「はあ、なんやったん今の! 許せんわ」
さっきまで楽しそうにしていたさおりさんが、頬を膨らませながら吐き捨てる。
「どうしたの?」
「プロのカメラマンが、鈴鳴島に来てたんだけどさ」
「そうそう。あたしたちになんか酷いこと言って行っちゃったの」
二人ともまだ納得していないらしい。
「でもさ、有名な写真家なんだよ? 芸能人とかを撮ってたり」
「そんなんエロいのしか撮ってへんやろ」
さおりさんの言葉に、思わず苦笑する。
確かに、有名な写真家なら、それなりに凄い人なのかもしれない。
だけど、せっかくこんなに女の子がいる島に来ているんだから、もっと楽しく撮ればいいのに。
「僕がカメラマンなら、みんなを撮るのになあ」
そう言うと、隣にいたいずみさんがクスッと笑った。
「エロさから離れてる?」
「もちろん、いずみさんの水着ショットを狙う」
「……」
一瞬、いずみさんが僕を見る。
けれど、僕は構わず続けた。
「そして、ゆくゆくは写真集にして家宝に」
「あはは」
いずみさんが声を上げて笑う。
冗談のつもりだったけれど、笑ってくれたならよかった。
「もー、はやく次行きましょう」
由利香が頬を膨らませながら、僕たちを急かす。
どうやら話し込んでいる場合ではないらしい。
遺跡へ向かうと、石造りの遺構の隙間から、見たことのない珍しい花が咲いているのを由利佳さんが見つけた。
「あっ、見て! こんなところに珍しい花が咲いてるよ」
由利佳さんがしゃがみ込み、興味深そうに花を眺める。
「本当だ、少しだけ採ってみんなに見せる?」
いずみさんが提案する
「いや、そこまでしなくてもいいんじゃないかしら?」
静さんが花を見ながら、やんわりと止める。
「いっそ、天然記念物だったらええのになあ」
さおりさんが冗談めかして言う。
「そんなわけないでしょ」
美夏さんがすぐに返す。
「でも、第一発見者は名前をつけられるんだよね?」
何気なく聞かれた質問に、僕は少し考える。
「颯君だったら、なんて名前をつけるの?」
由利佳さんが振り返って僕を見る。
「いずみかな」
一瞬だけ、沈黙が流れた。
「……まあ、発見者の名前をつけるってよくあるけど」
いずみさんが花を見ながら、少しだけ困ったように続ける。
「なんであたしなの?」
「もう熱ぅーて、ウチら入る余地ないやん」
さおりさんが呆れたように笑う。
「そ、それは……」
返す言葉が見つからない。
自分でも、なんで迷わずいずみさんの名前が出てきたのか分からなかった。
「由利佳が第一発見者なんですけどぉー」
由利佳さんは口を尖らせると、僕たちより先に歩き始めた。
「良かったね、いずみ」
美夏が楽しそうにいずみさんをからかう。
「まあ、悪い気はしないかな」
そう言って、いずみさんはいつもの調子で笑った。