自害しようとしてる美少女を引き止めたら、壊滅寸前の魔王だった件。そんで、色々あった結果一緒に農業やることになった。   作:ジュウヨン

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14話 仲間と、流れ星と

 

 

 

 

未だ目覚めないルーナをおぶりながら……

しばらくの間、山道をセシリアと下っていた。

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

事の疲れからか、俺もセシリアもすっかり黙りこくっていた。

 

だが……別段、気まずさはこれといってない。

行きのルーナとの張りつめた空気感とは大違いだった。

 

……いやぁ、やっぱ昔からの付き合いがある奴って良いわー。めっちゃ素敵やわー。

無言でも苦にならないもんね。正直、俺ってそんな喋るの得意じゃないし。

初めて師匠の前で喋った時に「お前、喋るんだな!!」って心底驚かれたもんね。喋るわボケ!!懐かしー。

 

肩の力を抜き、ルーナが落ちないようにぼけーっと歩いていると……セシリアが「ふぅ。」と小さく息を吐いて足を止めた。

 

「レオン様……魔王様のご体調も心配ですし、そろそろこの辺りで休憩にしましょうか」

 

「結界を張るので、安心して休めますよ?」

 

セシリアがニコリと提案してくる。

 

 

 

……ったく。コイツわかってねえな。

俺たちに、休んでる暇なんて——

 

 

 

「やったああああああ!!!!休む休む休むううううううう!!!!」

 

「僕ちん、もう足パンパンだにょおおおおおお!!!!回復魔法で癒してええええええ!!!!僕ちんの足をスリムフィットにしてえええええええええ!!!!」

 

 

 

涙を流しながら、セシリアに抱きつく勢いで縋り付く。

もう、俺は身も心も限界突破だったのだ。

 

……昔セシリア達と旅をしていた時は、よく疲労回復の魔法を使ってもらっていた。

あれ、最高なのよね〜。むくみなんて一撃で取れるし!

 

なんて、至福の思い出に浸っていると——

彼女が顔を真っ赤にしてカチンコチンに硬直していた。

 

あ……やべえ、忘れてた。

コイツ、不意に近づいたら真っ赤になって固まる奴だった。やっちゃった。

 

「あ……ごめん。近かったな」

 

慌てて、バッと距離を取る。

 

すると、セシリアの硬直もようやく解け、恥ずかしそうに顔からプシューと蒸気を吹き上げた。

 

「あ、あははは……。ごめんなさい。男の人に未だに慣れなくて……」

 

「治療で自分から近づく分には問題ないんですけど、急に近づかれるのはどうも……」

 

照れ臭そうに頭を掻くセシリア。

 

この恥ずかしがる仕草……懐かしいな。

まるで、あの頃に戻ったみたいだ。

 

……洞窟での凄まじい有能ぶりを見て、正直少し遠い存在に思えて不安だったけど、中身は変わってなくて安心したわ。

 

俺はルーナをそっと木陰に寝かし……

焚き火を起こして、セシリアとひと休みすることにした。

 

 

……

…………

 

セシリアが、ルーナの体にそっと手をかざし、静かに魔力を通していく。

 

変わった様子はなく、穏やかに寝息を立てる彼女を見て胸を撫で下ろし、そのまま焚き火の前に腰を落とした。

 

「レオン様は……私たちと離れられた後、何をされていたんですか?」

 

セシリアが微笑みながら首を傾げる。

 

パチパチと燃える炎の揺らめきが、暗闇の中で彼女の整った容姿をくっきりと浮き立たせた。

 

……こいつ、今更だけどめちゃくちゃ美人だったな。

なんだか恥ずかしくなり、思わず目を逸らしてしまう。

 

「……別に。特に変わりはなかったよ」

 

「一人で戦争に駆り出されて、魔族の武器やら兵器やらを壊しまくって……。そしたら、突然魔王軍の動きが止まったからすっげぇ暇になってさ。……そこから、暫くは一人でテキトーにぶらついてたよ」

 

揺れる炎をじーっと見つめながら、正直に答えた。

 

……ナンパしまくってたら、出禁にされた街が増えたことまで敢えて言う必要はないだろう。

 

セシリアが、一瞬だけ瞳を大きく見開いた。

 

「……そ、そうですか。軍からの報告で聞き及んではいましたが、本当に一人で戦場に出られていたんですね……」

 

「すみません……。貴方だけを残してしまって」

 

申し訳なさそうに、ポツリと頭を下げるセシリア。

 

その表情には……どこか寂しげな哀愁が漂っていた。

 

「いや、いいんだよ。お前らが無事なら……俺は、それで良い」

 

俺の言葉に、セシリアの瞳にほんのりと涙が浮かんでいく。

 

……マジでコイツ、昔っから涙脆いな!!

気まずくなるから二人きりの時に泣くのはやめえや!!

 

すると、誤魔化すように彼女は袖でゴシゴシと涙を拭った。

 

「あ……っ。ごめんなさい……」

 

「でも……やっぱり、レオン様はとてもお優しいですね」

 

セシリアの言葉に、ふと笑ってしまう。

 

「そんなん言ってくれるの……セシリアぐらいだよ」

 

「みんなには、スケベスケベって心無い悪口ばっか言われるのにさ」

 

俺のぼやきに、セシリアがくすりと苦笑いを漏らした。

 

「……優しいこととスケベなことは、同居できるということです」

 

 

 

……何言ってんだ、コイツ。

 

とりあえず、笑っとこ。

 

 

 

……

…………

 

 

パチパチと薪が爆ぜる音だけが響く中、夜空を見上げていると——

突然、一筋の流れ星が夜の闇を駆け抜けた。

 

 

……あぁ、懐かしいな。

 

 

村にいた頃は、誰が最初に見つけたかでよく喧嘩になったっけ。

カイルがやたらと自分が一番だと主張してくるもんだから、イラッとしてビンタしたら、アイツ仕返しに目潰ししてきたんだよな。

そこから大喧嘩になって、パルシィが泣きながら師匠に言いつけて……そのせいで一ヶ月間トレーニング量を5倍にされたっけ。

 

あの日以来……ずっとパルシィを目の敵にしてたら、それをまたパルシィが師匠にチクって。

その度に俺とカイルの筋トレ量が跳ね上がって、どんどん筋骨隆々になっていって……。

 

今考えたら、本当に馬鹿なことばっかりやってたな。

 

 

 

 

 

 

…………アイツら、元気にしてんのかな。

 

 

 

 

 

 

「……セシリア。」

 

「カイルとパルシィ……アイツら、今どこで何してるか知ってる?」

 

自然と、胸の奥に溜まっていた言葉がこぼれ落ちた。

 

セシリアが優しく微笑む。

 

「……やっぱり、あの二人のことが気になるんですね」

 

セシリアの言葉に、思わず苦笑いを浮かべた。

 

「まあ、小さい頃からずっと一緒だったからね……」

 

「一緒の家で育ってさ……笑って、泣いて、怒って、喧嘩して…………。そんで、一緒に旅に出て。」

 

「……俺たちはずっと一緒にいるんだろうなって……漠然と、そう思ってたよ」

 

それなのに……まさか、それぞれ別の道を歩むことになるなんてな。

その最後の言葉だけは、口に出さなかった。

 

 

 

不意に、夜空にアイツらの顔が浮かんだ。

 

 

 

セシリアがそのまま、遠い目をしてボソリと溢した。

 

「実は……私も王国に戻って以来、カイル様とパルシィ様には一度も会っていないんです。」

 

「あの方達は……軍には、所属されなかったみたいですので」

 

「一体、どこで何をされているんでしょうね。……ごめんなさい、何も知らなくて」

 

小さく頭を下げるセシリアに、俺は柔らかく笑いかけた。

 

「別に良いって……。まあ、アイツらのことだからきっとどこかで元気にやってるよ」

 

「ふふふっ……あのお二人は、お強いですからね」

 

セシリアが楽しそうに笑う。

 

「うん、そうだよ。……だから、大丈夫だ」

 

「……なんかさ。セシリアと話してると、すっげぇ落ち着くよ……」

 

なんだか、だんだん頭がボヤァっとしてきた。

 

セシリアが強力な結界を張ってくれているおかげだろうか。

一切の気を張らずに眠れるなんて、随分久しぶりな気がする。

 

 

 

……その時。

 

 

 

眠っていたルーナの指先が、ほんの僅かに——ぴくりと動いた気がした。

 

「……?」

 

けれど、俺はそれ以上気に留めなかった。

 

……まあ、気のせいだろう。

 

うとうとと微睡む視界の中で、セシリアの口元がぼんやりと動いているのが見えた。

 

 

 

「……ほんとうは……あなたと…………」

 

 

 

ん……。

何か……喋って、いるのかな。

 

けど……猛烈に眠い。

頭が、もう回らない……。

 

焚き火の明かりのせいか、真っ赤に染まった彼女の顔が視界に入って……。

それがなんだかとても懐かしくて。

 

 

 

だけど……

少しだけ、寂しくて。

 

 

 

そのまま——

俺の意識は、深い闇の中へと沈んでいった。

 

 

 





【シーンビジュアル】


焚き火の前で頬を染める聖女

【挿絵表示】
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