「さおりさんと亮子さんといずみさんがいる……」
「何してるの?」
「ハア……なんやねん。なにもしてない」
「なんでそんなにガッカリしてるのさ?」
「颯はんが来るなんて思わんかったんや」
「え? どういうこと?」
「今ね、賭けてたのよ。最初に出会うのが男か女か」
いずみさんがそう笑う。
「あ……いずみさんは僕が来るって思ってたってことね」
「そう。いつも朝会うからさ」
茶化されると思ったら肯定された
何、なんか嬉しい
「その話を聞いたから、私もいずみに乗っかったってわけ」
亮子さんもそう微笑む。
「なんか恥ずかしいな……」
「たまたまやない気もするっちゅーか、まあええわ。とにかくウチの負けや」
「じゃあ、罰ゲームしてもらおうかな」
亮子さんがニヤニヤとさおりさんに言う。
「えっ? 罰ゲーム……」
僕は嫌な予感がした。
「なに? どつかれるの、僕」
「なんでやねん!」
さおりさんが僕の胸に向かって強烈なパンチを繰り出してきた。
「ぐはっ……」
「違う、違う」
いずみさんも笑っている。
「……じゃあ、何?」
……今のでよくない?
僕は殴られたところを撫でながら聞いてみた。
「最初に出会った男の子にナンパするんだよね」
「難破?」
「ちゃうわいっ!」
ドゴォ!
「痛っ?!」
今度はお腹に強烈な一撃をもらう。
「ねえ、颯君に八つ当たりはやめなよ」
いずみさんが溜息を吐いた。
「八つ当たり……なのか? もう罰ゲームは始まってるんじゃ……」
「確かに。これじゃあ颯君が罰ゲームしてるみたいじゃない。約束守ってもらうからね、さおり」
亮子さんは腕を組んだ。
「堪忍! 颯はん相手にできんわ~。戸塚先輩の前で」
「なんで?」
いずみさんが、さおりさんを見る。
「いずみ、いいんでしょう?さおりがナンパしても」
亮子がいずみに確認を取る
「構わないよ」
いずみさんはそう頷く
「ほらほら、僕をナンパするんでしょ?」
颯は身構えた。
「颯はんにも速攻で断られそうやし」
「何を言ってるの?」
亮子さんが首を傾げる。
「……」
長い沈黙。
やがて、さおりさんがぽつりと漏らした。
「ほんなら……茶しばきにいきましょか?」
「言ったね。さおり」
「じゃあ、あたし達はこれで。ゆっくりね、さおり」
「え? みんな行っちゃうの?」
「ほんまに行ってもうた……」
さおりさんと二人きりになってしまった。
「……茶しばきにでもいく?」
「いや、ほなこれで」
さおりさんは踵を返すと、そのまま駆け出していった。
「えっ?」
僕も思わずその背中を見送る。
「……なんだったんだ、一体……」