卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

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ゲームの感想:苦戦したわ、いずみさんに会うの...


16日

「土産でもブラブラ見ようかな……」

 

店先に並んだ土産物を眺めながら、颯はひとりごちた。

 

「お土産見てるの?」

 

聞き慣れた声に振り向く。

 

「あっ、いずみさん! 奇遇だね」

 

「……そうね」

 

いずみさんは、なぜか少し素っ気ない。

 

「ん? なんか怒ってる……?」

 

「別に」

 

「そうかな?」

 

いずみさんは少しだけ口を尖らせると、土産物を眺めながらぽつりと言った。

 

「さっき、そういえば颯君に似た人を見たよ」

 

「え? 格好良かった?」

 

「娘と奥さんに付き合わされて、疲れた感じだった」

 

「何それ」

 

思わず笑ってしまう。

 

「タバコ咥えてさ、髪もぐちゃぐちゃで。あんたも、あんなふうに将来なっちゃうのかな?」

 

「それは分からないな。将来のことって、まだ分からなくない?」

 

「まあ、そうだけど」

 

いずみさんは、手に取った土産物を眺めながら少し考えるように黙った。

 

そして、何気ないことのように口を開く。

 

「……あたしは、家を継ぐかも」

 

「え?」

 

「何?」

 

「いや、家って……喫茶店?」

 

「そう。意外?」

 

「ううん。すごいな。それは」

 

「そう?」

 

「うん。いずみさんが店やってるところ、なんか想像できる」

 

「ほんと?」

 

「うん。似合いそう」

 

「……そっか」

 

いずみさんは、少し照れたように小さく笑った。

 

「じゃあ、颯君もそのうちお客さんになってよ」

 

「もちろん」

 

「その頃には、奥さん連れてたりして」

 

「え?」

 

思わず聞き返すと、いずみさんはいたずらっぽく笑った。

 

「ふふっ。冗談」

 

そう言って、いずみさんは再び土産物へ視線を戻した。

 

「じゃあ、またね」

 

「うん」

 

いずみさんはそのまま人混みの中へ消えていった。

 

颯はしばらくその背中を眺めていた。

 

なんだったんだろう。

 

少しだけ不思議に思いながら、颯もその場を後にした。

 

------------

 

少し歩いたところで、再び声を掛けられた。

 

「やあ、また会ったね」

 

「うん、着いてきちゃった」

 

さっき別れたばかりなのに、またいずみさんと顔を合わせる。

 

「何? 寂しがりやなの?」

 

「寂しがりや……ではないと思うけど」

 

「そうかなあ?」

 

いずみさんは楽しそうに笑う。

 

さっきまでとは少し雰囲気が違っていた。

 

「ナヨナヨした男ってさ、男として認めらんないんだよね」

 

「男としてか……」

 

颯は顎に手をやり、少し考え込む。

 

いずみさんはそんな颯を横目に見ながら、足元へ視線を落とした。

 

どうやら、さっきから何かを探しているらしい。

 

「ねぇ、いずみさん? さっきから何を拾ってるの?」

 

「ああ、石だよ」

 

いずみさんが拾い上げた石を手のひらに乗せる。

 

「石なんて何に使うの?」

 

「これはね。水面切りをやるんだよ」

 

「ああ、あれね」

 

「やったことある?」

 

「ないな」

 

「本当はこういう場所じゃなくて、波のない湖とか川でやるんだけど」

 

いずみさんは石をいくつか手に取って、その形を確かめている。

 

「結構いい石を見つけちゃったからさ」

 

「そうなんだ」

 

「跳ねる回数より遠くに飛ばすなら、どんな石がいいと思う?」

 

「平べったくて、コマみたいな石かな」

 

「あら」

 

いずみさんが少し驚いたように目を丸くする。

 

「まあ、よく分からないんだけど」

 

「なんで分かったの?」

 

「友達から聞いたことあったからさ」

 

「そうなんだ。あたしはお父さんから教えてもらったんだけどさ」

 

いずみさんは、手の中の石を眺めながら懐かしそうに笑った。

 

「お父さんと練習したんだ?」

 

「そう。なかなかできなくて苦戦したなぁ」

 

「僕ともちょっと一緒にやってよ」

 

「うん、いいよ」

 

いずみさんはしゃがみ込み、石の持ち方を見せてくれる。

 

「石はどう持つの?」

 

「こう」

 

颯も真似をして石を持った。

 

「それで、30度以下の角度で……投げるッ」

 

いずみさんが腕を振る。

 

石は水面を跳ねながら、向こうへ飛んでいった。

 

「おおっ!」

 

思わず声が出る。

 

「僕もやってみるね」

 

「頑張って」

 

颯は少しだけ姿勢を整える。

 

「とうっ!」

 

石を投げると、水面をいくつか跳ねてから遠くへ飛んでいった。

 

「うん、いいんじゃない? 初めてにしては上出来」

 

「でしょでしょ」

 

思わず鼻を高くする颯。

 

その様子を見たいずみさんは、少しだけむすっとした顔になった。

 

「むしろ最初から上手いとかズルイ……」

 

「え?」

 

聞き返した颯に、いずみさんはぷいっと顔を背ける。

 

「あっ、いずみさん!」

 

「じゃーね」

 

いずみさんはそのまま颯を残して、先に歩いていってしまった。

 

「……なんだったんだ?」

 

颯は手の中に残った石を眺めながら、首を傾げた。

 

少し先を歩くいずみさんは、振り返らない。

 

けれど、その歩く速度はほんの少しだけ速くなっていた。

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