デスイズザヒーロー!~悪の組織の怪人候補だった俺は亡き師匠の力を継承して最凶ダークヒーローとして無双する〜 作:蠱毒成長中
場面は引き続きショッピングモールのイベント会場!
『ふん、愚か者のミナドーマめ!
相手の実力も見極められずあっさり殺されおって、どうしようもなく無様な奴タマゴ……
もっともあの程度の社員など生かした所で利益にならぬ故、
死んでくれた方が得とも言えタマゴが……ともあれ、
ニチャルネッコ! 貴様の肉球でねじ伏せてやるタマゴ!』
『ニャッニャッニャッ! お任せ下され専務殿〜!
チャカイーズ製菓随一のスピードと戦闘技術を誇る我にかかれば、
そもそもあれしきの童貞など恐るに足らずですニャ!
加えてあの童貞、ミナドーマ如きを始末するのに相当無駄な体力を使い込んでおりますニャ!
つまり戦況に於ける我が優位はより揺らぎ無く、
極めて強固になったと言っても過言ではありませんニャ!』
カプセル内の全裸チビこと"専務"へ声高に宣言するのは、
例によってふざけたノリで乳がでかく、
かつ如何にも性悪然とした悪趣味な笑みを絶やさねえ猫怪人の
"ニチャルネッコ・タッチバック・
猫怪人ってだけに猫の耳と尻尾を生やし、両手には猫の手ぽい手袋、
上半身には黒い半袖パーカージャケットを羽織り、
両脚はストライプの縞模様ニーハイソックスってスタイル……なんだが、
パーカーの下はやけに薄っぺらく丈の短いベビードール一枚だけで、
靴どころかスリッパさえ履いてねえわ、ノーブラノーパンだわと大概イカレてやがる。
『ヒーロー気取りの腰抜け童貞よ!
運良く二連勝を遂げ調子付いているのであろーが、
貴様のビギナーズラックもここまでだニャ!
このニチャルネッコ・タッチバック・ν・ヌッコルポーが――
『
ニチャルネッコが意気揚々と、
まさに"カッコいい決め台詞"を放とうとしたその瞬間、
遮り空気をブチ壊すが如く、ユウトは形態切替を実行!
ベルトの作動音が鳴り響き"遺恨リーパームジョウ"の姿が変わる!
『……ウッニャアアアアアッ! 腰抜け童貞、お主ィ~ッ!
よくも我の決め台詞を邪魔してくれたニャ~ッ!?』
『知らねえよ』
二度目の形態切替を終えた"ムジョウ"。
その姿は"全身紫色のメカっぽいサソリ怪人"っつーのか。
特有のハサミや節足、毒針の意匠があちこちに見受けられるもんで、
大体2010年代以後のSF洋画によくいるメカ系の敵キャラを彷彿とさせた。
その名も"ギルタブリルモード"……
格闘特化のガルムモードや素早いヤタガラスモードとはまた違った特性を持つ形態だ。
『ニャニィッ!? 「知らん」!? 「知らん」とニャお主ィっ!?
それが! それがヒーローの言葉かニャッ!?
お主! お主はっ! ヴィランにとって戦闘開始前の決め台詞がどれほど重要なのか、
よもや理解しとらんのかニャアッ!?』
『……一応出しとくかァ』
アホほどバカみてえにキレ散らかすニチャルネッコを尻目に、
ユウトはやたらメカメカしい拳銃――ネズミ怪人ネムリーを始末したアレ――を手に取る。
その名も『ナガシノマグナム2015』。
防衛組織『セキガハラ』の構成員に支給される多機能拳銃の十一代目にあたるモデルで、
歴代最高傑作の一つと名高い完成度を誇る。
『……
意味深に唱えると、ナガシノマグナム2015は全長八十センチ前後の、
これまた全体的に紫色のメカサソリ風味な意匠の目立つアサルトライフルに姿を変える。
……まあ、どっちかつーとそれこそSF洋画『エイリアン』に出てくる
架空銃『M-41A』に紫色のメカサソリが覆い被さったようなデザインだが。
しかも設計上の都合なのか尻尾は
やけにゴツいハサミで左右から挟まれている。
これで赤かったらザリガニだロブスターだと言うヤツが居たかもしれねぇが、
流石に紫色でザリガニと言うヤツは……
『ニャッニャッニャッ! ニャんだその鉄砲はっ!
ドブ川のザリガニなんぞをそのままくっつけおって!
そんなデザインセンス皆無の武器で我が仕留められるワケないのニャッ!』
……居たわ、ここに。
『ファッションセンス終わってるヤツに言われたかねーな。
あとこいつはザリガニじゃなくてサソリだ。
……せめて伊勢海老だロブスターだと言っときゃ
「江戸川乱歩か〜!」ってツッコめたものをお前』
江戸川乱歩が長編『妖虫』やその改作版『赤い妖虫』の文中で、
サソリについて『伊勢海老を小さくしたような醜怪な姿』
と述べてんのは余りにも有名な話だ……有名だよな?
『……やっぱ「漫才のボケは賢くなきゃいけねえ」ってのはマジなんだなあ』
『……! ニャッ、ニャにおぉぉぉ〜っ!
腰抜けの童貞風情がっ! 言わせておけば好き勝手吐かしおって〜!』
例によって些細な挑発にブチ切れたニチャルネッコは全身の筋肉に力を込め跳躍、
まさに弾丸の如き勢いでユウトに襲い掛かる!
『ニャアアアアアッ!』
『おっと〜』
手袋に仕込んだ鉤爪でユウトを切り裂こうとしたニチャルネッコ。
だが奴の素早くも直線的な動きは比較的避けやすく、
よってユウトは突撃を難なく躱《かわ》す。
『ニャァ〜ッ! 避けてんじゃあ――
『お前が避けんなよっ』
初撃を回避され尚怒り狂ったニチャルネッコは再度飛び掛かろうとする!
だがその動作より早くユウトは狙いを定め、
銃身下部の
『ニャッ!? ――フギャァァァァッ!』
炸裂する擲弾。爆発に火の気はなく、
ただ広範囲に淡いオレンジ色のガスを撒き散らすだけ。
なもんで一見大したこと無さそうなんだが……
『ギニャアアッ! ニャアアアッ!
フッギョワアアアアアッ!?』
回避に失敗しガスを浴びたニチャルネッコは、
なんでかその場で狂ったようにのたうち回る。
とするとよもやなんかヤバい毒ガスでも詰まってたのか?
なんて思わずに居られねえトコだが、実際は……
『……えれェ効きようだなァ。
猫は柑橘類の匂いを嫌うとは聞くが、ここまでとは驚きだぜ』
なんとガスの主成分は、
廃棄予定だったミカンの絞り汁から抽出した香気成分!
それも十二倍に濃縮した代物だったんだ!
『ギニョアアアアア!
目がアアッ! 鼻がアアアッ!』
人間に爽やかと評される柑橘類の芳香も、
猫にしてみりゃただの悪臭……
まあ十二倍濃縮だと人間さえも嫌がりそうだが、
ともかくニチャルネッコは苦しみ悶える余り身動きを取れねぇでいる。
要するに自慢の機動力も形無しなワケで……
(どんなに素早かろうが、動けねえならただの
『グギャアアアアアッ!?
ヒギャアアアアアッ!?
ギニャアアアアアッ!?』
苦しみ悶えて動けねぇ所を一方的に狙撃されていく。
しかも弾丸は毒入りなもんで、
身動きが取れなくなるわ血が止まらなくなるわと散々な有り様……
元々そこまで頑丈でもないニチャルネッコがハチの巣にされて絶命するのに、
そう時間はかからなかった。
『アッギャアアアアッ……!
なぜ我が、こんなっっ……!』
力尽きた猫怪人の亡骸は脆い泥岩に変質、
骨や衣類まで跡形もなくボロボロに崩壊した。
(……呆気ねえな。もう少し色々やっときたかったんだが……)