卒業バケーション   作:ルゥー創作するのは間違っているだろうか?

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12日

 

川に着いて、最初に目に入ったのは柵だった。

いつもなら気にも留めないはずなのに、今日はなぜか違った。

川の流れを眺めながら歩いていると、視界の端に何かが引っかかったのだ。

柵の一部に、何かが掘られている。

近づいて目を凝らしてみる。長い間、風雨にさらされていたせいか、少し見えにくくなっているが、確かに何かの文字のようだった。

「……なんだ、これ?」

指でなぞってみようとした、そのときだった。

「おう、悠! こんなとこで何してんだ?」

突然、後ろから背中を叩かれた。

「わっ、聖美さん! 驚かさないでよ」

思わず飛び上がって振り返る。そこには、いつもの調子で笑っている聖美さんがいた。

「ん? 何みてたんだよ」

聖美さんは僕の横に並ぶと、柵に視線を向けた。

「なんか掘ってあるんだよね。なんだろう」

「"S"に見えねえか?」

「あれ、本当だ」

言われてみれば、確かにそんな形に見える。

それにしても……。

「え? 聖美さん、ローマ字読めたの?」

「お前、オレのこと相当馬鹿にしてるだろ」

「ぐふっ」

腹に一発、軽くどつかれた。

「ちょっと! 痛いって!」

「うるせえ! 余計なこと言うからだろ!」

そんな僕たちのやり取りを、いつの間にか集まっていたみんなが眺めていた。

「もう、すっかり聖美と仲良しね」

「本当、熱いですね」

「まみちゃん、ちょっと羨ましいなあ」

口々に好き勝手なことを言い始める。

「なんだよ、お前ら! オレが馬鹿にされてるのを見て、なんでそうなるんだ?」

聖美さんが声を上げると、みんなは顔を見合わせて笑った。

そして、聖美さんが追いかけると、みんな散り散りに逃げていく。

川辺に響く笑い声。逃げるみんなと、それを追いかける聖美さん。

僕はその光景を眺めながら、小さく呟いた。

「僕も皆んなが羨ましいよ」

この島を出ても、みんなの日常は卒業まで続いていく。

きっと、これからも一緒に笑って、時には喧嘩をして。今日みたいな何気ない出来事だって、いつかは思い出話になるのだろう。

そんな当たり前の日々が、僕にはひどく眩しかった。

それがすごく……羨ましかった。

しばらくして、みんなが戻ってきた。

さっきまで追いかけっこをしていたのが嘘みたいに、今度は何事もなかったかのように話し始める。

その後は、まみちゃん主導で町にやってきた。

「もちろん食べ物目当てだろうけど……」

僕はみんなの様子を見ながら、そんなことを考えた。

けれど、きっと僕も同じだった。

せっかく町に来たのだから、何か美味しいものでも食べたい。そう思うのはみんな一緒らしい。

誰かが何かを見つければ、自然とみんなの視線がそちらに集まる。

そんな様子を見ていると、不思議と気持ちが落ち着いた。

こんなにも心の通じた仲間が、僕に今までいただろうか。

一緒にいるだけで楽しくて、何気ない会話を交わすだけでも嬉しい。

いつかこの時間が終わってしまうとしても、今この瞬間を大切にしたい。

僕はみんなの後を追いながら、そんなことを思っていた。

 

 

「シンディ、こんなの見つけたネ!」

まみちゃんたちと町を歩いていると、シンディの声が響いた。

声のした方へ目を向けると、シンディが何かを手に取って、興味深そうに眺めていた。

それは、少し変わった形をした壺だった。

「恋愛の壺……??」

シンディが壺に書かれた文字を読み上げる。

恋愛の壺という名前からして、どうやら恋愛に関係する品物らしい。

「シンディ、やめといた方がいいわよ。そんな壺買うの」

亮子さんが呆れたように言った。

確かに、名前からして少し怪しい。

壺を買っただけで恋愛がうまくいくのなら、世の中の人たちは誰も苦労しないだろう。

もっとも、こういうものは信じる気持ちが大切なのかもしれない。

「なんで? 新井先輩みたくミーも彼氏欲しいネ」

シンディは不思議そうに首を傾げた。

どうやら、本気でこの壺に期待しているらしい。

 

 

「ばかやろー! オレに彼氏なんていねぇよ」

聖美さんがすかさず反論した。

その声には、否定せずにはいられないという勢いがあった。

「えっ、そうなの?」

シンディは壺を持ったまま、きょとんとしている。

「そうだよ! なんでオレに彼氏がいることになってんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって、悠君」

亮子さんが、突然こちらに話を振ってきた。

 

 

恋愛に必要な物...僕は気合いだと思うんだよなあ

 

 

 

そんなことを思っていた僕は話を全く聞いていなかった

 

 

 

 

 

 

しかも、僕の腕を掴んで話に引き入れようとする。

「え、何?」

いきなり名前を呼ばれたので、思わず聞き返してしまった。

「聖美の彼氏の話」

「えっ?! 聖美さんに彼氏がいたの?!」

思わず大きな声が出た。

いや、だって、そんな話は初耳だ。

聖美さんはいつも男勝りで、思ったことを遠慮なく口にする。そんな彼女に彼氏がいるなんて、僕は考えたこともなかった。

もちろん、僕が知らないだけで、そういう相手がいても不思議ではない。

でも、まさか本当に……?

「おい、悠! お前まで何を信じてんだよ!」

聖美さんがこちらを振り向いた。

「えっ、だって亮子さんが……」

「亮子! お前、余計なこと言うんじゃねえ!」

聖美さんが詰め寄ると、亮子さんは悪びれる様子もなく笑っていた。

周りのみんなも、僕の慌てっぷりがおかしかったのか、次々に笑い出す。

「ちょっと、みんな! そんなに笑わなくてもいいじゃないか!」

僕が抗議しても、笑い声はなかなか収まらない。

どうやら、すっかりからかわれてしまったらしい。

それにしても、恋愛の壺ひとつでここまで盛り上がるなんて。

僕たちは顔を見合わせ、また笑った。

こうしてみんなで騒いでいる時間が、僕は好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

好きな娘は誰ですか?

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