卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

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17日夜イベント

夕方、港をブラブラしていると、さおりさんがいた。

 

「何見てるの?」

 

「見てみぃ、あのヨット!」

 

「あれはヨットじゃなくてクルーザーだね」

 

「どっちでもええやん! ほんま立派やなあ」

 

 さおりさんが目を輝かせながら、クルーザーを眺めている。

 

「クルーザー好きなの?」

 

「好きっちゅうか、金持ちの娯楽品って感じやん? きっと高城先輩も持っとるで〜」

 

「そうだね、持ってそう……って、ちょっと!」

 

 よっ、と軽い掛け声とともに、さおりさんがクルーザーへ乗り込んだ。

 

「ダメだよ、勝手に乗っちゃ……」

 

「コラーッ! お前ら何してんだぁ!!」

 

 僕の声を遮るように、怒号が飛んできた。

 

「うっひゃあああ! 逃げるで! 颯!」

 

「え、えぇ? 僕も?」

 

 わけも分からないまま、僕もさおりさんの後を追って走り出した。

 

 ――そして、夕飯の後。

 

 部屋でゆっくりしていると、ドアが鳴った。

 

「ほな、邪魔するで〜」

 

 聞き覚えのある声に、僕は嫌な予感がした。

 

「さおりさん? どうしたの?」

 

「いや、暇やったから話に来たんや」

 

 さおりさんは何事もなかったかのように部屋へ入り、僕の向かいに腰を下ろした。

 

「僕と?」

 

「そうや」

 

 昼間の騒動を思い出して、僕は少し警戒する。

 

「……なんかの罰ゲーム?」

 

「なんでそうなるんや、ちゃうって」

 

「でも面白い話できないしなあ」

 

「漫談のひとつもできんのか? じゃあ、マジックとか大道芸は?」

 

「うーん、やったことないな」

 

「なんや、つまらんな」

 

 さおりさんは呆れたように笑った。

 

 昼間はあんなに騒がしかったのに、今は二人きりの部屋で妙に静かだった。

 

「じゃあ恋バナでもしよか?」

 

「恋バナ?」

 

 思わぬ話題に、僕は首を傾げた。

 

 さおりさんはニヤッと笑うと、少し身を乗り出した。

 

「颯はん、戸塚先輩のことどう思ってるんや?」

 

「え? そりゃまあ、好きだけど?」

 

 あまり深く考えずに答える。

 

 すると、さおりさんが一瞬だけ目を丸くした。

 

「大胆発言やな……」

 

「でも、さおりさんのことも好きだし。みんなのこと好きだよ?」

 

 僕が何気なく続けると、今度はさおりさんが黙り込んだ。

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「いや……」

 

 さおりさんは口元に手を当て、しばらく僕の顔を見つめる。

 

 やがて、堪えきれないように吹き出した。

 

「エラい発言しとるなぁ。ハーレムでも目指すんか?」

 

「あはは、そんなことできないよ」

 

 僕が笑って答えると、さおりさんはますます楽しそうな顔をした。

 

「ほんまに?」

 

「うん?」

 

「ウチも候補に入ってるんか?」

 

 冗談めかした口調だったけれど、その目は僕の返事を待っている。

 

「もちろん」

 

 僕が即答すると、さおりさんは一瞬きょとんとした。

 

「……即答かいな」

 

 そして、呆れたように笑った。

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