卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

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4日

 

「おはよう、悠」

 

 朝、顔を合わせるなり、聖美さんが声をかけてきた。

 

「おはよう。……聖美さん、何してるの?」

 

 いつもと少し様子が違う気がして、思わず尋ねる。

 

「見りゃわかるだろ。俺は用心棒だ」

 

「用心棒?」

 

「ああ。お嬢様方の身の安全は、この俺が守る」

 

 聖美さんは、さも当然といった顔で胸を張った。

 

 どうやら今日は、舞奈さんと麗子さんの用心棒を務めるらしい。

 

「へえ。じゃあ、僕も守ってくれる?」

 

「お前は自分で何とかしろ」

 

「ひどいなあ」

 

「へっ、自分の身くらい自分で守れるようになりな」

 

 聖美さんは得意げに笑うと、くるりと背を向けた。

 

 用心棒というより、なんだか西部劇の主人公みたいだ。

 

 そんなことを思いながら、僕は聖美さんの後ろ姿を見送った。

 

*

 

 

「お嬢様って、今日は誰と一緒なの?」

 

「俺は今日一日、舞奈と麗子の用心棒なんだよ」

 

 

「へえ、頑張ってるね」

 

「おう!」

 

 僕が素直に感心すると、聖美さんは満足そうに笑った。

 

「宿に西部劇の雑誌が置いてあってよ、渋くて格好いいんだ」

 

「なるほどね」

 

 どうやら、西部劇にすっかり影響されているらしい。

 

 確かに、用心棒なんて言葉は西部劇によく似合う。

 

 聖美さんが楽しそうに話していると、横から麗子さんが口を挟んだ。

 

「聖美の西部劇なんて三日三晩ですわ」

 

「なんだとぉ?」

 

 途端に聖美さんの顔つきが変わった。

 

 どうやら、麗子さんにからかわれたのが気に入らなかったらしい。

 

 けれど、麗子さんはまるで気にする様子もなく、涼しい顔をしている。

 

 聖美さんはしばらく麗子さんを睨んでいたが、不意に何かを思いついたように声を上げた。

 

「あっ、あれ! なんだ?」

 

 海の方を指さす聖美さん。

 

「えっ?」

 

 その声につられて、麗子さんが振り向いた。

 

 次の瞬間だった。

 

 聖美さんが麗子さんの背後に回り、その体を珊瑚礁の広がる海へと突き落とした。

 

 バシャーン!

 

「聖美さん?!」

 

 突然のことに、僕は思わず声を上げた。

 

 まさか、本当にやるなんて!

 

「あっはっは、じゃあな」

 

 聖美さんは腹を抱えて笑いながら、その場から逃げるように立ち去っていった。

 

 残された俺は、海に落ちた麗子さんと、遠ざかっていく聖美さんの背中を交互に見つめる。

 

 ……用心棒って、こういう仕事だったっけ?

 

「ハァ……ハァ……」

 

「大丈夫? 麗子さん」

 

 ようやく我に返り、僕は麗子さんに声をかけた。

 

「当たり前ですわ。舞奈、行くわよ」

 

 麗子さんは息を整えながら、きっぱりと言い放った。

 

 その表情には、まだまだ余裕がある。

 

 舞奈さんを連れて歩き出す麗子さんの背中を見送りながら、僕は小さく息を吐いた。

 

 ……聖美さん、あとでどうなるんだろう。

 

 

 

 

 3人が去っていった方向を、しばらく見つめていた。

 

 麗子さんは舞奈さんを連れて歩いていき、聖美さんは海沿いの方へ逃げていった。

 

 ……このまま放っておいていいんだろうか。

 

 少し迷ったものの、僕は3人が向かった方へ足を向けた。

 

 先に見つけたのは、舞奈さんだった。

 

「舞奈さん、大丈夫だった?」

 

 声をかけると、舞奈さんは困ったように眉を下げた。

 

「聖美さんと麗子さんがケンカをしてしまって……」

 

「だよね。聖美さんはどっち?」

 

「海沿いの方を歩いていきましたの」

 

「そっか。ちょっと様子を見てくるね」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 舞奈さんに見送られ、僕は海沿いの道へと向かった。

 

 少し歩いたところで、聖美さんの姿が見えた。

 

 海を眺めながら、のんびり歩いている。

 

 さっきまであんなに笑っていたのに、今は何事もなかったような顔をしていた。

 

「聖美さん!」

 

 呼びかけると、聖美さんが振り返った。

 

「おう、悠。どうした?」

 

「麗子さんとケンカしてるの?」

 

 僕が尋ねると、聖美さんは困ったように頭をかいた。

 

「いつもああなっちまうんだよ、自然と」

 

「いつも海に突き落としたり?」

 

「いや、さすがにそこまではしねえけどさ」

 

 聖美さんは、悪びれる様子もなく笑った。

 

「じゃあ、今日は特別?」

 

「まあ、あいつが余計なこと言うからよ」

 

「聖美さんが用心棒の話をしてたから?」

 

「そうそう。人が気持ちよく話してんのに、茶化しやがって」

 

 そう言って、聖美さんはまた笑った。

 

 どうやら、二人のケンカは今に始まったことじゃないらしい。

 

 それにしても、麗子さんを海に突き落とすなんて……。

 

 僕はさっきの光景を思い出し、思わず苦笑した。

 

「でも、麗子さん怒ってるんじゃない?」

 

「そりゃ怒ってんだろうなあ」

 

「いいの?」

 

「……まあ、あとで何とかするさ」

 

 聖美さんはそう言って、再び海へと視線を戻した。

 

 その横顔を見ながら、僕は思った。

 

 聖美さんと麗子さんは、ケンカをしていても、どこか気兼ねがない。

 

 僕にはまだわからない、二人の長い付き合いがあるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

好きな娘は誰ですか?

  • 新井聖美
  • 志村まみ
  • 高城麗子
  • 中本静香
  • 加藤美夏
  • 犬塚さおり
  • 石橋美佐子
  • シンディ桜井
  • 安田舞奈
  • 谷由利佳
  • 横山めぐみ
  • 西川真樹
  • 三波亮子
  • 伊東由紀恵
  • 戸塚いずみ
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