卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

52 / 53
30日 遺跡イベント②

 

「やっと頂上……?」

 

最後の一歩を踏み出したところで、僕は大きく息を吐いた。

 

振り返ると、ここまで登ってきた道がずっと下まで続いている。

 

「凄い登ったね。平気?」

 

「うん、見て! ほら」

 

いずみさんが嬉しそうに顔を上げる。

 

その視線の先には、遠くまで広がる景色があった。

 

「凄い……港があんなに小さく見える……」

 

「本当だ。凄い景色だね」

 

さっきまで歩くことに必死だったのに、疲れも忘れてしまうほどだった。

 

眼下には、僕たちが歩いてきた町が広がっている。

遠くには海が見えて、その向こうまで空が続いていた。

 

いずみさんはしばらく黙って、その景色を眺めていた。

 

そして、ぽつりと呟く。

 

「これが……きっとこれが宝物なんだわ」

 

「この景色が……」

 

僕ももう一度、目の前に広がる景色を見渡す。

 

「うん、確かに。そうかもしれないね」

 

隣にいるいずみさんも、同じ景色を見ている。

 

探していた宝物は、どこかに隠されていたものじゃなかった。

 

ここまで二人で歩いてきたからこそ、見ることのできた景色だった。

 

「でも、宝物は景色だけじゃないよ」

 

「え?」

 

「今までの冒険も、全部宝物になったよ」

 

洞窟を探したこと。

石板を見つけたこと。

そして、こうして二人でここまで登ってきたこと。

 

どれも、きっと忘れない。

 

「うん。僕たちの最高の宝物になったね」

 

いずみさんが笑う。

 

僕はもう一度、腕時計に目を落とした。

 

「この景色、みんなにも見せたいけど……戻ったら、もう時間的に難しそうだよね」

 

「そうね……」

 

いずみさんも少し残念そうに景色へ目を向ける。

 

僕はそんな彼女を見て、ふと思った。

 

「それじゃあさ」

 

「うん?」

 

「二人だけの秘密にしよう?」

 

いずみさんが僕を見る。

 

ほんの少し驚いたような顔をしたあと、ふっと笑った。

 

「二人だけの……」

 

そして、もう一度景色へ目を向ける。

 

「うん、そうしようか」

 

その言葉を聞いて、僕も笑った。

 

この景色を知っているのは、僕たち二人だけ。

 

そう思うと、さっきまでより少しだけ特別に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

 

 

「あ、2人ともどこ行ってたの?」

 

宿に戻ると、由紀恵がこちらに気づいて手を振っている。

 

どうやら、宿に戻ってきたのは僕たちが最後だったらしい。

 

「遅くなっちゃってごめん。心配した?」

 

「もう、みんな待ちくたびれてるよ」

 

「ごめんごめん。早く入ろう」

 

由紀恵に促され、僕たちは宿の中へ入っていく。

 

すると、奥から声がした。

 

「遅かったな、いずみ。颯も一緒だったのか?」

聖美さんが僕たちを手招きする

 

「うん。ごめんね」

 

「どこまで行ってたんですか?」

めぐみさんが首を傾げる

 

「ちょっと山の上まで」

 

「山の上? そんなところまで行ってたのかよ」

聖美さんが驚く

 

「うん。ちょっと遠くまで行ってみたの」

 

いずみさんがそう答える。

 

僕はその隣で、思わず笑ってしまった。

 

山の上で見た景色のことは、僕たちだけの秘密だ。

 

「まあ、無事に帰ってきたならいいけどな」

 

「お腹空いたー!」

 

まみさんが待ちきれないといった様子で声を上げる。

 

「まみちゃん、さっきからずっとそればっかりじゃない?」

 

「だって、もうお腹ペコペコなんだもん!」

 

「ふふっ。じゃあ、そろそろ夕飯にしましょうか」

 

みんなで食堂へ向かう。

 

席に着くと、今日一日のことを思い出す。

 

洞窟へ行ったこと。

石板を見つけたこと。

そして、いずみさんと二人で山を登ったこと。

 

今日もいろんなことがあった。

 

「……明日で終わりなんだよね」

 

由利佳さんがぽつりと言った。

 

その言葉に、みんなの動きが一瞬止まる。

 

 

「そうだね。明日帰るんだもんね」

美夏さんが呟く。

 

「なんか、あっという間でしたね」

美佐子さんは少し寂しそうに笑った。

 

「私はもっと海で遊びたかったなあ」

亮子さんが笑う

 

「私は買い物もしたかったですわ」

舞奈さんも続く

 

「まみちゃんはもっといっぱい食べたかったー!」

 

「まみは十分食べてたでしょ」

美夏さんが突っ込む

 

「えーっ、まだ足りないよー」

 

みんなが笑う。

 

 

「まだ帰りたくないよー」

 

まみさんが少し寂しそうに言う。

 

僕も周りを見渡す。

 

こうしてみんなで夕飯を食べるのも、これが最後なんだ。

 

そう思うと、少しだけ胸が寂しくなった。

 

「でも、最後だからこそ楽しもうよ」

美夏さんは声を高くして皆んなに向かって言った

 

「そうだな!」

聖美さんが笑う

 

「うん!」

 

いずみさんも笑って頷く。

 

「じゃあ、最後の夜を楽しみまひょか」

さおりさんが笑う

 

「そうね」

 

「それじゃあ……」

 

麗子が飲み物を持ち上げる。

 

みんなもそれに続いて、グラスやコップを手に取った。

 

「今日が最後ですし、まずは乾杯からですわね」

 

「「「「カンパーイ!」」」」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。