卒業バケーション 作:ルゥー創作するのは間違っているだろうか?
河口に着くなり、聞き覚えのある声が僕を呼び止めた。
「あっ、悠ちゃんだあ〜」
振り返ると、まみさんがこちらに向かって手を振っている。そのそばには聖美さんと由紀恵さんの姿もあった。
「まみさん、どうしたの?」
「実はねえ、お魚を釣りたいんだあ」
「そうなの? 釣竿はどこ?」
「ほらよ」
聖美さんが差し出した釣竿を受け取ろうとして、僕はようやく彼女の存在に気づいた。
「あっ、聖美さんもいたんだ」
「由紀恵もいるよー!」
「由紀恵さんもいたんだね。じゃあ、釣りは二人に任せようかな……」
僕がそう言うと、聖美さんは呆れたように肩をすくめた。
「それが、エサをつけるの、みんなダメでさ……」
ちらりと横目で二人を見ながら、聖美さんがぼやく。
「あぁ、ミミズ?」
「そう、それ……。みんな苦手だから、よろしくお願いします」
由紀恵さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
「オッケー」
僕は笑ってうなずいた。
なるほど。魚を釣るところまではいいけれど、そこにたどり着くまでに問題があったらしい。
僕は釣竿を持ち直すと、さっそくエサの準備に取りかかった。
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釣りを終えたあと、僕たちは海岸の方へ移動した。
どうやら今度は、まみさんが泳ぎたいと言い出したらしい。
「まみちゃんはあそこまで泳ぎたいの」
まみさんが指さした先には、少し離れたところに小さな島が見えていた。
「いや、でもお前ら二人を連れて泳ぐのはできそうにないな」
聖美さんは腕を組み、困ったように島を眺めている。
「何揉めてるの?」
「あぁ、まみのやつが離れ小島まで泳ぎたいって聞かねえんだよ」
「結構距離あるもんね」
陸から眺めるだけでも、気軽に泳いで行けるような距離には思えなかった。
「行けるよねえ、由紀恵ちゃん!」
「うーん、私は自信ないかも……」
由紀恵さんも苦笑いを浮かべている。
「ほら、聖美さんの言うとおり諦めよう? そろそろ夕食の時間になっちゃうよ?」
「そうだね! 分かった」
あっさり納得したまみさんは、くるりと向きを変えると、宿の方へ向かって走り出した。
僕も慌ててその後を追いかける。
「相変わらず、食い物になると早いな」
背後から聖美さんの呆れた声が聞こえた。
「悠、サンキュ。まみの扱い、上手くなったじゃねえか」
追いついてきた聖美さんが、感心したように笑う。
「ふふふ、いつもみんなの様子を見てるからね」
そう答えると、聖美さんは「へえ」と短く返した。
みんなと一緒に過ごしていると、それぞれの性格も少しずつ分かってくる。
まみさんは食べ物に目がないし、聖美さんは面倒見がいい。由紀恵さんは、そんな二人に振り回されながらも、結局付き合ってくれる。
そんなことを考えながら、僕はみんなと一緒に宿へ戻った。
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夕食を終え、部屋でのんびりしていたときだった。
「なぁ、これからちょっと泳がねえか?」
突然、聖美さんが声をかけてきた。
「え? これから?」
もうすっかり日も暮れている。昼間ならともかく、今から海に入るとは思っていなかった。
「嫌か?」
「もちろん、行くよ」
せっかく聖美さんが誘ってくれたのだ。断る理由なんてない。
僕たちは連れ立って海岸へ向かった。
昼間はあんなに賑やかだった海も、夜になるとずいぶん違って見える。
月明かりを受けた水面が静かに揺れ、波の音だけが耳に届いていた。
「夜の海って神秘的だね」
「そうだな」
聖美さんは短く答えた。
いつもなら、もう少し何か言いそうなものなのに。
僕は隣にいる彼女の横顔をちらりと見た。
「なんか元気ない?」
「そんなことねえよ」
すぐに返事が返ってきた。
けれど、どことなくいつもと違う気がする。
気のせいかな?
「じゃ、泳ごっか」
「うん」
僕たちは波打ち際から海へと入っていった。
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「夜の海って、思ったよりあったかいんだね」
肩まで海につかりながら、僕は思わず声を上げた。
「本当、思ったより全然冷たくないね」
聖美さんも同じように感じたらしく、少し意外そうな顔をしている。
しばらく二人で泳いだり、波に揺られたりして過ごした。
昼間とは違って周りに人の声もなく、なんだか不思議な気分だった。
ふと聖美さんを見ると、さっきより表情が和らいでいるように見えた。
「良かった、元気出たみたいだね」
「え?」
聖美さんがきょとんとした顔で僕を見る。
「ほら、元気なかったじゃん?」
「そんなことねえよ、ただ……」
そこで聖美さんは言葉を切った。
「ただ?」
続きを待っていると、聖美さんは何か言いたげに僕を見つめた。
けれど、すぐに視線をそらしてしまう。
「あー……この鈍感! もういいよ、帰ろ」
「え? あ、ちょっと?!」
急にそんなことを言い出すと、聖美さんは僕を置いて岸の方へ泳いでいってしまった。
僕は慌ててその後を追いかけた。
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部屋に戻る道すがら、僕はさっきのやり取りを思い返していた。
急に機嫌が悪くなったかと思えば、帰ろうと言い出すし。
何か気に障ることでも言っただろうか。
昼間はいつもどおりだったと思うんだけど……。
「なんか、今夜の聖美さん……様子がおかしかったな?」
結局、理由は分からないままだった。
好きな娘は誰ですか?
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