卒業バケーション   作:飽きやすい創作隊

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4日夜イベント

「なあ、ちょっといいか?」

 

 部屋で過ごしていると、聖美さんが慌てた様子でやってきた。

 

「どうしたの、そんなに慌てて?」

 

「今、部屋から出られるか?」

 

「うん、いいよ」

 

 何かあったのだろうか。いつもと違う聖美さんの様子に、僕は少し不思議に思いながら頷いた。

 

「なんか食堂の方から音がするんだよ。気味悪くてさ」

 

「そうなの?」

 

「ああ。さっきから気になってんだけど、一人で見に行くのもなんか嫌でさ」

 

 そう言って、聖美さんはちらりと廊下の方に目を向けた。

 

 食堂から音がするなんて、確かに気になる。誰かがいるのだろうか。それとも、何かが落ちた音だったのか。

 

「じゃあ、一緒に見に行こうか」

 

「悪いな」

 

「ううん、僕も気になるし」

 

 僕は立ち上がると、聖美さんと一緒に食堂へ向かった。

 

 夜の廊下は静まり返っていた。

 

 昼間なら皆の声で賑やかな場所も、今は物音ひとつしない。普段なら何とも思わない廊下なのに、こうして音の正体を探しに来ると、妙に落ち着かない。

 

 聖美さんも、さっきより口数が少なくなっている気がした。

 

 食堂に着くと、僕たちはそっと中を覗き込んだ。

 

「なんか見つかったか?」

 

「いや、何も?」

 

 中を見回してみたけれど、特に変わった様子はない。椅子もテーブルもいつも通りで、誰かが隠れているようにも見えなかった。

 

「そっか」

 

 聖美さんも不思議そうに辺りを見回している。

 

 気のせいだったのかな。

 

 そう思った、そのときだった。

 

「痛っ?!」

 

「どっ、どうしたんだ?!」

 

 突然声を上げた僕に、聖美さんが驚いて振り返った。

 

「ごめん、足をぶつけただけだから大丈夫だよ」

 

「な、なんだ。脅かすなよな……」

 

 聖美さんは胸をなで下ろした。

 

「ごめんね。暗くて、よく見えなかったんだ」

 

「ったく、びっくりしたじゃねえか」

 

 そう言いながらも、聖美さんの表情には安堵が浮かんでいた。

 

 僕はぶつけた足をさすりながら、ふと目の前にあるものに気づいた。

 

「あれ?」

 

「今度はなんだよ」

 

「冷蔵庫が開いてる」

 

「え?」

 

 聖美さんが冷蔵庫に目を向けた。

 

 確かに、扉が少し開いたままになっている。隙間から冷たい空気が流れてきていた。

 

 誰かが閉め忘れたんだろうか。それとも、さっきの音は冷蔵庫から聞こえてきたものだったのだろうか。

 

「誰かが、漁りに来たのかな?」

 

 僕がそう言うと、聖美さんは何か思い当たったように顔を上げた。

 

「ははは、幽霊なんているわけないもんな」

 

「そうだよ。それより、人間がやったというほうが疑わしいよ」

 

「ということは……まみが一番怪しいな」

 

「あはは、そうかもしれないね」

 

 確かに、まみさんならありそうな気もする。お腹が空いて、こっそり何かを取りに来たのかもしれない。

 

 もちろん、本当にまみさんが来たのかどうかは分からないけれど。

 

「あいつ……問い詰めてやる! ありがとうな、悠!」

 

「うん。明日でいいから、あとで教えてね」

 

「分かった。おやすみ」

 

 聖美さんはすっかり納得した様子で頷くと、満足そうに食堂を後にした。

 

 僕もその背中を見送り、冷蔵庫の扉をきちんと閉める。

 

 結局、音の正体は分からないままだった。

 

 ……まみさんは何て答えるんだろう。

 

 明日、聖美さんから話を聞くのが、少し楽しみになった。

好きな娘は誰ですか?

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