「約束、忘れてない?」
「うん、忘れてないよ」
「ほら」
僕は上着をめくり、チラッと水着を見せた。
「見せなくていいから」
いずみさんが呆れたように笑う。
滝壺に着くと、僕は軽く準備運動をした。
「さて、潜ってみるかな」
水の中へ入り、滝壺の底を探していく。
「あれ? いずみさん、まだ?」
振り返ると、いずみさんはまだ岸辺にいた。
「あんたの髪の長さと、あたしの髪の長さがどれくらい違うか分かってる?」
「あ……」
確かに。
「これでヨシ、と」
いずみさんが髪をまとめる。
「じゃあ行くよ」
いずみさんも水の中へ潜ってきた。
僕は周囲を探しながら泳いでいると、ふと水底に何かを見つけた。
「これ、なんだろう?」
僕はいずみさんの肩に手を置き、一旦上がるようにジェスチャーする。
二人で水面へ上がった。
「何? なんか見つけた?」
「石板……みたいなのがあったんだ。一緒に潜ってくれる?」
「分かった」
再び二人で水の中へ潜る。
僕の隣を泳ぐいずみさんに、目的の場所を指差した。
砂と岩の間に、平たいものが埋まっている。
いずみさんは目を凝らしたあと、親指を立てた。
そして、その石板らしきものに手をかける。
僕も反対側に手をかけた。
二人で力を込める。
石板が少しずつ動いた。
――いける。
そのまま持ち上げる。
そして、水面へ浮かび上がった。
「ぷはぁ!」
二人で顔を出す。
「これ、大発見だよ!」
「二人で持ち上げなくても余裕なんじゃない?」
「まあ、そう言わずに」
いずみさんが笑う。
二人で持ち上げた石板を眺める。
本当に見つけたんだ。
その実感が込み上げてきて、自然と笑顔になる。
「すごい、やった!」
僕が手を上げると、いずみさんも手を合わせてくれた。
パチン!
水しぶきが飛ぶ。
「みんなにいい報告ができるね」
「そうだね!」
二人で笑う。
水の冷たさも忘れるくらい、気持ちよかった。
自分たちで見つけて、自分たちで引き上げた。
その達成感が、なんとも言えず嬉しかった。
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夕飯。
食事を始めようとしたところで、いずみさんがテーブルの上に石板を置いた。
「コレ」
「どうしたの? コレ……」
亮子さんが目を見開く。
「滝壺から掬い上げたんだ」
いずみさんが説明すると、由紀恵さんが勢いよく立ち上がった。
「みんな聞いてぇー! いずみちゃんが石板見つけたよぉお!」
「マジか!」
「やりましたね、戸塚先輩!」
一気にみんなの視線が石板に集まる。
さっきまで普通に夕飯を食べていたのに、いつの間にかテーブルの上が発見物の鑑定会みたいになっていた。
聖美さんが顎に手を当て、石板をじっと見つめる。
「これ、どうすんだ?」
「石板については、鈴鳴島に詳しい宿のおじさんに、しばらく預けてみようと思うけど」
いずみさんがそう提案する。
「何かわかるかもしれないわね」
「洞窟の台座にハマるのか、も検証しましょう」
「そうだね」
みんなが頷く。
昼間、二人で水の中から引き上げた石板が、今はみんなの前にある。
いよいよ、この島の謎に近づいてきた気がした。