卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

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8月2日 夜イベント

 

 

夕食が終わったばかりだというのに、俺は小腹が空いてしまった。

 

 部屋を出て、食堂へ向かう。

 

 廊下を歩いていると、ふわっと甘いような、少し不思議な匂いが鼻をくすぐった。

 

「ん? なんか変な匂い……香水?」

 

「そんなに変な匂い?」

 

 そう問いかけてきたのはいずみさんだった。

 

「いや、普通、食堂でしない匂いだなって」

 

「普通ってどういう匂い?」

 

「え? えっと……食べ物の匂いとか、消毒の匂いとか?」

 

「ふーん? まあ、いいや」

 

 いずみさんはそう言って、何でもないように笑った。

 

「何してたの?」

 

「香水を調合してたの」

 

「え?」

 

「だから調合。市販の香りってあんまり好きじゃないのよね」

 

「そうなんだ」

 

「うん。なんか、みんな同じ匂いになるじゃない?」

 

「香水ってそういうものじゃないの?」

 

「そうなんだけどね」

 

 いずみさんは少し考えるように首を傾げた。

 

「せっかくなら、自分だけのほうがよくない?」

 

「自分だけの香りか……」

 

「そう。だから色々混ぜてるの」

 

「失敗したりしない?」

 

「するよ」

 

「するんだ」

 

「当たり前」

 

 いずみさんは楽しそうに笑った。

 

「この前なんか、すっごい変な匂いになってさ」

 

「どんな?」

 

「説明できない」

 

「それ一番気になるんだけど」

 

「じゃあ嗅いでみる?」

 

「え?」

 

 いずみさんがポケットから小さな瓶を取り出す。

 

「これ」

 

 差し出された瓶を受け取る。

 

「開けていいの?」

 

「いいよ」

 

 蓋を開けて、少しだけ匂いを嗅ぐ。

 

「……あ」

 

「どう?」

 

「……なんか、甘い?」

 

「でしょ?」

 

「でも、ちょっとだけ変な感じ」

 

「やっぱり?」

 

 いずみさんが笑う。

 

「失敗作だから」

 

「先に言ってよ」

 

「だって、颯がどういう顔するか見たかったんだもん」

 

「ひどくない?」

 

「ふふっ」

 

 いずみさんは瓶を受け取ると、もう一度匂いを確かめる。

 

「でもね、こっちは結構いいと思う」

 

「どれ?」

 

「こっち」

 

 今度はいずみさんが別の小瓶を取り出した。

 

「嗅いでみて」

 

「また失敗作じゃないだろうな」

 

「違うって」

 

 疑いながら匂いを嗅ぐ。

 

 さっきとは違って、今度はほんのり甘くて、少し爽やかな香りがした。

 

「……いい匂い」

 

「ほんと?」

 

「うん」

 

「そっか」

 

 いずみさんが小さく笑う。

 

「じゃあ、これにしようかな」

 

「何に?」

 

「私の香水」

 

「もう決めたの?」

 

「うん。颯がいい匂いって言ったから」

 

「……俺の意見で決めていいのかよ」

 

「いいの」

 

 そう言って、いずみさんは瓶をしまった。

 

「じゃ、またね」

 

「え?」

 

「私、もうちょっと調合してくる」

 

「ああ……」

 

 いずみさんはそのまま廊下の奥へ歩いていく。

 

 しばらくして、ふと気づいた。

 

 さっきの香りが、まだ少しだけ残っている。

 

 ……なんだか変な気分だった。

 

暫く食堂にいたらいずみさんが戻ってきた

 

「まだいたの?」

 

「うん、お腹すいちゃって」

 

「ごめん、香水しか持ってないや」

ふふっ、と笑ういずみさん

 

 

「だよね、まみさんところに行ってみようかな」

 

「まみが分けてくれるとは思わないけど」

 

「確かに」

 

「あのさ、匂いってまだ残ってる?」

 

「うん?そうだね」

 

「そんなに強いかあ、じゃあそっちの窓開けて」

 

「分かった」

 

俺といずみさんは窓を全開にしていく

 

「もう今日は寝るしか無いんじゃ無い?朝のバイキングがいつもより美味しく感じると思うよ」

 

「確かに」

 

「ありがとう、あとで窓は締めに来るから。おやすみ」

 

「おやすみ」

そう手を振って大人しく自室へと戻ることにした

 

 

 

 

 

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