街に着くと、店の前でいずみさんが一人、座り込んでいた。
「いずみさん!? どうしたの? 具合でも悪い? おんぶして宿まで連れて行こうか?」
慌てて駆け寄る僕を見上げると、いずみさんは少し困ったような顔をした。
「いや、そうじゃなくて。まみと由紀恵が遅くて……早くしろって言ってきてくれない?」
どうやら体調が悪いわけではなく、単純に待ちくたびれているらしい。
頰を膨らませながら店のほうを見るいずみさんを見て、僕は思わず笑ってしまった。
「もう夕方だもんね。分かった。任せて」
「お願いね」
僕は二人を探しに、店の中へと入っていった。
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「ごめーん、いずみちゃん。待たせちゃって」
「いずみちゃんも、ごめんなさい」
二人を連れて店の外へ戻ると、いずみさんはようやく立ち上がった。
「あ、やっと来たか」
いずみさんは大きく伸びをすると、僕のほうへ向き直った。
そして、少し意外そうな笑顔を浮かべる。
「あの二人をちゃんと連れてきてくれたんだ! 意外と頼りになるじゃん。ありがとうね」
「うん。またあったら頼ってよ」
「はは、もうないことを祈るわ」
そんなことを言いながら、いずみさんは二人のほうへ歩いていく。
「いずみちゃん、明日もまみちゃんと一緒に行動しようね」
「えー、どうしようかな?」
いずみさんは腕を組み、本当に悩んでいるような顔で考え込んだ。
「ひっどーい、まみちゃんのこと嫌いなの?」
「……別にそういうわけじゃないけど」
「じゃあ、約束ねえ」
「勝手に約束しないでよ」
「やっぱりいずみちゃん、まみちゃんのこと嫌い〜?!」
目に涙を溜めたまみが、いずみさんの腕を引っ張る。
「だから、そんなことないってば……腕が痛いからやめて」
「えへへ」
いずみさんは困ったような顔をしている。
そんな二人のやり取りを眺めながら、僕たちは宿へと戻っていった。
夕飯
夕食を終える頃には、すっかりお腹いっぱいになっていた。
「お腹いっぱいだな……!」
僕は満足感に浸りながら、お腹をさすった。
さて、部屋に戻ろう。
そう思って席を立ったところで、後ろからTシャツを掴まれた。
「ん?」
振り返ると、まみちゃんが僕の服を掴んだまま立っている。
「何、まみさん?」
「あのね、お腹すいちゃったの〜」
「え? もう……?」
思わず夕飯を食べたばかりのテーブルを見る。
「さっき食べたばっかりだよね?」
「だって、お腹いっぱいになるまで食べたけど、もう消化しちゃったんだもん」
「いやいや、そんなにすぐ消化しないでしょ……」
僕は苦笑しながら首を傾げた。
「僕、部屋にも何も持ってないよ?」
「えー、お菓子とかアイスとか、なんか無い?」
「うーん……食堂になら何かあるんじゃないかな?」
「一緒に行ってくれる?」
「うん」
仕方なく、まみちゃんと一緒に食堂へ向かうことにした。
「ありがとう、いずみちゃんみたく優しいね。颯くん」
「え?」
不意にいずみさんの名前が出てきて、僕は少しだけ反応した。
そういえば、いずみさんも嫌々ながら、なんだかんだ面倒見はよさそうだもんな。
「あはは……」
僕は苦笑いを浮かべながら、食堂の中を見回した。
「今夜は何も残ってないなあ。ごめんね。出前でも取ってくれる?」
店員さんにそう言われ、まみちゃんは少し考え込んだ。
「出前かあ……」
「どうしたの?」
「二人前頼まないとなんだよね、確か」
「そうなの?」
「うー、まみちゃん。予算を静ちゃんに握られてて、出前とか自由にお金使えないよお〜」
そう言って、まみちゃんは頭を抱えた。
「この前、すごい量食べてたもんね……」
「うっ……」
図星だったらしい。
まみちゃんはしばらく悩んだあと、何かを決意したように顔を上げた。
「仕方ない……」
そして、ぎゅっと拳を握る。
「…………まみちゃん、我慢するよ」
ものすごい形相だった。
「えらい」
思わず素直な感想が口から出た。
「大丈夫? 僕が頼もうか?」
すると、まみちゃんは首を横に振った。
「人に迷惑かけないって、いずみちゃんと約束したからあ」
「そんな約束してたんだ」
「うん。迷惑かけるなら、明日一緒に行動しないって言われちゃってるんだあ」
「なるほどね」
僕は思わず笑ってしまった。
……ナイス! いずみさん!