ゲーム懐かしいよね、ほんと!
昔に戻りたいー
「もう明日で最終日か。お土産でも覗こうかな」
鈴鳴島で過ごす時間も、今日で最後だ。
そう思うと、楽しかった時間が急に短く感じられる。
何となく店を覗いてみようと中へ入ると、そこにはいずみさんがいた。
「何か買ってくの?」
「何か身につけられるもの、何かないかなって思って」
せっかくここまで来たのだから、何かこの島にいた証になるものが欲しかった。
「鈴鳴Tシャツとかは?」
いずみさんが店に並んでいるTシャツを指差す。
「Tシャツっていっぱい持ってるのよね……それはちょっと」
「そうか……他に何か」
二人で店内を見回していると、いずみさんが何かを見つけた。
「これなんかどう?」
そう言って、いずみさんが僕に見せたのはブレスレットだった。
シンプルだけど、身につけるにはちょうどいい。
「凄くいいと思うよ」
「じゃあ、これにしよう。颯君は?」
「僕もそれにするよ」
「おそろいじゃん」
いずみさんが僕の顔を見る。
「嫌?」
「嫌じゃないけど、後悔しない?」
「なんで? しないよ」
迷う理由なんてなかった。
「そっか。ならいいんだ」
いずみさんは、少しだけ嬉しそうに笑った。
* * *
川へ着くと、いずみさんは水辺に立っていた。
穏やかな風が吹き、ゆらゆらと揺れる水面に光が反射している。
いずみさんは、何をするでもなく、その水面をじっと眺めていた。
「何見てるの?」
「別に」
「そう?」
僕も隣に立ち、同じように川を眺める。
しばらく静かな時間が流れた。
すると、いずみさんがふと口を開いた。
「ねえ、颯君ってさ……」
「ん?」
「突然、彼女が甘えてきたらどうする?」
突然の質問に、僕は少し考える。
「え? そりゃ思いっきり甘やかせるよ」
いずみさんは水面を見たまま、ふっと笑った。
「そっか、良かった。ウチのお父さん、甘えさせてほしい時は思いっきり甘えさせてくれるからさ」
「どんどん僕にも甘えていいからね?」
「ふふっ、ありがとう」
「う、うん」
あまりにも素直な返事だったので、僕は少し驚いた。
いずみさんって、こんなに大人しく「ありがとう」って言うんだ。
普段のいずみさんなら、もっとからかったり、照れ隠しをしたりする気がする。
そんなことを考えていると、いずみさんが顔を上げた。
「ほら、珊瑚礁。最後に見てこよう」
「うん」
いずみさんに手を引かれ、僕たちは珊瑚礁へ向かった。
* * *
珊瑚礁に着くと、周囲には誰もいなかった。
波の音だけが聞こえる。
いずみさんが辺りを見回して、ぽつりと言った。
「ここには二人だけだね」
「……」
なんだ、この空気。
さっきまでと何かが違う。
二人きりだということを意識すると、急に緊張してきた。
「うん? ……そうだね」
「それじゃあ……二人でさ」
いずみさんがこちらを見る。
心臓が大きく跳ねた。
ドクンッ。
何だ?
何を言おうとしてるんだ?
「思いっきり海に向かって叫ぼうか」
「え?」
思わず聞き返してしまった。
「え?」
いずみさんも片眉を上げる。
「……あ、うん」
一拍遅れて、僕は返事をした。
二人で海に向かって立つ。
「鈴鳴島、サイコォー!!!」
いずみさんが思いっきり叫んだ。
「いずみさん、サイコォー!!!」
僕も負けじと叫ぶ。
そのまま勢いに任せて、頭に浮かんだ言葉を口にした。
「大好きぃいーーーーー!!!」
叫んだ瞬間、自分でも何を言っているんだと思った。
隣を見ると、いずみさんが呆れたような顔をしている。
「なにそれ」
そう言いながら、いずみさんは思わず吹き出した。
「思ったことでいいんでしょう?」
「いいけどさ」
いずみさんは笑いながら海を見る。
僕もつられて笑った。
さっきまでの妙な緊張が、少しだけ和らいだ。
少しして、いずみさんが何かを思い出したように口を開いた。
「あたし、カラオケ大好きなんだよね」
「えっ、僕も大好き」
思わず食い気味に答える。
「それじゃあさ、一緒に行かない?」
「うん。いずみさんにも会えるし、絶対一緒に行きたい」
迷う理由なんてなかった。
いずみさんは少しだけ目を細めて、僕を見る。
「帰るまでに一回電話してくれる?登録した番号間違ってたら嫌だし」
「うん。宿に戻ったらすぐする!」
そう答えながら、僕はふと思った。
鈴鳴島で過ごす時間は、もうすぐ終わる。
でも――。
島を離れたあとも、いずみさんと会える。
そう思うと、最終日という言葉が、少しだけ寂しくなくなった。