8月2日
宿のおじさんから話を聞いた翌日、俺は眠気覚ましに冷たいコーヒーを片手に町をブラブラしていた
「あっ、颯ちゃんだー」
俺はその声に振り返る
まみさんだ
「いいなー、コーヒー飲んでる!まみちゃんも飲みたーい」
「あっちに売ってるよ」
俺が指差すとまみさんは走り出した
「まみさんがいるってことは...」
昨日の話だといずみさん達も一緒のはずだけど?
すかさずまみさんのいた店内を見渡す
やはり、いた
俺のテンションは上がるのに声をかけるのは臆病だった
やがて、目線が合う
じっと見ていたことがバレたんだろうか?
一瞬焦るも彼女は微笑んでくれた
「やあ、えっと。」
言葉に詰まるいずみさんの顔が一瞬、曇る
「颯さん、こんにちは」
静さんが俺の名前を呼ぶといずみさんの顔がスッキリした
「そうそう颯くん、ごめん。顔は流石に覚えたんだけど」
「ははっ、こんにちは。顔をもう覚えてくれてるなんて嬉しいよ」
「買い物してるの?」
いずみさんが俺の見ていたところを見た
女の子向けのアクセサリーだ
あれ?違和感しかない
「うん、まあ。そんなとこ...みんなも買い物中?」
「お馬鹿な観光客が買うようなアクセサリーなんて私が買うと思う?」
麗子さんは容赦ない、な
「そ、そうですね」
さすがお嬢様
一般庶民とはかけ離れた価値観だ
マズイ、苦笑いが漏れる
お店の人に聞かれたくないような立ち話を始めそうな雰囲気に静さんが提案した
「外に出ましょうか、まみの姿もないし...」
「まみさんなら、コーヒー買い(...に行ったみたいだよ?)」
俺の声を遮って麗子さんが鋭い一言を放つ
「閑古鳥も避けるような店に、何の遠慮があるっていうの?」
麗子さんの失礼極まりない態度に皆んな辟易している
「まあまあ」
さおりさんがたしなめ、外へ出る
「なんでわたくしたちが外に出なければいけませんの?別に良いんじゃなくて?」
麗子さんはまだ納得していないようだった
「そんなに熱くならなくても...」
いずみさんはめんどくさそうな顔をする
「高城先輩、別にええんちゃう?レキオの財宝についての話も聞いたんやから、もうここに要はないやろ?」
さおりさんは話題を逸らそうとする
「まあ、そうね」
麗子さんはしぶしぶ承諾した
「そ...そうね、また来ましょうか」
静さんはそう言ってまみさんを追う
「なあ、颯。レキオの財宝って何やと思う?」
さおりさんがふいに問いかけてきた
「金銀財宝かな?」
「だよな、そうに決まっとる!」
目がお金になっているような顔つきをキラキラさせるさおりさん
「でもそれなら直ぐに見つかるのではなくて?」
お金持ちの麗子さんはあまり宝に興味は無いみたいだった
面白い案はないだろうか、と頭を捻る
「いやでも。うーん、香水とかかな?」
「いいこと言うじゃん、颯くん」
この俺の一言にいずみさんが反応してくれた
「え?」
「私の趣味さ、香水集めなんだ。フルーティフローラル系とか」
「そうなの?だからいずみさんっていつもいい匂いがするんだ」
あれ?
空気が変わる
「...」
「...それ、気持ち悪いこと言ってるの自覚ある?」
いずみさんがイタズラっぽい目をして笑う
「え?」
「いつもいずみの匂いを嗅いでますの?それなら良いですが、まさか私たちの匂いも?」
麗子さんが実に嫌そうに睨みつけてきた
機嫌がさっきからずっと悪いままだし僕は顔を青くする
「ほんなら、お代を請求してもええ気がするなあ?」
さおりさんも呆れた様子で呟く
「ちょっ、待って?!」
さおりさんが追い討ちをかけてきて、僕は慌てる
「まみちゃんからは美味しい匂いがするでしょ?美味しいものいっぱい食べてるから!」
にこにことコーヒーを啜りながらまみさんが笑って歩いてきた
「冗談ですよね?颯さん」
静さんがクスッと笑う
「...そうそう、冗談だよ。みんなの事嗅ぎ回ってないよ?」
っていうか自然と匂ってくるんだからコレは仕方なくないか?
いずみさんと目がまた会って照れてしまう
「宿に戻ろうか」
いずみさんと僕を残し皆んな既に歩き出していた
「うん、僕も一緒に戻る」