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第二章 第九話
転換点
学園内を見て回っていると、動きのぎこちない、妙に手脚の長い鎧が目に入る。訓練場の一角で目にした謎の鎧と同型であるが、訓練場で見たものは滑らかな動きをしていた。
使用者の違いだとは思うが、普通の鎧であそこまで動きがぎこちなくなるとは思えない。なにかしら特殊な装置でも入っているのだろうか?
……分からないことは聞いてみようの精神で、鎧の人に声をかけに行く。
「そこの鎧の人、ちょっとい……あれ、エドガー先輩?」
「ん? 確か…中等部のオービターだったか?」
「はい。騎操士科中等部一年生のリヴァルレーネ・オービターです。はじめまして。……こうやって面と向かって挨拶するのは、初めてですね」
「そうだな。はじめまして、騎操士科上等部のエドガー・C・ブランシュだ」
鎧の中にいたのは、騎操士科上等部のエドガー・C・ブランシュだった。騎操士科の中で、
「話があるなら、歩きながらでもいいか?」
「はい。構いませんよ」
奇妙な鎧を着たエドガー先輩と連れ立って歩く。……随分と動きにくそうだ。
「ところで、その鎧は一体なんなんですか? 手脚が長くて、妙に歩きにくそうにしていますが」
「
「……それにしては、随分と動きにくそうに見えますが」
「実際かなり動きにくいな。
「それは……十全に動かすには相当の訓練が必要なのでは……」
前世の知識曰く、
「全く動けなかった頃よりは慣れてきた。キツいがあと数日で普段通りに動かせるようになるさ」
「流石ですね」
エドガー先輩はとんでもなく優秀だった。
そこでふと思う。小型軽量で身体能力を大幅に強化するこの装備を偵察に用いれば、生還率を上げられるのではないだろうか? 通信機を現地まで運び、情報を取得して無線で連絡、危険になれば走って逃げる。十全に動かせるなら、可能性はありそうだ。
「疑問なんですが、そのモートルビートの性能を発揮できたとして、偵察任務に使うのはどうなんでしょうか?」
「俺自身性能を発揮できてるとは言いづらいから断言は出来ないが……間違いなく使えるだろうな」
「……開発者に会いたいので、お取次ぎをお願いしてもいいでしょうか?」
――これが第二の事件、エルネスティ・エチェバルリアとの接触だった。
――――――
エドガー先輩に案内され、紹介された先で見た開発者――エルネスティ・エチェバルリアは、何度か見た覚えがあるというか、学園内の噂で耳にする『ヤバいやつ』の外見と完全に一致していた。
銀色の髪にかなり小柄で少女めいた可愛らしい容姿、これがどうしたらヤバいやつ扱いになるのかといえば、その
……ここで怖気付いても仕方ない。挨拶から始めよう。
「リヴァルレーネ・オービターです。呼びづらい場合は、リヴァとでも呼んでください。エドガー先輩から
「エルネスティ・エチェバルリアです。僕は普段からエルと呼ばれているので、今後はそれでいいですよ」
まるで面接のような始まりだが、ある意味その通りだからなんとも言えない。
「それで、僕に会いに来た理由はなんでしょうか」
「そうですね。率直に言いますと、私が発起人となって現在開発中の
「
「有り体に言えば、遠くにいる人と会話するための魔導具になります」
かなり端折った説明になってしまったので、追加で概要を説明する。ベヘモス事変を契機に開発中の新しい情報伝達手段であること。現在二百五十メートルまで安定して送信・受信が可能であること等だ。
そうして説明が終わった後に、エル(そう呼ぶことにした)が呟いた一言が問題の始まりだった。
「……つまり、無線?」
だって、私はその名称を一度たりともそのまま使ったことはない。フレメヴィーラ語に変換することなく、『日本語』そのままでは絶対に口にしていない。
「その話、もう少し詳しく聞かせてもらってもいいですか」
長丁場になりそうだ。
――――――
エルSide
僕の下に訪ねてきた同級生であるリヴァルレーネ・オービター――リヴァは、この世界で無線を作ろうと奮闘していたらしい。
無線の発想に、僕が教えた覚えのない
間違いなく彼女は、僕と同郷だ。前世の記憶を持つという人には言えない生まれ。しかし、そんなものはどうだっていい。
この世界に、無線をもたらそうとしている。
…それはそれとして、前世のロボトークをしたいわけでは、決してないのだ。
ないったらないのだ。
――――――
その後の長話で判明したことではあるが、エルと私では前世の記憶の受け継ぎ方がかなり異なっていた。エルは、前世の人格がそのまま今の身体に入った形で、私は、リヴァルレーネという
その後の熱烈なロボトークには圧倒されかけたが、浅く広くの
まあ閑話休題として、モートルビートは
そして、
…結局なにが事件だったかといえば、前世の記憶を持つことを間接的に指摘され、バレてしまったことである。
リヴァの人格男女比率は8:2
基本人格はリヴァルレーネという少女。技術関連への積極性と男性への距離感に、前世の記憶が影響を及ぼしている。
エルの人格エミュはこれでいいのだろうか…?