卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

58 / 60
新井聖美さまーばけーしょん
2日


遺跡の入口に差しかかったところで、聞き覚えのある声に呼び止められた。

 

「悠だっけ」

 

振り返ると、そこには聖美さんが立っていた。

 

「あ、聖美さん。こんにちは」

 

「遺跡にくるってことは……お前もレキオの財宝、探してるのか?」

 

聖美さんは、遺跡の奥へと続く道に目を向けながら尋ねた。

 

この島に伝わるレキオの財宝。

 

本当にそんなものがあるのかはわからないけれど、せっかく島に来たのだから、自分の目で確かめてみたいと思っていた。

 

「まあね。聖美さんもそう?」

 

「ああ、そうだよ。こういうの、案外嫌いじゃないからさ」

 

そう言って、聖美さんは少し楽しそうに笑った。

 

意外、というほどでもないけれど、聖美さんが遺跡や財宝探しに興味を持っているのは、なんだかしっくりくる気がした。

 

ただ観光するだけじゃなくて、自分の足でいろいろな場所を巡ってみる。

 

そういうことが好きなのかもしれない。

 

「うん、俺もそうだよ」

 

「まあ、転ばねえように気をつけろよ。足元、岩だらけだからな」

 

聖美さんはそう言って、足元に視線を落とした。

 

遺跡へ続く道には大小さまざまな岩が転がっている。確かに、夢中になって歩いていたら足を取られてしまいそうだ。

 

「心配してくれるの? ありがとう」

 

少しからかうように言ってみる。

 

すると、聖美さんは一瞬だけこちらを見て、すぐに視線をそらした。

 

「別にそんなんじゃねえけど……」

 

思ったとおりの反応に、つい笑いそうになってしまう。

 

聖美さんは、こういうとき素直に認めるタイプではないらしい。

 

「俺は他のところも行ってみようと思ってるんだ。じゃあ、またな」

 

「あ、うん。またね」

 

聖美さんは軽く手を上げると、遺跡の入口から離れていった。

 

僕も手を振って、その背中を見送る。

 

せっかく会えたのだから、もう少し話していたかったような気もするけれど、島にはまだ見ていない場所がたくさんある。

 

僕も気を取り直して、遺跡へと足を向けた。

 

……そのはずだった。

 

*

 

遺跡をあとにして、島を歩き回っているうちに、いつの間にか港までやってきていた。

 

潮の香りが風に乗って流れてくる。

 

海面は陽の光を受けてきらきらと輝き、停泊している船がゆっくりと揺れていた。

 

しばらくその景色を眺めていると、不意に声が聞こえた。

 

「おっ、また会ったな」

 

振り返ると、そこには聖美さんがいた。

 

さっき別れたばかりなのに、また会うなんて。

 

思いがけない再会に、自然と顔がほころんだ。

 

「ここにいたんだ。気が合うね」

 

「そうだな」

 

聖美さんも、どこかおかしそうに笑った。

 

偶然とはいえ、こうして何度も顔を合わせると、なんだか不思議な縁を感じてしまう。

 

「ここって俺さ、一番好きなんだ」

 

聖美さんは海のほうを眺めながら言った。

 

「港?」

 

思わず聞き返す。

 

聖美さんが好きだと言う場所が、少し意外だったからだ。

 

「そう、なんか落ち着くんだよ」

 

聖美さんは海から視線を外し、肩をすくめた。

 

「俺は港も好きだけど。どこが一番か、まだわからないな。鈴鳴島はいいところだよね」

 

島に来てから、まだそれほど時間は経っていない。

 

訪れた場所も、出会った人も、これからもっと増えていくはずだ。

 

今の段階で一番を決めるのは、少し早いのかもしれない。

 

「うん。まあ、他のところももちろん好きだけどさ」

 

聖美さんは、港の向こうに広がる海を見つめたまま答えた。

 

「まだ見てないところってあるしね」

 

「そうだな」

 

心地よい風が、僕たちの間を吹き抜けていく。

 

特別なことを話しているわけではない。

 

ただ、島の景色について話しているだけ。

 

それなのに、こうして聖美さんと並んでいる時間は、不思議と居心地がよかった。

 

この島には、まだ知らない場所がたくさんある。

 

これからどんな景色に出会えるのか。

 

どんな発見が待っているのか。

 

そう考えると、自然と胸が弾んだ。

 

そんな僕の気持ちが伝わったのか、聖美さんがこちらを向いた。

 

「これから一緒にいろんなところ見て回ろうぜ」

 

突然の誘いに、少しだけ驚いた。

 

けれど、断る理由なんてなかった。

 

「うん」

 

俺が頷くと、聖美さんは満足そうに笑った。

 

まだ始まったばかりの、鈴鳴島での日々。

 

これから聖美さんと一緒に、どんな場所を巡ることになるのだろう。

 

そんなことを考えながら、僕はもう一度、目の前に広がる海を眺めた。

好きな娘は誰ですか?

  • 新井聖美
  • 志村まみ
  • 高城麗子
  • 中本静香
  • 加藤美夏
  • 犬塚さおり
  • 石橋美佐子
  • シンディ桜井
  • 安田舞奈
  • 谷由利佳
  • 横山めぐみ
  • 西川真樹
  • 三波亮子
  • 伊東由紀恵
  • 戸塚いずみ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。