卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

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28日

 

「はあ、なんやったん今の! 許せんわ」

 

さっきまで楽しそうにしていたさおりさんが、頬を膨らませながら吐き捨てる。

 

「どうしたの?」

 

「プロのカメラマンが、鈴鳴島に来てたんだけどさ」

 

「そうそう。あたしたちになんか酷いこと言って行っちゃったの」

 

二人ともまだ納得していないらしい。

 

「でもさ、有名な写真家なんだよ? 芸能人とかを撮ってたり」

 

「そんなんエロいのしか撮ってへんやろ」

 

さおりさんの言葉に、思わず苦笑する。

 

確かに、有名な写真家なら、それなりに凄い人なのかもしれない。

 

だけど、せっかくこんなに女の子がいる島に来ているんだから、もっと楽しく撮ればいいのに。

 

「僕がカメラマンなら、みんなを撮るのになあ」

 

そう言うと、隣にいたいずみさんがクスッと笑った。

 

「エロさから離れてる?」

 

「もちろん、いずみさんの水着ショットを狙う」

 

「……」

 

一瞬、いずみさんが僕を見る。

 

けれど、僕は構わず続けた。

 

「そして、ゆくゆくは写真集にして家宝に」

 

「あはは」

 

いずみさんが声を上げて笑う。

 

冗談のつもりだったけれど、笑ってくれたならよかった。

 

「もー、はやく次行きましょう」

 

由利香が頬を膨らませながら、僕たちを急かす。

 

どうやら話し込んでいる場合ではないらしい。

 

 

 

遺跡へ向かうと、石造りの遺構の隙間から、見たことのない珍しい花が咲いているのを由利佳さんが見つけた。

 

「あっ、見て! こんなところに珍しい花が咲いてるよ」

 

由利佳さんがしゃがみ込み、興味深そうに花を眺める。

 

「本当だ、少しだけ採ってみんなに見せる?」

 

いずみさんが提案する

 

「いや、そこまでしなくてもいいんじゃないかしら?」

 

静さんが花を見ながら、やんわりと止める。

 

「いっそ、天然記念物だったらええのになあ」

 

さおりさんが冗談めかして言う。

 

「そんなわけないでしょ」

 

美夏さんがすぐに返す。

 

「でも、第一発見者は名前をつけられるんだよね?」

 

何気なく聞かれた質問に、僕は少し考える。

 

「颯君だったら、なんて名前をつけるの?」

 

由利佳さんが振り返って僕を見る。

 

「いずみかな」

 

一瞬だけ、沈黙が流れた。

 

「……まあ、発見者の名前をつけるってよくあるけど」

 

いずみさんが花を見ながら、少しだけ困ったように続ける。

 

「なんであたしなの?」

 

「もう熱ぅーて、ウチら入る余地ないやん」

 

さおりさんが呆れたように笑う。

 

「そ、それは……」

 

返す言葉が見つからない。

 

自分でも、なんで迷わずいずみさんの名前が出てきたのか分からなかった。

 

「由利佳が第一発見者なんですけどぉー」

 

由利佳さんは口を尖らせると、僕たちより先に歩き始めた。

 

「良かったね、いずみ」

 

美夏が楽しそうにいずみさんをからかう。

 

「まあ、悪い気はしないかな」

 

そう言って、いずみさんはいつもの調子で笑った。

 

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