卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

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13日 河口日誌イベント

12日夜

 

「ねえねえ、みんな聞いて聞いて!」

 

「何? ペンタ君がまたハングっちゃったの?」

 

「ふにゃあ〜、ペンタくんがハングっちゃったの〜、じゃなくて!」

 

由紀恵が両手を広げるようにして、みんなの注意を引いた。

 

「由紀恵、コレ見つけたんだ!」

 

そう言って取り出したのは、錆びついた古いナイフだった。

 

「錆びたナイフ?」

 

「どこで拾ったの?」

 

「河口だよ」

 

「河口?」

 

「うん。干潮だったから、いつもは見えないところまで歩けたの。そしたら泥の中に埋まっててさ」

 

由紀恵がナイフをひらひらさせる。

 

「なんかさ、こういうのって宝探しっぽくない?」

 

「でも、ただのナイフかもしれないよ?」

 

「それでも面白いじゃん!」

 

由紀恵は楽しそうに笑った。

 

その夜、僕は何となくそのナイフのことが頭から離れなかった。

 

――河口。

 

干潮のときだけ姿を現す場所。

 

そこには、まだ何か残っているのかもしれない。

 

そんなことを考えながら眠りについた。

 

⸻

 

13日

 

宿を出てすぐだった。

 

「ねえ、颯君」

 

振り返ると、いずみさんが立っていた。

 

「由紀恵がナイフを見つけたっていうマングローブ……河口に行こうと思って。一緒にどう?」

 

「うん、行こう」

 

僕たちは二人で河口へ向かった。

 

「河口と言えばさ」

 

歩きながら、いずみさんが言う。

 

「干潮と満潮の差で、何か見つかるかな? って、みんな言ってたよね」

 

「うん。何か見つかるといいんだけど」

 

やがてマングローブが見えてきた。

 

入り組んだ根が泥の中からいくつも伸びていて、改めて見ると不思議な景色だった。

 

いずみさんは腕を組み、その木々を見上げる。

 

「相変わらず足みたいな形をしてて気持ち悪いな、この木」

 

「足滑らせないでよ?」

 

「もう転ばないって」

 

「この前、思いっきり転びそうになってたけど」

 

「あれは転んでないから!」

 

いずみさんは少しむっとした顔をして、先へ歩いていく。

 

「ほら、早く!」

 

「はいはい」

 

僕も後を追った。

 

しばらく辺りを歩いていると、いずみさんが突然立ち止まった。

 

「……あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「あそこ」

 

いずみさんが指を差す。

 

マングローブの木々の向こう。

 

半分以上を草や蔦に覆われた、古い建物のようなものが見えた。

 

「小屋?」

 

「小屋……?」

 

近づいてみる。

 

壁はところどころ崩れ、屋根もかなり傷んでいる。

 

「もうボロボロで小屋に見えないけど……」

 

「でも、これ小屋だよね」

 

いずみさんが周囲を見回す。

 

「自然と一体化してるんだね。これは見つからないわけだよ」

 

「入ってみる?」

 

「え? 中に入るの?」

 

「大丈夫だよ。ほら」

 

僕が先に中へ入る。

 

「いずみさんも」

 

「うわ〜……」

 

いずみさんが恐る恐る中へ入ってくる。

 

薄暗い室内には、壊れた机や棚が残されていた。

 

「なにここ?」

 

いずみさんが辺りを見回す。

 

「秘密基地みたいね」

 

「誰かが使ってたのかな」

 

「……かもね」

 

僕たちは部屋の中を探し始めた。

 

机の上には何もない。

 

棚にも、古い瓶や木箱がいくつか残っているだけだった。

 

「こっちは何もないな」

 

「颯君、こっち」

 

いずみさんの声がした。

 

振り返ると、彼女は古びた机の前にしゃがみ込んでいる。

 

「引き出し、開くよ」

 

「何か入ってる?」

 

「……うん」

 

いずみさんが引き出しから取り出したのは、黄ばんだ紙だった。

 

「それ、何?」

 

「これ……」

 

紙を広げる。

 

「羊皮紙……?」

 

「たぶん」

 

ところどころ文字が滲んでいて、僕には何が書いてあるのかさっぱり分からない。

 

「なんて書いてあるんだろう?」

 

「私にもわからない」

 

いずみさんが紙をじっと見つめる。

 

「でも……」

 

「うん?」

 

「シンディなら読めるんじゃないかな?」

 

「確かに」

 

僕は頷いた。

 

「持って帰ろう」

 

「うん」

 

いずみさんは羊皮紙を丁寧に畳んだ。

 

そして僕たちは、誰にも見つからないように眠っていた古い小屋を、もう一度振り返った。

 

 

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