貞操逆転世界のメンズエステで働くことになった 作:カラスあげます
静まり返ったワンルームの室内には、かすかなアロマディフューザーの作動音が「シュー……」という細い吐息のように響いていた。
空気中に漂っているのは、柑橘系の爽やかさと甘さが混ざり合った、どこか官能的で心を解きほぐすような芳香だ。窓から差し込む夕暮れ時の淡い光と、部屋の隅に置かれた間接照明のオレンジ色の柔らかな光が交差し、施術用マットの上に幻想的な陰影を作り出していた。
そのマットの上に、清楚な美少女――コトネさんがうつ伏せになって横たわっていた。
彼女の上半身から腰元にかけては、俺がふわりとかぶせた清潔なバスタオルで覆われている。だが、そのタオルの裾からは、思わず息を呑むほどに美しい両脚がすらりと伸びていた。
日焼けを一切感じさせない、透き通るような白い肌。太ももから膝、そして引き締まったふくらはぎへと続くラインは、まるで滑らかな彫刻のように無駄な肉がなく、それでいて女性らしいしなやかな柔らかさを予感させた。華奢な足首の曲線や、丸みを帯びた小さなかかと、さらには不織布の黒い紙パンツから覗く白い臀部(でんぶ)の境界線が、薄暗い部屋の中で艶生々しく浮かび上がっている。
(うわぁ……本当に綺麗だな……)
俺は心の中で感嘆のため息をつきながら、マットの脇に膝をついた。
これまで二ヶ月間、俺が相手をしてきたのは、白石さんや吉田さんのような百戦錬磨の年上女性たちだった。彼女たちは圧倒的な主導権を握り、俺が上が全裸で下がブーメランパンツ一枚という破廉恥な姿であることを良いことに、強引に触ってきたり、卑猥な言葉で弄んだりしてきた。
だからこそ、こうして純粋でウブなお客様を前にすると、まるで別世界に来たかのような錯覚と、どこか気後れするような緊張感が胸を締め付ける。
だが、今はセラピストとしての仕事を全うしなければならない。俺は息を整え、ゆっくりと両手を伸ばした。
「それじゃあ、コトネさん。まずはオイルを使わずに、タオル越しに全体のコリをほぐしていく指圧から始めていきますね~」
「は、はい……っ。よろしくお願いします……」
バスタオル越しに聞こえるコトネさんの声は、緊張のせいですっかり細くなっていた。マットに伏せた彼女の肩が、微かに上がっているのが分かる。
俺はまず、彼女の足の裏から指圧を開始した。
親指の腹を使い、足の甲や土踏まずのあたりをじんわりと圧迫していく。
「んっ……あ……っ」
タオル越しでも伝わってくるほど、彼女の体は華奢だった。力を込めすぎないように注意しながら体重をかけると、彼女の口から可憐で小さな吐息が漏れた。足の裏からふくらはぎ、そして太ももの裏側へと、ゆっくりと手を開いて押し込んでいく。
「力加減、大丈夫ですか? 痛かったりしたら、遠慮なく言ってくださいね」
「あ、はい……全然痛くないです……。すごく、気持ちいいです……っ」
コトネさんは顔を横に向け、マットに押し付けながら消え入りそうな声で答えた。彼女の白く細い首筋が、夕暮れの光を受けてほのかに赤く染まっているのが見えた。
少しずつ彼女の緊張をほぐすため、俺はマッサージの手を止めずに、世間話を投げかけてみることにした。
「コトネさんは、この近くにお住まいなんですか?」
「え……? あ、いえ、家は……都内の別の場所なんです。でも、この近くの大学に通っていて……」
「へえ! 大学生なんですね! この近くの大学ってことは……」
俺が何気なく尋ねると、コトネさんは少し躊躇うようにしながら、地元の人間なら誰もが知っている、国内でも有数の超秀才大学の名前を口にした。
(えっ……!? 慶明大学……!?)
俺は思わず指圧する手を止めそうになった。そこは偏差値がトップクラスで、全国から優秀な頭脳が集まる超難関大学だ。テレビのクイズ番組やニュースでも頻繁に取り上げられるような、まさに「天才」たちが通うキャンパスである。
「す、すごいですね……! 慶明大学なんて、僕みたいな人間からしたら雲の上の存在ですよ。学部はどちらなんですか?」
「あ……えっと、医学部……なんです……」
「い、医学部……!?」
俺は心の中で叫んだ。秀才大学の中でも、さらに頂点に君臨する最難関の学部だ。見た目がこんなにも可憐でアイドル級の美少女なのに、頭脳まで日本トップクラスだというのか。神様は一体どれだけのギフトをこの少女に与えれば気が済むのだろうか。
「すごすぎますよ、コトネさん……。じゃあ、将来はお医者さんを目指されてるんですか?」
「は、はい……一応、そのつもりで勉強しています……。でも、まだまだ全然で……」
恐縮するように肩をすくめるコトネさん。その謙虚な態度が、嫌味どころか育ちの良さをさらに強調していた。
会話を続けながら、俺は彼女の太ももから腰、そして背中へと指圧を進めていった。手から伝わる彼女の骨格は極めて華奢で、無駄な脂肪が一切ない。それでありながら、お尻から太ももにかけては女性らしいしなやかな丸みがあり、指を押し込むたびに吸い付くような弾力が返ってくる。
「お育ちもすごく良さそうですよね。お召し物や、お財布もすごく素敵なブランドのものでしたし……」
俺がそう言うと、コトネさんは少し困ったように息を吐いた。
「そんなことないです……。父が……まあ、ちょっとした会社を経営していて……実家がそういう環境だっただけなので、私自身の力じゃないんです……」
(会社の経営……! ガチの金持ちじゃないか……!)
溢れ出る本物のお嬢様感。
実家は裕福で、生まれながらに恵まれた環境に育ち、顔は抜群に可愛く、頭脳は日本最高峰。人生のイージーモードを完璧に体現しているような存在だった。
「でも、そんなコトネさんが、どうしてこういうメンズエステに来ようと思ったんですか? 正直、すごく意外で……」
俺が素直な疑問をぶつけると、コトネさんは顔をさらに真っ赤にして、恥ずかしそうに理由を語り始めた。
「あの……今日、大学のお友達と近くでショッピングをしていて……。そのお友達が『最近、すごく話題のメンズセラピストのリラクゼーションサロンがあるから、一緒に行ってみようよ!』って、半ば強引に誘われて……」
「えっ、お友達に連れられて……?」
「はい……。私、こういうお店があること自体まったく知らなくて……。最初はすごく怖くて断ろうとしたんです。だって、男の人と個室で二人きりになるなんて……そんなの、経験したこともなかったので……」
コトネさんは吐息を漏らしながら、当時の焦りを思い出しているようだった。
「でも、お友達が予約を取ってくれちゃって……。ビクビクしながらドアを叩いたんですけど……コウさんが迎えてくれて、すごく優しくお話ししてくださったので……本当に、安心しました……っ」
「そうだったんですね。怖がらせなくてよかったです」
俺は苦笑いを浮かべながら言った。彼女の言葉には一切の嘘や計算がなく、純粋な安堵感が込められていた。
「はい……! コウさんが、すごくお兄さんみたいに優しくて……。本当に良かったなって思ってます……」
コトネさんは緊張がすっかりほぐれた様子で、嬉しそうに声を弾ませた。施術用マットの上で、彼女は純粋にセラピストとの会話とマッサージを楽しんでいるようだった。
「あの……コウさんは、お仕事以外では何をされているんですか? もしかして……コウさんも大学生なんですか?」
コトネさんがふと、うつ伏せのまま首を少し傾けて尋ねてきた。
「あ、はい。僕も普通の大学生ですよ。潮見大学に通ってます」
俺が自分の通う私立大学の名前を口にすると、コトネさんはぽんっと手を打つような仕草を見せた。
「あ! 潮見大学なんですね! 私の大学からもすごく近いです! サークルのインカレとかで、お名前をよく聞きますよ! なんだかすごい偶然ですね……! 急に親近感が湧いちゃいました」
「あはは……まあ、近いですよね」
コトネさんは無邪気に喜んでいた。彼女にとっては、単なる身近な大学に通う同世代の親しみやすいお兄さん、という認識なのだろう。
しかし――。
コトネさんのその無邪気で純粋な笑顔と声を聞いているうちに、俺の胸の奥で、何かが歪んだ音を立てて渦巻き始めた。
(……慶明大学か)
俺の通う大学は、どこにでもあるごく普通の中堅私立大学だ。
実家は決して裕福ではなく、奨学金を背負い、毎日日銭を稼ぐために必死になっている。居酒屋のバイトでは時給1100円で汗だくになり、酔っ払いに頭を下げ、挙げ句の果てにはこの風俗まがいのメンズエステにたどり着いた。上が全裸で下が布地の少ない黒いブーメランパンツ一枚という破廉恥な格好をし、年上の女性客に体を触られ、セクハラに耐えながら、命を削るようにして金を稼いでいるのだ。
学業の成績だってギリギリで、日々のバイトの疲労で講義中に居眠りをしては単位を落としかけている。
それに比べて、目の前にいるコトネさんはどうだ。
生まれついての富裕層。実家は会社経営。誰もが羨む超難関大学の医学部生。顔はアイドル級に可憐で、スタイルも抜群。お金に苦労したことなど一度もなく、人生の苦難など知る由もない。
彼女は悪気など微塵もなく、100%の純粋さで俺に接してくれている。
だからこそ――その圧倒的な「格差」が、鋭利な刃物となって俺の自尊心を容赦なく切り刻んだ。
(俺は何のために、こんなパンツ一丁でペコペコしながらマッサージしてるんだ……?)
黒い嫉妬心が、胸の底からフツフツと湧き上がってくる。
俺がどれだけ苦労しても手に入らないものすべてを、彼女は生まれた時から当たり前のように持っている。
(……ちょっとくらい、悪戯してやってもいいよな?)
脳裏に、そんな邪悪な思いが浮かんだ。
いつも自分を可愛がって(という名のセクハラをして)くる白石さんや吉田さんたちの顔が思い浮かぶ。普段は一方的に攻められ、翻弄され、情けない声を上げさせられている俺だが、今の立場はどうだ?
俺はプロのセラピストで、彼女は何も知らないウブなお客様だ。
しかも、彼女は俺のことを「優しくて安心できるお兄さん」だと完全に信用しきっている。
この誰もが羨む超名門大学の清楚なお嬢様を、俺の手で少し困らせてやりたい。
その可憐な顔を真っ赤にさせ、ウブな悲鳴をあげさせて、俺の主導権のもとで翻弄してやりたい――。
一度芽生えた悪戯心は、暗い炎となって俺の全身を駆け巡った。俺は口元に浮かびそうになる意地悪な笑みを必死で押し殺し、声を一段低く落とした。
「……じゃあ、コトネさん。ここからはタオルを外して、オイルを使った本格的なマッサージに入っていきますね~」
「あ……はいっ。よろしくお願いします……っ」
コトネさんは何も知らずに、可愛らしく返事をした。
俺は彼女の背中を覆っていた大判のバスタオルを、ゆっくりと手繰り寄せた。
露わになる、白い背中とすらりと伸びた二本の脚。夕暮れの部屋の中で、彼女の滑らかな素肌が美しく輝いている。
俺はボトルからマッサージオイルを手に取り、手のひら全体に馴染ませた。体温でオイルを温めると、部屋の中に甘い香りが一層強く広がっていく。
「失礼しますね……」
まずはふくらはぎからオイルを塗り込んでいく。
オイルの塗られた俺の手のひらが、コトネさんの滑らかなふくらはぎを滑る。「ひやっ……」と彼女の肩が小さく跳ねた。
「冷たかったですか?」
「い、いえ……温かくて……すごく気持ちいいです……」
ここで俺は、体勢を変えた。
マットの横にひざまずいていた姿勢から、コトネさんの右足のふくらはぎの上に、自分の股間を押し付けるような形で跨がり、腰を下ろしたのだ。
俺の格好は、上が全裸で下が布地の少ない黒のブーメランパンツ一枚。
跨がったことで、俺のパンツで包まれた股間の膨らみが、コトネさんの柔らかいふくらはぎや太ももの裏側に、じわっとダイレクトに押し付けられる格好になる。
「……っ!?」
コトネさんの体が、一瞬でカチコチに強張った。
「失礼しますね~、こうやってしっかり体重をかけると、奥の深い筋肉までほぐれるんですよ~」
俺はすっとぼけた声を出しながら、両手で彼女の太ももの裏側を力強く揉み上げていった。
揉み上げるたびに、俺の股間と彼女の脚が擦れ合い、生々しい体温と圧迫感が伝わっていく。
「こ、コウさん……っ! あ、あの……っ」
コトネさんが、耐えかねたように途切れ途切れの声をあげた。
「ん? どうしましたか、コトネさん? 力加減、強いですか?」
「あ……あの……当たって……ます……っ」
「え? 当たってる……? ああ、僕の体勢ですか? 大丈夫ですよ、これが一番効率よくリンパを流せる施術の基本姿勢なんです。気にしないでリラックスしてくださいね~」
俺は白々しい言葉を並べ立てながら、揉み上げる位置をじわじわと高くしていった。
太ももの中間から、さらに上へ。
お尻と太ももの境界線ギリギリのところまで、オイルのついた手でヌルヌルと滑らせていく。
自由な動きと刺激の誘惑に身を任せ、太ももの最上部まで手を揉み上げたそのついでに、俺は指先を「つつっ……」と、彼女の着ている黒い不織布の紙パンツの隙間へと滑り込ませた。
「っ……!?!?!?」
指先が、紙パンツのゴムを押し広げ、その内側にある極上の柔らかい素肌――太ももの付け根の非常に敏感な部位に直接触れた。
「はっ……!? ふっ……んんっ……!」
コトネさんから、今まで聞いたこともないような息を呑む音が漏れた。
彼女の腰が、弾かれたように小さく「くねっ」と跳ねる。マットを掴む彼女の細い指先に、キュッと強い力が込められた。
(おいおい……まじかよ……)
俺は心の中で、驚きと意地悪な快感に口元を歪めた。
ほんの少し、紙パンツの隙間に指先を滑らせて敏感な皮膚をかすめただけだというのに、彼女の体は驚くほど過敏に反応していた。
(見た目はあんなに清楚で、超名門大学の医学部生なのに……体はこんなに敏感むっつりじゃないか……!)
普段、頭脳と理性に守られている完璧なお嬢様が、俺の指先一つで翻弄され、甘い吐息を漏らしている。
年上女性客にセクハラされ続けてきた俺が、今やこの完璧な美少女にセクハラ(施術という名の悪戯)をしているという圧倒的な役得感と支配感。胸の奥の黒い嫉妬心が、最高の優越感へと昇華していくのを感じた。
「どうしました? 力入ってますよ~、息を吐いてリラックスしてくださいね~」
俺は意地悪く声をかけながら、さらに仕掛けることにした。
「はーい、じゃあ次は『カエル足』のポーズをお願いしますねー」
「え……? カ、カエル足……ですか……?」
コトネさんが、困惑したように顔を上げかけた。
「はい。右足を軽く曲げて、膝を真横に開く姿勢です。股関節のリンパを集中ケアするのにすごく効果的だし、当店の人気メニューなんですよ」
俺は優しく説明しながら、彼女の右足の足首と膝を掴み、ゆっくりと真横に開かせていった。
「あ……っ、ん……っ」
右足が真横に開かれ、股関節が完全に開放される。
その姿勢になると、紙パンツの布地が引っ張られ、脚の付け根から秘所にかけてのラインが無防備に晒されることになる。
横の鏡を見れば、自分のそんな恥ずかしい姿が丸映りになってしまう。
コトネさんは顔を真っ赤にし、両手で顔を覆うようにしながらも、拒絶することなく俺の指示に従った。その表情には、恥ずかしさと同時に、どこか次に何をされるのかという密かな期待感が混ざり合っているように見えた。
「はい、上手ですよ~」
俺は彼女のまあるく引き締まった右側のお尻に、マッサージオイルをとろりと垂らした。
透明なオイルが、彼女の白い肌の上を滑り、お尻の曲線に沿って垂れていく。
そして俺は、お尻側から前側へ向けて、股関節とマットの間にできたわずかな隙間へと、オイルのついた自分の腕をぬるりと通した。
「~っ! す……すごいですね……っ! こ、こんなに距離感が近いんですか……っ!?」
コトネさんの声が震えている。
俺の胸元が彼女の背中に押し付きそうなほど密着し、腕は彼女の股関節の隙間に深く挿入されている。肌と肌が触れ合い、体温が直接伝わってくる距離だ。
「そうですよー。ここが一番コリが溜まりやすい場所ですからね~」
言いながら、俺は手先をさっきよりも露骨に、紙パンツの内側へと滑り込ませた。
「っあ……っ!?」
指先が、彼女の大切な部分――秘所のすぐ隣の敏感な粘膜近くの柔らかい肉を、直接「ぬちっ」と撫で上げた。
「はぁっ……! んぁ……っ、コ、コウさん……そこ……っ!」
コトネさんの体が大きくビクッと跳ね上がった。
彼女はもう、横の鏡で自分の姿を見る余裕など完全に失っていた。ぎゅっと目を瞑り、歯を食いしばりながら、襲いかかる恥ずかしさと甘い快感、そしてくすぐったさに必死で耐えている。
俺の指先には、彼女の体から伝わる生々しい熱気が、オイルの滑らかさと相まってくっきりと伝わってきていた。
(嘘だろ……こんなに反応してる……)
清楚でウブだと思っていたお嬢様の、隠しきれない本能の反応。
それを見た瞬間、俺の胸の中の悪戯心は、もはやとどまることを知らずに暴走し始めていた。もっと困らせたい、もっと甘い声をあげさせたい。
「どうしたんですかー? すごく熱くなってますよー?」
俺は白々しく言いながら、彼女の背中を覆っていたタオルを完全に払いのけた。
夕暮れの間接照明に照らし出された、コトネさんの白く滑らかな背中。
背骨の緩やかな曲線、可憐な肩甲骨のライン、そして一切の傷もない美しい肌が、完全に露わになっている。
俺はふと、自分が白石さんや吉田さんに何をされてきたかを思い出した。
彼女たちは、俺が油断している隙に、首筋や耳裏を強引に舐めてきたりしたのだ。あの時の、ゾクゾクするような焦燥感と快感。
(……一回くらい、やってみてもバレないよな?)
俺はコトネさんが背中を無防備に晒して息を荒げている隙を見計らい、顔を近づけた。
そして、彼女の美しい背筋のラインに沿って、下から上へと――
「れろーっ」
と、自分の舌を這わせて舐め上げてみた。
「ひぁああっっ!?!?!?!?」
コトネさんから、裏返った黄色い悲鳴が上がった。
背中に触れた温かく湿った舌の感触。電撃が走ったかのように、彼女の背中が大きく反り返り、全身の毛穴が一斉に開いたかのようにゾクゾクと震え出した。
「んんっ……!? あ、いま……なに……っ!? なにをしたんですか……っ!?」
コトネさんはパニックに陥り、顔を真っ赤にして振り向こうとした。
「え? あ、すみません、ちょっとオイルが垂れそうだったので、手で拭いましたよ~」
俺はとぼけた顔で嘘をついた。もちろん手ではなく舌なのだが、彼女からは見えない。
(うわ……すごい反応……! 普段やられていることを人にやり返すのって、こんなに楽しいんだ……!)
背徳的な楽しさと支配感が、俺の脳内麻薬をドバドバと分泌させる。俺はもう片方の左足も同じようにカエル足にさせ、ねっとりとオイルで攻め立てて、彼女をさらなる快感の沼へと引きずり込んでいった。
「はぁ……はぁ……っ、もう……無理です……っ、コウさん……っ」
両足をねっとりと解され、コトネさんはすっかり息も絶え絶えになっていた。
「ふふ、じゃあ次は、姿勢を変えましょうか」
俺は意地悪く微笑むと、彼女の耳元で囁いた。
「次は、『四つん這い』をお願いしますねー」
「え……っ!? よ、四つん這い……ですか……!?」
コトネさんは目を見開き、信じられないというように絶句した。
「四つん這いって……そんな……今よりもっと恥ずかしい格好じゃないですか……っ! 私、そんなの……っ」
「大丈夫ですよ。四つん這いは腰とお尻のストレッチに一番効果的なんです。さ、頑張ってください」
俺の優しくも断固とした声に、コトネさんは抗うことができなかった。すでに頭が快感と恥ずかしさで狂いそうになっていた彼女は、消え入るような吐息を漏らしながら、ゆっくりと身体を起こした。
そして、施術用マットの上に、両手(肘)と両膝をついた――「四つん這い」の姿勢をとった。
俺はその真後ろに、腰を下ろした。
(……うわっ、これはやばい……!)
目の前に広がる光景に、俺の息が止まりかけた。
四つん這いの姿勢になったことで、コトネさんの美しいお尻が、俺の顔のすぐ目の前の高さに突き出されていた。
黒い不織布の紙パンツ一枚だけで遮られた、丸みのある極上の美尻。そこにたっぷりと塗り込まれたマッサージオイルが、間接照明の光を反射して「ぬらぬら」と淫らに光り輝いている。腰を屈めているため、太ももとお尻の境界線がくっきりと強調され、紙パンツの隙間からは白い素肌が溢れ出していた。
「……すごく綺麗なお尻ですよ~」
俺は思わず、本音が口から漏れた。
「可愛いですよ、コトネさん」
「あぅ……っ! そんな……言わないでください……っ! お願いですから……見ないで……っ!」
コトネさんは顔を両腕の中に埋め、お尻を突き出した姿勢のまま、恥ずかしさのあまり全身を小刻みに震わせた。その耳も首筋も、熟したトウガラシのように真っ赤になっている。
俺はボトルを持ち上げ、彼女の光るお尻の上に向かって、オイルを「とろーっ」と垂らした。
温かいオイルが、お尻の割れ目や丸みに沿って伝い落ちていく。
探るように、両手の指先と爪先を立てた。
そして、皮膚に触れるか触れないか、髪の毛一筋分の力加減で、お尻の表面を優しく滑らせる「フェザータッチ」を開始した。
「ひくっ……!? んあぁっ……!!!!」
効果はてきめんだった。
手のひらで強く揉まれるよりも、この撫でられているのか触れられているのか分からないギリギリのフェザータッチは、神経を過敏にさせる。コトネさんは激しい反応を見せ、お尻を「びくくんっ」と跳ねさせた。
「我慢してくださいね~、力を抜かないと効果が出ませんよ~」
俺は彼女の反応を楽しみながら、意地悪く囁いた。
さらに俺は、膝立ちの体勢になった。
片方の手でお尻へのフェザータッチを続け、絶え間ない刺激を与えながら――もう片方の空いた手を、彼女の細い脇腹へと伸ばした。
脇腹から、肋骨のラインをゆっくりとなぞり、胸の下へ。
さらには、薄い不織布の紙ブラジャーの上から、彼女の柔らかい胸の膨らみを、指先で優しく「つつっ……」とフェザータッチで撫で上げた。
「っ~~~~~!?!?!?!?」
上と下、同時に襲いかかるフェザータッチのダブル攻撃。
「んんっ……! はぁ、はぁ、っ……! あ、ダメ……っ、これ……あぁっ……!」
コトネさんの全身がガクガクと激しく震え出した。
背中を反らせ、必死で耐えようとしているが、漏れ出る声を止めることができない。
(面白すぎる……! なんだこの子、反応良すぎだろ……!)
悪戯心と興奮が最高潮に達した俺は、さらに身を乗り出した。
四つん這いになっている彼女の背中に自分の胸を完全に密着させ、抱きすくめるような格好になる。
探るように、彼女の華奢な肩から、白く細い首筋、そして耳の裏側にかけて――
「れろーっ……」
と、舌を根元から滑らせて、ねっとりと舐め上げた。
その瞬間――。
「あっ……っ、あああああっ……!!! っく……っ、くぅぅううっ……!!!!」
コトネさんから、今までとは明らかに質の違う、限界を超えた声が上がった。
「~っ! ~っ!!」
四つん這いを支えていた彼女の手足から一瞬で力が抜け、コトネさんはドサリとマットの上に崩れ落ちた。
「はぁーっ……! はぁーっ……!……っ」
マットの上に横たわった彼女の体は、限界を迎えて力を失っていた。
潤んだ瞳はどこか虚ろで、焦点が定まっていない。全身の力が抜け切ってしまい、ただ荒い息を吐き出しながら肩を微かに震わせているだけだった。
「…………」
俺は、自分の下に転がって完全に脱力しているコトネさんの姿を、息を呑んで見下ろした。
(す、すごい……。俺のマッサージで、あの清楚で完璧な超お嬢様がこんなになっちゃったんだ……)
目の前で全身の力を無くし、荒い息を吐きながらマットに伏している彼女の姿を見て、胸の底から圧倒的な征服感と達成感がじわじわと込み上げてきた。
本来なら俺のような男が近づくことすら許されない、誰もが羨む超名門大学医学部のお嬢様。そんな彼女を、俺の手一つでここまで乱し、ウブで甘い悲鳴をあげさせることができたのだ。男と女の価値観や貞操観念が逆転しているこの世界において、合法的にこれほどの優越感と快感を味わえているという事実に、俺は深い感動すら覚えていた。
しかし――。
この時点で施術の範囲など、一般的なマッサージと比べてとうの昔に踏み越えていた。
ただのリラクゼーションや指圧の域など遥かに脱線し、セラピストとしての境界線など影も形もない。だが、背徳的な快感と支配感に完全に酔いしれ、激しく興奮している俺は、そんな当たり前の事実にすら気づくことができない。思考が完全に麻痺したまま、欲望と勢いに任せてどんどん先へと進んでしまう。
(まだまだ……こんなもんじゃ終わらせないぞ……)
俺は熱を帯びた笑みを浮かべながら、まだ呼吸を荒げている彼女の華奢な肩に優しく手を添えた。
「は……はぁ……っ……コ……コウさん……っ」
コトネさんは潤んだ瞳でぼんやりと俺を見上げ、力の入らない声でかすかに言葉を漏らすのが精一杯のようだった。
「ふふ、すごく良い反応でしたよ、コトネさん。身体の緊張がしっかりほぐれてきた証拠ですね~」
俺は白々しい言葉を口にしながら、彼女をさらに翻弄すべく、優しくトーンを落とした声で次の指示を出した。
「それじゃあ……次は仰向けでお願いしますね~」