貞操逆転世界のメンズエステで働くことになった   作:カラスあげます

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翻弄の初陣と甘い罠

下半身裸のまま、滑らかな動作でベッドの上にうつぶせになった白石さん。

俺が困惑とパニックで固まっていると、彼女はベッドの脇にある大きな全身鏡越しに、俺の全身――特に、黒いブーメランパンツで包まれた下半身のラインに視線を向けた。

薄暗い部屋の光を受け、彼女の瞳が愉しげに細められる。

 

「へえ……結構いい体してるんだね? コウ君みたいな人、私本当にタイプなんだよね」

 

「え、あ……ありがとうございます……」

 

鏡越しに視線が合っていることに気づき、俺は慌てて目を逸らした。

お世辞だとしても、大人の綺麗な女性から面と向かって「タイプ」と言われるのは生心地がしない。動揺で熱くなった顔を隠すように、俺は必死でマッサージの準備へと取り掛かった。

 

最初はオイルを使わない指圧からだ。

俺は大きめのバスタオルを一枚手に取ると、無防備に晒された白石さんの腰から下へとふわりとかぶせた。何も履いていない下半身がタオルで覆われたことで、ひとまず胸を撫で下ろす。これなら、なんとか平常心を保って施術に集中できそうだった。

 

「いやいや、ほんとだよ? こんなかっこいい子にマッサージしてもらえるなんて、すごく嬉しいもん。これから毎回指名したくなっちゃうなー♪」

 

白石さんはうつぶせのまま、軽快で親しみやすい口調で会話を続けてくる。

タオルの上からふくらはぎに両手を置き、ゆっくりと体重をかけて圧をかけていく。

 

「痛くないですか……?」

 

「うん、ちょうどいいよ。上手だね」

 

「よかったです……」

 

最初は警戒心と緊張でガチガチだった俺の肩も、彼女の気さくな態度と雑談のおかげで、少しずつほぐれていった。

彼女はオフィスでの出来事や、日頃の仕事の愚痴を軽やかに語ってくれた。

 

「今日もさ、会社でいろいろ面倒なことがあって疲れちゃって……。はぁ、大人になって働くのって本当に大変だよー」

 

「そうなんですね……お疲れ様です」

 

ため息を漏らす彼女の背中を見つめながら、俺の中で小さな変化が生まれていた。

出迎えの時はグイグイ来られて怖かったし、どこか遊ばれているような感覚もあった。けれど、こうして日々の疲れを零す彼女を見ていると、純粋に「この人をマッサージで少しでも癒してあげたい」という優しい気持ちが芽生えてきたのだ。

 

俺は白石さんの横に正座で座り直し、ふくらはぎの筋肉を丁寧に指で揉みほぐしていった。

 

「特に凝っているところとか、辛い部分はありますか?」

 

「あー……私っておっぱい大きいんだよね」

 

「っ!?」

 

唐突に飛び出した身も蓋もないワードに、俺の手がピタリと止まる。

 

「だからさ、前側に重みがあるから、どうしても肩とか首が凝っちゃうんだよね。あとでそこ、集中的にお願いできる?」

 

「あ……はい、わかりました……」

 

悪気もなく言われた言葉にほっと安心する反面、先ほど彼女のブラウスを脱がせた時の、あの重みのある豊かな胸の柔らかさや、生々しい肌の熱が脳裏に鮮明に蘇ってしまった。急に視界に入る彼女の身体すべてが、先ほどよりも艶めかしく見えてきて胸が騒ぐ。

 

落ち着け、と自分に言い聞かせながら、マッサージする箇所をふくらはぎから太もも、お尻の境目へと上へ引き上げていく。

すると、白石さんが思い出したように声をあげた。

 

「あ、そういえばさ。足をマッサージするときに絶対に知っておいた方がいい上級テクがあるんだけど、教えてあげようか?」

 

「えっ? そ、そうなんですか?」

 

「そうそう。これをやるとお客さんの満足度が全然違うの。まずはね、私のふくらはぎを跨ぐ感じで座ってみて?」

 

「跨ぐ……ですか?」

 

よくわからないまま、俺は指示された通りに白石さんのふくらはぎの上に覆いかぶさるように跨いで座った。

いまの俺の服装は、上が全裸で下が極小のブーメランパンツ一枚だ。布地一枚を挟んだだけの状態で、彼女のふくらはぎの柔らかな感触が、俺の内ももにダイレクトに伝わってくる。

 

「そうそう。でね、もっと骨盤というか……恥骨を押し付けるようにしっかりと腰を落として座るの。そこでふくらはぎを揉みながら、自分の体重を使って太ももも同時にマッサージするんだよ♪」

 

「あ……」

 

その体勢をとった瞬間、俺はすべてを理解した。

恥骨を押し付ける――要するに、こちらの股間の膨らみを相手の脚に力強く擦り付けろ、ということだ。

一瞬固まったが、この貞操が逆転した世界では、男性側の身体の重みや密着感が女性客にとっての癒やしやサービスになるのかもしれない、と脳内で無理やり納得させようとした。

 

「こう……ですか……?」

 

「うん♪ そうそう! すごい、上手じゃん……あー、癒されるなー……」

 

白石さんは気持ち良さそうに目を細めている。

俺はたどたどしく手を動かし、太ももの肉を揉み上げていった。

 

だが、問題は俺自身の身体だった。

手の動きに合わせてタオル越しのお尻が上下に揺れる。鏡越しには、うつぶせになってベッドに押し潰された彼女の豊満な胸の横顔がしっかりと映り込んでいる。

そして何より、恥骨を押し付ける動作をするたび、ブーメランパンツで包まれた俺の男性器が、白石さんの柔らかいふくらはぎにグリグリと刺激されていた。

 

(やばい……落ち着け……俺……!)

 

貞操観念が逆転していない普通の男である俺にとって、このシチュエーションはあまりにも刺激が強すぎた。

意識すればするほど頭に血が上り、股間がじわじわと熱を帯びて硬くなっていくのがわかる。俺は必死で明日の講義のことや居酒屋のバイトのことを考え、自分を必死に宥めながら、なんとか両足の指圧を終わらせた。

 

「じゃ、じゃあ……次に、お背中と肩首のオイルマッサージに入りますね……」

 

息を整えながら、俺が白石さんの脇腹のあたりへ座り直そうとした、その時だった。

 

「あ、その時もすっごくおすすめのやり方があるから、しっかり教えるね♪ ここができるかできないかで指名率が段違いだから!」

 

「えっ……また何かあるんですか?」

 

「うん! まずね、私の顔の前に正面で正座して?」

 

言われるがまま、俺は白石さんの頭側のベッドの上に移動し、彼女の顔の前に向かい合う形で正座した。

 

「で、そこに私が正面から顔を乗せる感じだね♪」

 

「えっ……!?」

 

声が裏返った。

その体勢をとれば、目の前に正座する俺の股間――ブーメランパンツに包まれた中心部が、白石さんの顔面の真下に晒されることになる。

 

「こ、こんなやり方、店長さんから教わってないですよ……!?」

 

「あはは、これは選ばれたトップセラピストさんしか使わない上級テクみたいなものだからね♪」

 

白石さんは悪びれもせず、説得力のある口調でスラスラと説明を重ねる。

 

「本格的なマッサージ店に行ったらわかると思うんだけど、うつぶせ用の穴が開いたベッドってあるよね? あれをコウ君の膝の上でやる感じ。

普通にうつぶせになってると顔を左右のどちらかに倒さなきゃいけないから、首にずっと負担がかかっちゃうでしょ? でもこれなら首に負担がかからないし、コウ君も首と肩に手が届きやすいから、しっかり力を入れて施術できるんだよ♪」

 

「う……」

 

あまりにも筋の通ったもっともらしい理由に、知識のない俺は何も言い返せなくなってしまう。

 

「ね? お互いにとって良いことしかないでしょ? ほら、早くやってみて♪」

 

急かされ、俺は「分かりました……」と力なく頷くしかなかった。

 

俺が正座して太ももの幅を少し広げると、白石さんは「じゃ、よろしくね♪」と嬉しそうに言い、俺の膝の上にすぽりと顔を乗せてきた。さらに、彼女の両手は自然な動作で後ろへ回され、俺のお尻の丸みにポンと置かれた。

 

(な、なんか体勢がおかしい気がするけど……)

 

目の前には、彼女の頭と、俺の股間。

困惑と緊張で手が震えたが、俺は手にオイルを取り、彼女の首筋から肩にかけておずおずと指を走らせた。

 

――すると、驚いたことに本当に施術がやりやすかった。

顔が正面を向いているおかげで首筋のラインがまっすぐ伸び、真上から圧をかけやすい。手のひら全体で首から肩甲骨へとオイルを伸ばし、拳の関節を使って頭蓋骨のきわにある頑固なコリをぐっとほぐしていく。

 

「あ~……ん、そこすごく効く……コウ君、めちゃくちゃ上手……」

 

白石さんは満足そうに吐息を漏らし、俺の膝の上に顔を預けている。

本当に彼女のためになっているんだ、良い知識を教えてもらったんだと、俺は密かに胸を撫で下ろしていた。

 

「うん、すごく良い感じ! じゃあ、このまま背中の方もお願いね♪」

 

「はい、お背中ですね」

 

だが、そのまま背中全体へ手を滑らせようとした瞬間、俺は壁にぶつかった。

彼女が俺の膝の上に顔を乗せているため、俺の腕の長さでは腰や背中の下部まで手が届かないのだ。

 

「あの……手が届かないです……」

 

「あ、背中の際は重心を背中側にずらす必要があるから、体勢を変えた方が良いね!」

 

白石さんは待ってましたとばかりに指示を出す。

 

「このまま脚をパッと開いて、少しだけ膝立ちになる感じで背中側をお願いね♪」

 

「あ、なるほど……」

 

先ほどの手応えで白石さんを完全に信頼しかけていた俺は、疑うこともなく素直に指示に従った。

正座の姿勢から足を左右に開き、腰を少し浮かせて膝立ちになる。

 

――そして、ハッと息を呑んだ。

 

膝立ちになったことで、俺の股間と、白石さんの顔の位置が、先ほどよりも圧倒的に接近してしまったのだ。

ほんの数センチの距離。俺のブーメランパンツの膨らみが、彼女の目鼻立ちの目と鼻の先にある。

 

(やば……! これ、近すぎるんじゃ……!)

 

一人で焦りまくる俺を余所に、白石さんは「うん、その体勢! すごく力が入って良い感じだよ~」と能天気に声をかけてくる。

だが、俺は気づいてしまっていた。

彼女の視線が、目の前に迫る俺の股間の布地にじっと注がれていることに。

 

至近距離で股間を見つめられる恥ずかしさで死にそうになりながら、俺は一刻も早くこの体勢を終わらせようと必死で背中全体にオイルを塗り広げ、揉みほぐしていった。

 

その時だった。

 

俺のお尻の横に添えられていた白石さんの手が、唐突に動き出した。

すべらかな指先が、俺のお尻の肉を撫でまわすように妖しく揉み込んでくる。

 

「っ!?」

 

さらに、その指先がスッと滑り込み、ブーメランパンツの細い脇の隙間から、内部へと侵入してきた。

 

「ちょっ……!? な、何してるんですか!? やめてください!」

 

俺は思わず飛び退くように体勢を崩し、声を荒らげた。

すると白石さんは、クスッと楽しそうに笑いながら、あっさりと手を引っ込めた。

 

「あはは、冗談冗談♪ 反応がすごく可愛かったから、ついイタズラしちゃったよー。ごめんね?」

 

「もう……びっくりさせないでください……」

 

あまりにもあっさりと引き下がられたことで、俺の怒りは行き場を失ってしまった。

しつこく触ってこないあたり、やはり根は悪い人ではないのだろう。イタズラ好きの、少しフランクすぎる常連さんなのだと、俺は自分に言い聞かせて胸を撫で下ろした。

 

背中のマッサージを何とか終え、俺は息をついた。

 

「じゃあ……次は下半身のオイルマッサージに入りますので、足元に移動しますね」

 

俺は白石さんの頭側から離れ、ベッドの足元側へと回った。

これで危険な体勢からは解放された。そう安心した瞬間だった。

 

ベッドの上にうつぶせになったまま、白石さんがニヤリと妖しい笑みを浮かべて言い放った。

 

「きみってさ……めちゃめちゃ『むっつりスケベ』なんだね?」

 

「……え?」

 

時が止まった。

 

「私の体のこと、さっきからすごい見てくるし。それにさっき……私のふくらはぎに股間あてながら、ちょっと固くなってたでしょ?」

 

「っ!!??!?」

 

頭の中で何かが弾ける音がした。

顔が一瞬で爆発したように熱くなり、全身の血が逆流する。

 

「私、今までいろんなメンズエステに行ってきたけどさ。こんなに女性に対して性欲が強くて、分かりやすく興奮しちゃう子、初めてかも♪」

 

「ち、違っ……! それは、その……!」

 

ばれていた。

隠していたつもりだった興奮も、動揺も、視線も、生理現象も――そのすべてが、百戦錬磨の彼女には完全に筒抜けだったのだ。

絶望的な焦りと戸惑いで、言葉がうまく出てこない。

 

「口では『やめてください』とか『だめ』とか言ってるけどさ。本当はいろいろしてほしいのが見え見えなんだよね。可愛いなぁ」

 

「い、いえ! 本当にそんなつもりじゃ……!」

 

「まあまあ、いいじゃん♪ メンズエステと言ったら、これからが『本番』なんだからさ」

 

白石さんはクスッと楽しそうに笑うと、うつぶせのまま、ゆっくりと自分の両足を左右に押し広げた。

 

「じゃ、足のオイルマッサージもお願いね?」

 

彼女がかぶせているタオルの隙間から、開かれた足の真ん中に暗い影が落ちる。

薄暗くてはっきりとは見えない。

だが、俺は思い出してしまった。

タオルの下で、彼女が紙パンツを履いておらず、完全に『何も身につけていない』という事実を。

 

ダメだと分かっているのに、吸い寄せられるように視線がそこへ向かってしまう。

 

その様子を、白石さんはベッド脇の鏡越しにじっと見つめ、愉悦に満ちた表情で囁いた。

 

「さっきはふくらはぎと太ももだけだったけど……次はその『奥』まで、しっかりマッサージしてね?」

 

「あっ……」

 

安心していたはずの心が、一瞬で冷たい恐怖と底知れぬ動悸に塗りつぶされていく。

優しく親切なお姉さんの顔をした悪魔に、完全に退路を塞がれ、追い詰められていたのだと――俺は今更になって痛感していた。

 

流されるままに始まった、初出勤の100分コース。

俺の「本番」は、まさにここから始まろうとしていた。




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