夕方ビーチのほうから声がしたので覗きにいくといずみさん達
がいた
「わたしは静かな海の方が好きかな」
いずみさんの後ろから僕は声を掛ける
「ん?なんの話?」
僕はひょっこりと顔を出した
「あ、颯君!今ね、サーフィンの話をしてたのよ」
亮子さんが手を振りながら応えた
「サーフィン?」
「このビーチだと波がないじゃない?だから、サーフィンはできないって言う話」
「颯君、やったことある?」
「いや、ないけど...興味はあるかな」
「そうよね、私もいつかやってみたいのよ」
亮子さんとの会話を聞きながら、いずみさんが提案する
「2人で習いにでも行けば?」
「いいわね、それ」
手を合わせて亮子さんは乗り気らしい
「いずみさんは行かないの?」
僕はいずみさんを見る
「わたしはいいかな、のんびりするのが好きだし」
「そっか、僕も遠慮しておこうかな」
「なんでよ」
亮子さんはえーっ、と肩を落とした
------------
夜、部屋にノック音が響いた。
「はい?」
颯は返事をして立ち上がると、ドアを開いた。
「いい?」
扉の前に立っていたのは、亮子さんだった。
「うん、どうしたの?」
「お腹空かない?」
「え? 夕飯食べたよね?」
「え? いや、あの……ほら。今日の夕飯、やけに少なかったじゃない?」
「そうかな?」
「そうなの! だから、ね?」
「何?」
「出前、取ろうっていう話」
「出前なんてできるの?」
「うん。一緒に頼んでくれる?」
「いいけど」
「じゃあ、決まりね!」
亮子さんは嬉しそうに笑った。
「何頼むの?」
「カツ丼」
「え? ガッツリ系だね」
「食べられるでしょ?」
「あ、うん。まあ……」
「じゃあ、待っててね。すぐ持ってくるから」
そう言って、亮子さんは部屋を出ていった。
------------
「……もう30分以上経ったけど」
さすがに少し遅い。
颯が時計を確認していると、廊下から足音が聞こえてきた。
「おまたせー!」
「あ、やっと来た!」
亮子さんが両手にカツ丼を抱えて戻ってきた。
「さ、食べましょ」
「うん」
蓋を開けると、湯気と一緒にいい匂いが広がる。
「んーっ、おいひぃ……やっぱり幸せ」
カツ丼を頬張りながら、亮子さんは本当に幸せそうな顔をしている。
「カツ丼、そんなに好きなんだ?」
思わず笑ってしまう。
「うん。三度のご飯より好き」
「それ、ご飯よりカツ丼が好きってことじゃない?」
「そうとも言う!」
亮子さんは嬉しそうに、もう一口カツ丼を頬張った。
その姿を見ていると、なんだかこっちまでほっこりしてしまう。
「出前は二品以上からなんてわけわかんないこと言われちゃってさあ」
「なるほど、それでだったんだ」
「まみが食べないって言うんだもん、あなたに頼むしかないでしょ?」
「男だからって、そんなに食べれるわけじゃないんだけどね」
「でも、食べてくれたじゃない?ありがとうね」
「どういたしまして」
「また誘うから、その時はよろしくね」
「うん」
「それじゃ、おやすみなさい」
「おやすみ」