卒業バケーション   作:ルゥー創作するのは間違っているだろうか?

66 / 70
7日目 洞窟イベント

「昨日の話の……洞窟、行ってみない?」

 

 聖美さんがそう切り出すと、僕は迷うことなく頷いた。

 

「うん」

 

 昨日、話題に上がった洞窟。亮子さんが見つけたという場所が、どうしても気になっていた。

 

 僕たちは宿を出て、洞窟へと向かった。

 

 やがて、入り口の近くに立ち入り禁止の警告が見えてきた。亮子さんが見つけたという看板だろう。

 

 僕たちはそれを横目に、そのまま先へ進んだ。

 

 洞窟の中は薄暗く、外から差し込む光も奥までは届いていない。足元に気をつけながら進んでいると、ふと、壁際に何かがあるのに気づいた。

 

「そこ、見て」

 

 聖美さんが指さした先にあったものを見て、僕は思わず足を止めた。

 

「ん? これって、骸骨……」

 

 人のものだろうか。薄暗い洞窟の中に、それはひっそりと横たわっていた。

 

「近寄るなよ」

 

 聖美さんが僕を制する。

 

 言われなくても、わざわざ近づいて確かめたいとは思わなかった。

 

「着ているものとか、かなり古いみたい。レキオの財宝を探していた西洋人のものかな?」

 

 骸骨のそばに残された衣服を見ながら、聖美さんが推測する。

 

 確かに、そう考えると辻褄が合う気もする。けれど、こんな場所で命を落としたのだとしたら……。

 

 あまり考えたくないな。

 

「よし! 奥、行ってみようぜ」

 

 聖美さんはそう言って、さらに奥へ進もうとした。

 

「震えてない?」

 

「震えてない!」

 

 即座に返事が返ってきた。

 

 声が少し大きかった気もするけれど、本人がそう言うのなら、そういうことにしておこう。

 

 僕たちは再び、洞窟の奥へと足を進めた。

 

 しばらく進むと、少し開けた場所に出た。そこには、周囲とは違う造りのものが残されていた。

 

「見て、祭壇がある」

 

「祭壇……?」

 

 聖美さんの声につられて、僕もそちらに目を向けた。

 

 確かに、何かを祀るために造られたように見える。

 

「この窪みのところ、石板みたいなものが嵌められてたんじゃないかな?」

 

 祭壇らしきものに近づき、窪みを眺めながら僕は言った。

 

 何のための場所なのかはわからない。でも、そこに何かがあったのは間違いなさそうだ。

 

「頭いいな、見かけによらず」

 

「でしょ」

 

 聖美さんに褒められたのか、からかわれたのか。よくわからないけれど、僕は素直に頷いておいた。

 

 それから僕たちは、周囲をひと通り調べてみた。

 

 けれど、肝心の財宝らしきものは見当たらなかった。

 

「でも、宝はなしか……怖い思いしてここまで来たのに」

 

 聖美さんが残念そうに呟く。

 

「怖かったの?」

 

「あ……あぁ。まあな」

 

 今度は素直に認めた。

 

 さっきまで強がっていたのを思い出すと、少しおかしくなる。

 

 けれど、僕だって骸骨を見たときは驚いた。怖いのはお互いさまだ。

 

「帰って報告しよう」

 

「そうだね」

 

 僕たちは来た道を戻り、洞窟をあとにした。

 

 結局、財宝は見つからなかったけれど、祭壇らしきものを発見できたのは収穫だった。あとは、みんなに報告するだけだ。

 

 * * *

 

 夕食を終え、部屋でひと息ついていたときだった。

 

 コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。

 

 聖美さんかな?

 

 昼間の洞窟のことでも話しに来たのだろうか。

 

 僕は扉を開いた。

 

「失礼します」

 

「ん? 美佐子さん」

 

 そこに立っていたのは、予想していた聖美さんではなく、美佐子さんだった。

 

 わざわざ僕の部屋まで、何の用だろう。

 

「どうしたの?」

 

「どうして鈴鳴島に来たんですか?」

 

「え?」

 

 思いがけない質問に、僕は少し戸惑った。

 

 どうして、と言われても……。

 

「私たちは高城先輩に強引に連れてこられたものですから」

 

「ああ、そうなの?」

 

 美佐子さんたちは、そういう事情で島に来たのか。

 

 僕は初めて知った話に、なるほどと思った。

 

「レキオの財宝はこの島に来てから知ったんですよね? 他に何があるのかなと思いまして」

 

 美佐子さんは、少し考えるようにして僕を見ていた。

 

 この島に来た理由。改めて聞かれると、何と答えればいいのだろう。

 

「時間……かな」

 

「時間?」

 

「時間に縛られなくて済むし、何かに夢中になったりさ」

 

 普段は学校やら何やらで、やらなければならないことがいろいろある。

 

 でも、この島にいる間は、そういうことを少し忘れていられる。

 

 財宝を探したり、みんなと話したり。普段ならしないようなことに夢中になれるのも、ここにいるからなのかもしれない。

 

 僕にとっては、それだけでも来た意味があると思えた。

 

「なるほど」

 

 美佐子さんは、静かに頷いた。

 

「ありがとうございます。どうしてこの島に来てしまったのかと、ずっと考えてしまっていて……考えを改められそうです」

 

「そっか、良かったよ」

 

 僕の答えが、少しでも役に立ったのならよかった。

 

 美佐子さんは、ほっとしたように表情を和らげた。

 

「あ、こんな時間まですみません。それでは、おやすみなさい」

 

「うん、おやすみ」

 

 美佐子さんを見送って、僕は扉を閉めた。

 

 また静かになった部屋で、僕はひとり、椅子に腰を下ろした。

好きな娘は誰ですか?

  • 新井聖美
  • 志村まみ
  • 高城麗子
  • 中本静香
  • 加藤美夏
  • 犬塚さおり
  • 石橋美佐子
  • シンディ桜井
  • 安田舞奈
  • 谷由利佳
  • 横山めぐみ
  • 西川真樹
  • 三波亮子
  • 伊東由紀恵
  • 戸塚いずみ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。