デスイズザヒーロー!~悪の組織の怪人候補だった俺は亡き師匠の力を継承して最凶ダークヒーローとして無双する〜 作:蠱毒成長中
さて、場面は前回から引き続きカイザージュピターの客室内。
予てよりライホウを欠きバンバ家とイカリ家の支配下に下ったセキガハラを奪還すべく、
策を弄していたヒナミだが……
そんな彼女の前に立ちはだかったのが"ダビデ王症候群"。
果たしてかの厄介な精神疾患の、何がそこまで問題だったかっつーと……
「"魂魄との"……」
「……"結び付き"?」
「に、御座いますか……?」
「なんや、言うたらアレですけどいきなりスピ系っぽい話んなりますやんか」
「いやスピ系って、言葉選ぼうぜ大将……」
「まあ確かに精神疾患に限らず疾病って結構、
魔術や心霊系の領域ともかかわりが強いとは聞きますけど……」
『うむ。まあ概ねそのようなものでね。
というのも、知っての通りダビデ王症候群を厄介たらしめる点は、
単に原理原因が不明瞭で治療法さえ全くの謎であるのもそうだが……
より単純に脅威であるのは
患者の異能や愛用していた専用装備が、
持ち主の精神状態に連動して暴走する……
通称"ツクモガミ現象"を伴う点にあると言っていい』
「そ、そういえば……!」
事実、それは二代目マズルフラッシャーの面々もずっと疑問に思っていた事柄だった。
ダビデ王症候群の患者の異能や装備が
"元"持ち主の精神状態に引っ張られて暴走する"ツクモガミ現象"……
嘗てその存在が認知されていなかった頃なんかだと、
安易に引退した患者の装備を他者に引き継がせ、
結果として暴走に起因する大事故を招いたとか、
そんなような事例は数知れず……。
ともすりゃカイザージュピターやローレンツバスターなんかの、
ライホウが愛用していた"レールガンマイスター専用装備"とて、
ツクモガミ現象による暴走を危惧した組織によって封印されてたワケだが……
『無論、ツクモガミ現象による暴走リスクを考慮すれば
カイザージュピターは元よりローレンツバスターすら封印を解く訳にはいかない。
だがこれらは歴代レールガンマイスターを象徴付ける装備であり、
伴う諸問題や過去の前例を鑑みるに、
解体や廃棄、ひいては封印措置すらも厳密には悪手……』
そう。
一度ツクモガミ現象の暴走リスクに見舞われた装備は、
単に
結局患者の精神状態次第で暴走しちまうんだ。
ある種呪いじみた"ツクモガミ現象"のしぶとさもまた、
ダビデ王症候群が厄介な所以と言っていい。
『加えて言えば組織をバンバ家とイカリ家の不当極まる支配から解放し、
世論を味方につけ邪魔が入らぬほど盤石な地位を築く為には、
"日本のヒーロー業界を代表する英雄"たるレールガンマイスターの完全復活が事実上ほぼ必須……
とすると装備を扱う上での最適解とて
"ツクモガミ現象に伴う問題を完全に解決した上での再利用"に限られる。
そのためボクは奔走したんだ。
大いなる力を枷から解き放つ為にね』
最早想像に難くねえ話だが、ヒナミの戦いは過酷を極めた。
何せ
その一方でツクモガミ現象の研究をも進めてたんだからな。
……いよいよ私生活が心配になってくるが、
他ならぬ親友の頼みとあっちゃ止まれねえのがニカイドウ・ヒナミって女だった。
『幸いにも社員たちはじめ数多の人々が手を貸してくれたお陰で、
何をも犠牲にせず順調に研究を進めることができた。
そして研究の末、遂に……
"器物に生じるツクモガミ現象"に限ってだが、
その全容が装備や機体へ浸透した使い手の、
愛着や執心といったある種の残留思念を起点として生じた
使う者と使われる物を繋ぐ"魂魄との結び付き"から生じたものと突き止めるに至ったのさ。
とは言え、今度はそこから更に
"ツクモガミ現象に伴う問題の解決"へ向けて動く羽目になったがね』
例えるならその道筋は、
満喫で半日かけて読破したと思った漫画に実は続編があって、
しかも続編まで読まなきゃ話がしっかり"オチねえ"って知った時みてえなもんか。
……とは言えそんな苦境さえ、ヒナミは乗り越えてみせた。
『ツクモガミ現象は使用者と道具の"繋がり"に拠るもの……
つまりそれそのものが患者を蝕む病状の一つでもある。
即ちこの問題の解決は、
ライホウ君に癒しと安寧を齎す結果にも繋がる……。
そう信じて尽力した結果、天が味方してくれたからだろう。
ライホウ君と彼の使っていた装備群との間にある"結び付き"の内、
ツクモガミ現象を引き起こす、
言わば病巣とか悪性腫瘍に近い部分の浄化に成功したんだ。
ただ如何せん未知の分野な上、
バンバ家やイカリ家の監視を掻い潜らねばならず、
結果こんなにも時間がかかってしまったがね……』
「いや、ですからその……」
「ご自身を卑下するの、やめません?」
『そうだろうか……』
「そうでっせ~。
閣下、メチャクチャようやっとるやないすか」
「なのにそんな言い方してたら、キャプテンも喜ばないんじゃないですか?」
『そう、かな……』
「そりゃ、そうですよっ!」
「なんかこの光景、見覚えがあるようなないような……
……ところでニカイドウ総司令っ、お聞きしたいのですけど」
『どうしたね、"マガジンウィッチ"のマリエくん』
「はい。お話し伺う限り、
結局ツクモガミ効果をどうにかできたのは分かったんですけど、
そこから先は、具体的にどうなったんですか?
色々複雑な法的手続きとかもあるでしょうし、
幾ら入念に準備をしてたって、
そんなトントン拍子で円滑に上手く行ったとはどうしても思えなくて……
あと、ホンゴウさん! 彼はどうなったんですか!?
ちゃんと日本に帰って来れるんですか!?」
『ふむ、その疑問を抱くのは尤もだな。
結論から言えば"どうということはなかった"よ。
"腕の立つ法律家"が手を貸してくれたのでね、
イカリとバンバの両家とも大勢逮捕者が出たし、
優秀な人材には軒並み逃げられ罰金刑や損害賠償請求で借金漬けの無一文……
監獄送りを免れてもほぼ再起不能レベルの深傷を負っただろうし、
事実上滅亡したと言っても過言ではあるまい。
あの有り様では最早セキガハラへ手出しをするどころか、
ネットの匿名掲示板に君らへの悪口の一つも書けるか怪しいレベルさ。
気になるなら後で調べてみるといい。
もうそろそろ報道され始める頃だろうからね』
特に狼藉の過ぎたイカリ・ジュンヤが辿った末路は凄まじく、
運よく法の裁きこそ免れたもののそれが逆にネットユーザの怒りに火を点けちまい、
ある意味死よりも辛い生き地獄を味わっていく羽目になるんだが……
それはまた、別の話。
『そして君らの同僚であるホンゴウ・ユウト……
"遺恨リーパームジョウ"の彼についても安心して欲しい。
曰くマジャット共和国での暮らしが案外気に入ってしまった為、もう暫く滞在するそうだ。
何事も無ければ近日中には帰国する予定でいると連絡を受けている』
(マジャットでの暮らしが……)
(気に入った……?)
(あの途上国も途上国のマジャット共和国で……?)
(治安とかほぼ死んでるのに……?)
(何ならここ最近は政府軍とヴィラン組織の争いが勃発した影響もあり、
特に環境が荒れ放題と聞きますが……)
(……例外的に暮らしやすい平和な地域に逃げ込めた、とか?)
ヒナミの聊か予想外過ぎる言葉に、六人は困惑せずにいられなかった。
さて、じゃあ実際はどうだったのかっつーと……
『オッラァァァァ!
ドーシュンッ!
このド変態のクソジジイがぁぁぁぁッ!』
『ハッハッハァ!
それでこそ俺の新たな"推し"!
この世界に必要なヒーローだぜっホンゴウユウトォ〜!
……わかった。お前の勝ちでいい。
参った降参だ! 投降する! 投降するから!
もう攻撃してくるなホンゴウユウトォッ!』
『うっせぇぞジジイッ!
今更そんな言い訳通るかボケぇ!
てめえがトゥーサとその姉貴に何したか
忘れたとは言わせねぇからなぁ……!?』
[Accept a graceful and gruesome death, Akera Doshun,
a member of the executive of "Al Gazed".
You have already offended him.
At that point, there can be no other option left than death.]
(和訳:潔く凄惨な死を受け入れなさい、
"アル・ガゼド"の幹部構成員アケラ・ドーシュン。
あなたは既に彼を怒らせた。
その時点で残された選択肢は死以外にあり得ません)
『略して"選択死"ってヤツだぁ~……
キミナのクソババアも地獄で待ってるぜぇ~!
てめえも
あのタイプは案外寂しがり屋だろうからなぁ~!』
『おい止せ遺恨リーパー! そいつはまだ殺すなっ!』
『一先ず生け捕りにしろってケンカン大臣の指示忘れたのかい!?』
『何ならキミナは死んでないぞ!』
『っていうかその武器で殺したら死体グチャグチャになっちゃうからっ!
せめて殺すなら原型が残る武器にしてよっ!』
『そうだそうだ!
折角世論が味方についてきたってのに、
国民からの印象悪くなったらどうすんだよ!』
娯楽の無さから暇を持て余す余り、
政府軍とヴィラン組織の抗争に自ら首を突っ込み、
しかも結構な戦果を上げちまった所為で正式な政府軍メンバーと見做された挙句、
政府側から『ひと段落つくまで政府軍に居てくれ』と懇願されちまっていたんだ。
……因みにマジャット共和国でのユウトの評判は、
政治家からは
『日本の有名ギネス級ヒーローが手を貸してくれていえる絵面は民衆ウケがいいし
シンプルに強くて戦場慣れしているから戦力として心強い。
兵士の死亡率がグンと下がったりと軍部の損害も抑えられているし、
その上実質あってないような報酬で働いてくれるのでとてもありがたい』
と概ね好評な一方、
現場の軍人からは
『実力は確かだし何度も助けられた恩義は感じているが、
それはそれとして好き放題暴れられると若干迷惑だし、
悉く八面六臂の大活躍ばかりされると
「もう彼だけでいいんじゃないかな」
「自分たちがついてきた意味ってなんだろう」と思わずにいられないから
そういうのはなるべくやめてほしい』と、
中々賛否両論だったようで……