いなく使えるだろうな」

「……開発者に会いたいので、お取次ぎをお願いしてもいいでしょうか?」

 

 

――これが第二の事件、エルネスティ・エチェバルリアとの接触だった。

 

 

――――――

 

 

 エドガー先輩に案内され、紹介された先で見た開発者――エルネスティ・エチェバルリアは、何度か見た覚えがあるというか、学園内の噂で耳にする『ヤバいやつ』の外見と完全に一致していた。

 銀色の髪にかなり小柄で少女めいた可愛らしい容姿、これがどうしたらヤバいやつ扱いになるのかといえば、その幻晶騎士(シルエットナイト)狂いと魔法の才能からである。というか、入学してすぐの頃に、教官の意識を粉砕した元凶だった。その隣には、アデルトルート・オルターがこちらを睨むように、ジリジリとエルネスティに近付いている。……別にそっちの気はないから安心してほしいが、それはそれで面倒だ。

 ……ここで怖気付いても仕方ない。挨拶から始めよう。

 

「リヴァルレーネ・オービターです。呼びづらい場合は、リヴァとでも呼んでください。エドガー先輩から幻晶甲冑(シルエットギア)の開発者と聞いて、会いに来ました」

「エルネスティ・エチェバルリアです。僕は普段からエルと呼ばれているので、今後はそれでいいですよ」

 

 まるで面接のような始まりだが、ある意味その通りだからなんとも言えない。

 

「それで、僕に会いに来た理由はなんでしょうか」

「そうですね。率直に言いますと、私が発起人となって現在開発中の魔力式無線通信機(マギシグナルコード)。その運搬プラットフォームとして、幻晶甲冑(シルエットギア)モートルビートが使えないかと相談に来ました」

 

 魔力式無線通信機(マギシグナルコード)。教官たちと開発していく中で発案された正式名である。…流石に名無しは不味かったらしい。

 

魔力式無線通信機(マギシグナルコード)……聞いた覚えのない技術ですね。どんな技術なんですか?」

「有り体に言えば、遠くにいる人と会話するための魔導具になります」

 

 かなり端折った説明になってしまったので、追加で概要を説明する。ベヘモス事変を契機に開発中の新しい情報伝達手段であること。現在二百五十メートルまで安定して送信・受信が可能であること等だ。

 そうして説明が終わった後に、エル(そう呼ぶことにした)が呟いた一言が問題の始まりだった。

 

「……つまり、無線?」

 

 前世の記憶(不審者おじさん)が動揺する。私も一瞬動揺してしまった。

 だって、私はその名称を一度たりともそのまま使ったことはない。フレメヴィーラ語に変換することなく、『日本語』そのままでは絶対に口にしていない。

 

「その話、もう少し詳しく聞かせてもらってもいいですか」

 

 長丁場になりそうだ。

 

 

――――――

 

 

エルSide

 

 僕の下に訪ねてきた同級生であるリヴァルレーネ・オービター――リヴァは、この世界で無線を作ろうと奮闘していたらしい。

 

 無線の発想に、僕が教えた覚えのない銃剣(ガンライクロッド)の扱い方、噂になるような地図の才能……そしてなにより、無線と思わず日本語で言った時の動揺。

 

 間違いなく彼女は、僕と同郷だ。前世の記憶を持つという人には言えない生まれ。しかし、そんなものはどうだっていい。

 この世界に、無線をもたらそうとしている。幻晶騎士(シルエットナイト)に載せてもいい。幻晶甲冑(シルエットギア)に載せてもいい。僕の作るロボットが、また一段と強くなる。無線を聞きながら発進シーケンスなんてロマンだってやれる。それだけで十分だ。

 

 …それはそれとして、前世のロボトークをしたいわけでは、決してないのだ。

 ないったらないのだ。

 

 

――――――

 

 

 その後の長話で判明したことではあるが、エルと私では前世の記憶の受け継ぎ方がかなり異なっていた。エルは、前世の人格がそのまま今の身体に入った形で、私は、リヴァルレーネという少女(わたし)に、前世の記憶がインストールされた形になるらしい。

 その後の熱烈なロボトークには圧倒されかけたが、浅く広くの前世の知識(ロボット知識)のおかげで満足行く結果になったようだった。周囲は『エチェバルリア語話者が増えた』と戦慄していた。なにその言語。

 

 まあ閑話休題として、モートルビートは身体強化(フィジカルブースト)、それもエルが改良した限定身体強化(リミテッド・フィジカルブースト)の習得が前提であるとかで、発想自体は良いが現時点で偵察運用は難しいということだった。

 そして、魔力式無線通信機(マギシグナルコード)に対して強い興味を持たれた結果として、定期的な情報交換を約束した。

 

 

 …結局なにが事件だったかといえば、前世の記憶を持つことを間接的に指摘され、バレてしまったことである。




リヴァの人格男女比率は8:2
基本人格はリヴァルレーネという少女。技術関連への積極性と男性への距離感に、前世の記憶が影響を及ぼしている。

エルの人格エミュはこれでいいのだろうか…?
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