デスイズザヒーロー!~悪の組織の怪人候補だった俺は亡き師匠の力を継承して最凶ダークヒーローとして無双する〜 作:蠱毒成長中
「ハイ。ええ。仰る通りで……ええ。
では、戻って報告書の方を……」
場面はとあるサービスエリア。
次々現れるヴィランどもを全滅させた
現職若手ヒーロー"遺恨リーパームジョウ"ことホンゴウ・ユウトは、
その場の事後処理を専門機関に任せつつ
自らが籍を置く防衛組織"セキガハラ"に改めて報告の連絡を入れていた。
当人としちゃ、このまま大急ぎで本部に戻って
正式な報告書を仕上げるつもりでいたようだが……
「――は? 何言ってんすかヒナガタさん。
いや、確かにそうですけど……
それ絶対今即興で考えたじゃないですか。
確かにそりゃ空撮ドローンの映像解析すりゃ
ヴィランとの戦闘データは取れますけど、
現場に立ってた奴が発言したって証拠がないことにはまた政府の奴らが……」
電話口の管理職から告げられたのは、
『報告なんて後回しでいいから、
近くで適当に観光でもしてこい』っつー、
聊か信じ難い"業務命令"だった。
しかもこの管理職、仕事はできるがかなりクセの強い性格なようで……
「ああもうわかりましたよっ、何も泣くこたぁないじゃないですかっ。
……ええ、わかりましたって。
はい。はい。仰せのままに。はい。
……やりませんってば、よっぽどのことでもねー限りはっ。
信じて下さいよもう」
終いにゃ泣き落としまでされちまったんで、
ユウトは管理職からの謎過ぎる提案を飲むしかなかった。
(な~んでうちの管理職はやたらとヒーローを休ませたがるかね……)
かくして獣風の赤い二輪車"ライドケルベル"を走らせたユウトは、
そのままサービスエリアを抜けて
無作為かつテキトーに進んでは曲がり、
時に折り返してまた進んでを繰り返し……
アテのないツーリングの果て、
ユウトが辿り着いたのは……
「"テーマパークに来たみたいだぜ、テンション上がるなぁ〜"
……って、言えばいいのか? こーゆー時は」
労働者や観光客で賑わう海上都市だった。
その名も『オーシャンアイランド
湊や市場、水産物養殖場から飲食店、
宿泊施設、水族館や遊園地、
果ては研究所やら教育機関まで、
様々な施設が建ち並ぶ
まさに"海の上のテーマパーク"と呼ぶべき場所……
「とりあえず時刻が時刻だし、
メシにすっか」
何ならどこか適当に宿を取って泊まってもいいかもしれない
なんて思いながら、ユウトは店を探すべく都市へ足を踏み入れる。
「はいよっ! 爆盛海鮮丼お待ちぃ!」
「どうも〜」
散策の結果ユウトが選んだのは、
魚市場近くに建つ簡素な大衆食堂だった。
食堂といっても建物らしい建物はなく、
レジ兼バックヤードのキッチントレーラーと券売機、
集会用テントに幾つかの折り畳みテーブルとパイプ椅子っつー、
ともすりゃイベント会場の即席ブースが如き簡素さだ。
(フム、美味えっ……!)
だがそんな見た目に反して料理は絶品……
店を切り盛りする老女の腕がいいことは、
元来それほど食通でもねえユウトでさえ理解できるほどだった。
と、その時……
――『警報! 警報! こちら安求溜海上防災局!
北西沖合より敵性怪獣の群れが接近中!
市民並びに観光客においては早急に避難を!』――
けたたましく鳴り響く警報……
見てみりゃ確かに北西の沖には怪獣らしき影が見える。
"群れで接近中"ってトコから見るに、
果たしてどんな感じかは分からんがあの一匹以外にも怪獣はいるんだろう。
「やれやれ、久々に来ちまったようだねぇ。
お兄さん、ドンブリ食べ終わったかい?
悪いんだけどお察しの通りこれから店仕舞いしなきゃいけなくてねぇ」
「ええ、この通り器はカラですわ。ご馳走様です」
不安げに歩み寄ってきた店主の老婆
――宇宙人か、はたまた異世界人だろうか、
"二足歩行する作業着姿のセイウチ"って感じの風貌だった――
に食器を返したユウトは、けれど若干心配そうに切り出した。
「然しオカミさん、大丈夫なんですか?
テーブルに椅子、看板やら集会用テントに券売機まで……
今から片付けてトレーラーに積み込むとなったら大仕事でしょう。
自分で良けりゃ手伝わせて下さい」
「何言ってんだいお兄さん、
あんただって逃げなきゃ危ないだろう?
その点あたしゃこの道三十年……
店仕舞いして逃げるなんて慣れっこなんだよ。
逃げ遅れて死んじまったらそん時はそん時、
寧ろお兄さんみたいないい客が怪我しちまう方がよっぽど辛いのさ」
「そういうコトでしたらご安心を。
自分、こういう者でして……荒事には慣れてますんでね」
「……やれやれ、そういうことかい」
ユウトがサッとセキガハラの社員証
――つまりは、ヒーローたる証拠――を見せれば、
老婆はすんなり納得し、ユウトの申し出を承諾する。
「オカミさん、テントの骨組みはどちらに?」
「そこに青いバンドがあるだろう? そいつで括ってから積んどくれ。
って、あんた大丈夫なのかい?
テントの骨どころか券売機まで、そんな風に軽々担いじまって……」
「ご心配なく。改造型なんで頑丈なんです」
ユウトの手伝いもあり、店の片付けは老婆の想定より遥かに早く完了した。
「いやあ、助かったよお兄さん」
「お役に立てたようでしたら何よりです。
ともあれオカミさん、
店仕舞いも済んだなら早くお逃げんなって下さい。
怪獣には飛び道具持ちだってザラにいるんです、
遠くにいるからって被害がないとは限らねえ」
「そりゃ勿論そうするけど……あんたはどうするんだい?
まさか、あいつらと戦おうってんじゃ……」
「ええ、そのまさかですが。
こちとら現職ヒーロー、ヴィランが出たら殺しに行くのが正解でしょう」
[列席御礼……♥]
意気揚々と宣うユウトが腹に手を翳せば、
体内に組み込まれた変身ベルト"クラナドライバー"が姿を現す。
「……そうかい。
ま、ヒーローってなぁそんなもんなんだろうねぇ。
行くなら止めはしないよ。
ただ一つ約束しとくれ。
死ぬんじゃないよ、くれぐれもね」
「勿論です。オカミさんのメシを一度しか食わずに死ぬなんて、
そんな勿体無えことできませんや」
老婆と軽く言葉を交わしたユウトは海の方へと向き直り、
迫る怪獣どもを見据えながらドライバーを操作する。
「転身……」
[フォルネウスモード……♥]
若い女の声……
例えるなら糞みてえなマゾ向けエロASMRの
ヒロイン()やってるクズの女悪霊みたいな感じだろうか、
そんなようなシステム音声を伴い、
ユウトは"遺恨リーパームジョウ"に変身する……。
ガルム、ヤタガラス、ギルタブリルに次ぐ四番目の形態、
その名は"フォルネウスモード"……
魚市場の作業員みてーな恰好をした緑色の大柄なサメ怪人って感じの、
如何にも"水中戦特化でパワー型"めいたビジュアルだった。
しかも開かれたサメの大口ん中には黒い球状の液晶画面じみた"顔"があって、
緑色の電光で象られた目と口からなるそれは、
無機質ながらも邪悪な笑みをたたえていた。
『さあ、食後の海水浴と洒落込もうかぁ!』
フォルネウスモードになったユウトはそのまま力強く海へ飛び込み、
遥か遠くに待ち受ける怪獣どもを討つべくクルーザーみてーなスピードで泳ぎ出す。
「……ヒーローってのも、色々いるもんだねぇ」