卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

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19日

「ひんやりSUZUNARI?」

 

「アイスの新商品みたいですね」

 

町を歩いていると、大きく書かれた「試食」の文字が目に入った。

 

足を止めて近づいてみると、どうやら新商品の試食らしい。

 

「へぇ、試食していい代わりにアンケートを書くのか」

 

「ここで食べて、その場で書いちゃおう」

 

僕たちは店先に並べられた試食品を囲みながら、しばらくその場にいた。

 

「たむろってるって言葉、あんまり好きじゃないなあ」

 

由利佳さんが頬を膨らませる。

 

「あ、ごめん。次からは使わないようにするよ」

 

慌てて謝る僕を見て、いずみさんが小さく漏らした。

 

「そんなに言いなりにならなくてもいいのに」

 

「このアプリコット味、おいし〜」

 

由利佳さんが嬉しそうに声を上げる。

 

「本当だよね」

 

僕も頷いた。

 

思っていたよりさっぱりしていて、甘さもちょうどいい。

 

「これ、おいしいな」

 

「でしょ?」

 

由利佳さんと意気投合していると、隣にいたいずみさんが自分のカップを見た。

 

「いずみさん、何味?」

 

「アボカド味」

 

「えー、そっちも気になる」

 

由利佳さんがいずみさんのカップを覗き込む。

 

「アプリコット味も気になるけど」

 

「また貰ってくる?」

 

由利佳さんがそう提案した。

 

「……いいよ。また今度買って食べてみるから」

 

いずみさんはそう言って笑うと、アンケート用紙に目を落とした。

 

僕も隣からその用紙を覗き込む。

 

「何?」

 

「覗き込んだら書きにくい」

 

いずみさんが僕のおでこを軽く押して、少しだけ距離を取らせる。

 

「……」

 

「値段が中途半端か。僕もそれにしよう」

 

僕もペンとアンケートを準備した。

 

「ちょっと。本当に書いてるの?」

 

いずみさんが呆れたように笑う。

 

その拍子に、長い髪がさらりと揺れて、アンケート用紙の上をなぞった。

 

「いずみさん」

 

「何?」

 

「覗き込んだら書きにくい」

 

「マネするのが悪い」

 

「同じことを書く人がいるってことは、効果も倍以上になるはず……」

 

「どうだか」

 

いずみさんは呆れたように笑いながら、二人分のアンケート用紙をまとめた。

 

「アンケート、出してきてあげるよ」

 

「ありがとう」

 

そう言いながら、いずみさんは笑っていた。

 

 

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夕飯。

 

食事を終えて部屋へ戻ろうとしていると、舞奈さんの話が妙にひっかかった

 

「湖で指輪を拾ったんだって」

 

どうやら湖の中で、誰かが落としたらしい。

 

そんな話を聞きながら、部屋へ戻るため廊下を歩いていると――

 

「颯くん」

 

後ろから呼び止められた。

 

振り返ると、いずみさんが立っていた。

 

「明日、暇?」

 

「うん?」

 

突然の質問に、少しだけ首を傾げる。

 

「明日さ、一緒に湖行ってみない?」

 

「いいよ」

 

特に予定もなかったので、すぐに答えた。

 

すると、いずみさんが少し嬉しそうに笑う。

 

「水着で来てね」

 

「水着?」

 

「滝壺に潜るから」

 

「うん、分かった」

 

明日も湖か。

 

そう思いながら、僕は部屋へ戻った。

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