「航海日誌の内容、エグかったよね……」
僕はぽつりと呟いた。
シンディが読めるところを翻訳してくれたけど、その内容は想像していたよりずっと重かった。
「宝を求めて争うなんて……怖いですよねぇ」
由利佳が小さく頷く。
「まあ、わたしたちには関係ないんじゃないの?」
いずみさんはそう言って、いつものように微笑んだ。
「そりゃそうよね」
美夏もいずみに同意する。
「いや、わからんで〜」
そこへ、さおりが口を挟んだ。
「え?」
僕たちが一斉にさおりを見る。
「だってさ、航海日誌に書いてあったんやろ? 宝の場所」
「……うん」
「それってつまり、今もその宝を探してる人がおるかもしれんってことやん?」
「まあ……そうなるのかな」
「やったら、その人らがこの島に来る可能性もあるんちゃう?」
さおりがそう言うと、さっきまで笑っていた美夏の表情が少し固まった。
「……え?」
「いやいや、さすがに考えすぎじゃない?」
いずみさんは笑っている。
けれど、僕は航海日誌のページを思い出していた。
そこに書かれていた、宝を巡る争い。
そして――最後まで記されることのなかった、その後のこと。
「……でも」
僕が口を開く。
「もし、まだ宝が見つかってないんだとしたら……」
「うん?」
「僕たちが見つけちゃったら……どうなるんだろう」
「…………」
一瞬、全員が黙った。
「……颯君」
いずみさんが僕を見る。
「それ、今言う?」
「ご、ごめん」
すると、さおりがニヤッと笑った。
「ほらな?」
「何が?」
「やっぱり、関係あるかもしれんで〜?」
「いや、まだ何も決まってないから!」
僕が慌てて否定すると、いずみさんがクスッと笑った。
「でも……ちょっと面白くなってきたね」
その言葉に、僕は思わずいずみさんを見る。
その目は、さっきまでとは少し違っていた。
まるで――何かを期待しているような目だった。
「もしも、うちらが争ったら、颯はんどないしはるん?」
さおりがニヤニヤしながら聞いてくる。
「そりゃもちろん、いずみさんは僕が守るよ」
「……あはは、なにそれ」
いずみさんが笑う。
「戸塚先輩なら、逆に颯はんを守りそうやな」
「……」
いずみは不機嫌そうに眉根を寄せる
僕は何も言えなかった。
「え、すんまへん。いまのはナシで」
さおりが慌てて付け足す。
「あはは、大胆発言だね。いずみも悪い気はしないでしょ?」
美夏が楽しそうにいずみを見る。
「……まあね」
いずみさんは少しだけ笑って、僕を見る。
その笑顔に、僕はますます何も言えなくなった。