卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

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7日目夜 洞窟報告

 

「川に着いた!けど、亮子さん達いないね?」

 颯は川辺を見渡した。

 水面は陽の光を受けてきらきらと輝き、ゆったりと流れている。川岸には何艘かのボートが浮かんでいたが、目当ての二人の姿は見当たらない。

「うーん? いると思うんだけどなあ」

 いずみも辺りを見回す。

「あっ、いずみちゃーん! こっちこっち、ここだよー!」

 川の向こうから、聞き覚えのある声が響いた。

「あっ、声がする!」

 颯が声のした方に目を向けると、一艘のボートがゆっくりとこちらへ近づいてくる。

「ボートに乗ってるみたいね」

「へぇ、気持ちよさそうだな」

 水面を滑るように進むボートを眺め、颯が呟いた。

「一緒に乗る?」

「へ? いいの?」

「もちろん」

 いずみは何でもないことのように答えた。

 やがてボートが岸に寄せられ、亮子と由紀恵が手を振りながら顔を覗かせる。

「お待たせー! ほら、乗って乗って!」

「ありがとう。お邪魔しまーす」

 颯が先に乗り込み、いずみがその後に続く。

 ボートが少し揺れ、颯は思わず縁を掴んだ。

「うわっ、揺れる!」

「大丈夫よ。そんなに暴れなければ」

「暴れてないって!」

 いずみの言葉に、颯は慌てて姿勢を整えた。

 四人を乗せたボートは、再びゆっくりと岸を離れていく。

「そういえば、二人とも洞窟は行ってたの?」

 由紀恵がオールを動かしながら尋ねた。

「そう、立ち入り禁止の看板のさらに奥に行ってみたよ」

 いずみが答えると、亮子が身を乗り出した。

「そうしたら?」

「そうしたら、石造りの台座があったの」

「すごいじゃない! 大発見ね!」

 亮子はパチンと手のひらを合わせた。

「やっぱり何かあったのね! 私ってばナイス!」

「いや、亮子さんが見つけたわけじゃないからね?」

 颯がすかさず突っ込む。

「何言ってるのよ! あの洞窟に行こうって言い出したのは私でしょ?」

「まあ、そうだけど……」

「つまり、私のお手柄ってこと!」

 亮子は得意げに胸を張った。

「ふふっ。亮子ちゃんらしいね」

 由紀恵が笑う。

 いずみはそんな二人を眺めながら、静かに口を開いた。

「でも、あの台座……何のためにあったのかしら」

 その言葉に、颯も洞窟で見た光景を思い出す。

 薄暗い岩肌の奥に、ぽつんと置かれていた石造りの台座。

 あの場所に、あれだけが残されていたことが気になっていた。

「ねえ、いずみちゃん。台座って、どんな形だったの?」

 亮子が身を乗り出す。

「四角く切り取った窪みがあって、何かを置くような、はめるような形だったわ」

「何かをはめる……?」

 亮子は顎に手を当てた。

「宝箱とか?」

「そんなものはなかったよ」

「じゃあ、宝石とか!」

「それもなかった」

「えー! じゃあ何もないの?」

「台座だけね」

「なんだぁ……」

 亮子はあからさまに肩を落とした。

「でも、何かを置くためのものなら、昔はそこに何かあったのかもしれないわね」

 由紀恵がそう言うと、いずみは小さく頷いた。

「そうね。そこに何があったのか、調べてみる価値はあると思う」

「よーし! じゃあ次は、その台座の謎を解明ね!」

 亮子が拳を握りしめる。

「……その前に、周りにあった骸骨も気になるんだけど?」

 

 

 颯がぼそりと呟いた。

「えっ?」

 亮子の笑顔がぴたりと止まる。

「いや、だから、骸骨が落ちてて……」

「……」

 亮子はしばらく黙り込んだあと、そっといずみの方を見た。

「……いずみ」

 

「なあに?」

 

「私、骸骨の話は聞いてないんだけど?」

 

「今、颯君が話してくれたじゃない」

 

「そういうことじゃなくて!」

 亮子は慌てて手を振った。

 

 

「だって、骸骨よ? 普通に考えて怖いじゃない!」

「さっきまで大発見だって喜んでたのに……」

 颯が呆れたように呟く。

「そ、それとこれとは別でしょ!」

 亮子は咳払いをひとつすると、颯に向き直った

 

 

「……そこは、ほら。男の子なんだから颯君が調べてよ!」

颯の背中をばしいっと叩く亮子

 

「痛いよ!しかもそこ男女関係ないしっ?!」

 

 

夕食

 

 

 夕食の席。

 

 テーブルには料理が並び、皆がそれぞれ食事を始めていた。

 いずみは箸を置くと、皆の顔を見渡した。

「みんな、聞いてくれる?」

「なあに? いずみ」

 静が顔を上げる。

「今日、亮子の言ってた洞窟の奥に行ってみたんだけど」

「行ってみたの?」

 美夏が興味深そうに尋ねた。

「うん。立ち入り禁止の看板の奥にね」

 いずみは昼間の出来事を思い出しながら、洞窟で見つけたものについて話し始めた。

「それで――」

 石造りの台座のこと。そこに四角い窪みがあったこと。そして、その周囲に骸骨が落ちていたこと。

 話を聞き終えると、皆それぞれに考え込むような表情を浮かべた。

「なるほど。石の台座ですか」

 美佐子が箸を置き、何か思いついたように口を開いた。

「もしかしたら、石板のようなものがはめ込まれていた可能性がありますね」

「石板……」

 由利佳が呟き、考え込むように視線を落とした。

「じゃあ、これからはその石板ってのを見つけることになるんだな」

 聖美が皆の顔を見回す。

「そうね。台座に何かをはめるような窪みがあったし、その可能性はあると思う」

いずみが頷いた。

 

「明日も川に行ってみようかな」

いずみが明日の予定を告げた瞬間

「あたしも行く!」

 美夏がすぐさま声を上げた。

「ふふっ。美夏ちゃん、やる気満々だね」

 由紀恵が笑う。

「だって、石板なんて気になるじゃん!」

 美夏は楽しそうに答えた。

「俺たちも河口に行ってみようぜ!」

 別の席から声が上がった。

「マングローブの根元が怪しいって、前に話が出てましたもんね」

 その言葉に、何人かが頷く。

「よっしゃ! 新井先輩、ウチも行くで!」

 元気よく声を上げたのは、舞奈だった。

「私たちは洞窟をもう一度見に行きましょう。落ちていたという骸骨も気になりますし」

 美佐子がそう提案すると、舞奈が頷いた。

「うふふ〜。呪いとか気になりますね」

「呪いはないと思いますけど、不思議な力があるかもしれませんね」

 めぐみが美佐子の言葉に同意する。

「え〜……まみちゃん、ヤダァ」

 まみが不安そうに顔をしかめた。

「じゃあ、ワタシと一緒に遺跡に行きまショ。志村先輩」

 シンディが助け舟を出す。

「うん! そうする〜」

 まみはほっとしたように笑った。

 どうやら、明日はそれぞれ別の場所を調べることになりそうだった。

「みんな張り切っちゃって、まあ」

 いずみは皆の様子を眺めながら、口角を上げて笑った。

 明日はどんな発見があるのだろう。

 そんな期待を胸に、夕食の席はいつもより賑やかなものになっていた。

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