卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

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21日夜イベント

街に着くと、店の前でいずみさんが一人、座り込んでいた。

 

「いずみさん!? どうしたの? 具合でも悪い? おんぶして宿まで連れて行こうか?」

 

慌てて駆け寄る僕を見上げると、いずみさんは少し困ったような顔をした。

 

「いや、そうじゃなくて。まみと由紀恵が遅くて……早くしろって言ってきてくれない?」

 

どうやら体調が悪いわけではなく、単純に待ちくたびれているらしい。

 

頰を膨らませながら店のほうを見るいずみさんを見て、僕は思わず笑ってしまった。

 

「もう夕方だもんね。分かった。任せて」

 

「お願いね」

 

僕は二人を探しに、店の中へと入っていった。

 

------------

 

「ごめーん、いずみちゃん。待たせちゃって」

 

「いずみちゃんも、ごめんなさい」

 

二人を連れて店の外へ戻ると、いずみさんはようやく立ち上がった。

 

「あ、やっと来たか」

 

いずみさんは大きく伸びをすると、僕のほうへ向き直った。

 

そして、少し意外そうな笑顔を浮かべる。

 

「あの二人をちゃんと連れてきてくれたんだ! 意外と頼りになるじゃん。ありがとうね」

 

「うん。またあったら頼ってよ」

 

「はは、もうないことを祈るわ」

 

そんなことを言いながら、いずみさんは二人のほうへ歩いていく。

 

「いずみちゃん、明日もまみちゃんと一緒に行動しようね」

 

「えー、どうしようかな?」

 

いずみさんは腕を組み、本当に悩んでいるような顔で考え込んだ。

 

「ひっどーい、まみちゃんのこと嫌いなの?」

 

「……別にそういうわけじゃないけど」

 

「じゃあ、約束ねえ」

 

「勝手に約束しないでよ」

 

「やっぱりいずみちゃん、まみちゃんのこと嫌い〜?!」

 

目に涙を溜めたまみが、いずみさんの腕を引っ張る。

 

「だから、そんなことないってば……腕が痛いからやめて」

 

「えへへ」

 

いずみさんは困ったような顔をしている。

 

そんな二人のやり取りを眺めながら、僕たちは宿へと戻っていった。

 

夕飯

 

夕食を終える頃には、すっかりお腹いっぱいになっていた。

 

「お腹いっぱいだな……!」

 

僕は満足感に浸りながら、お腹をさすった。

 

さて、部屋に戻ろう。

 

そう思って席を立ったところで、後ろからTシャツを掴まれた。

 

「ん?」

 

振り返ると、まみちゃんが僕の服を掴んだまま立っている。

 

「何、まみさん?」

 

「あのね、お腹すいちゃったの〜」

 

「え? もう……?」

 

思わず夕飯を食べたばかりのテーブルを見る。

 

「さっき食べたばっかりだよね?」

 

「だって、お腹いっぱいになるまで食べたけど、もう消化しちゃったんだもん」

 

「いやいや、そんなにすぐ消化しないでしょ……」

 

僕は苦笑しながら首を傾げた。

 

「僕、部屋にも何も持ってないよ?」

 

「えー、お菓子とかアイスとか、なんか無い?」

 

「うーん……食堂になら何かあるんじゃないかな?」

 

「一緒に行ってくれる?」

 

「うん」

 

仕方なく、まみちゃんと一緒に食堂へ向かうことにした。

 

「ありがとう、いずみちゃんみたく優しいね。颯くん」

 

「え?」

 

不意にいずみさんの名前が出てきて、僕は少しだけ反応した。

 

そういえば、いずみさんも嫌々ながら、なんだかんだ面倒見はよさそうだもんな。

 

「あはは……」

 

僕は苦笑いを浮かべながら、食堂の中を見回した。

 

「今夜は何も残ってないなあ。ごめんね。出前でも取ってくれる?」

 

店員さんにそう言われ、まみちゃんは少し考え込んだ。

 

「出前かあ……」

 

「どうしたの?」

 

「二人前頼まないとなんだよね、確か」

 

「そうなの?」

 

「うー、まみちゃん。予算を静ちゃんに握られてて、出前とか自由にお金使えないよお〜」

 

そう言って、まみちゃんは頭を抱えた。

 

「この前、すごい量食べてたもんね……」

 

「うっ……」

 

図星だったらしい。

 

まみちゃんはしばらく悩んだあと、何かを決意したように顔を上げた。

 

「仕方ない……」

 

そして、ぎゅっと拳を握る。

 

「…………まみちゃん、我慢するよ」

 

ものすごい形相だった。

 

「えらい」

 

思わず素直な感想が口から出た。

 

「大丈夫? 僕が頼もうか?」

 

すると、まみちゃんは首を横に振った。

 

「人に迷惑かけないって、いずみちゃんと約束したからあ」

 

「そんな約束してたんだ」

 

「うん。迷惑かけるなら、明日一緒に行動しないって言われちゃってるんだあ」

 

「なるほどね」

 

僕は思わず笑ってしまった。

 

……ナイス! いずみさん!

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