自害しようとしてる美少女を引き止めたら、壊滅寸前の魔王だった件。そんで、色々あった結果一緒に農業やることになった。   作:ジュウヨン

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22話 水源掘削、開始!!

 

 

 

「ここだよー!! お爺ちゃんが昔、水が湧いてたって言ってたところ!!」

 

リザールがピョンピョンと嬉しそうに飛び跳ねながら、俺たちを案内していく。

まるで友達と遊んでいるかのようで、とても楽しそうだった。

 

心なしか……最初にここで出会った時の、くたびれた笑顔とは違う。

瞳に光が宿っている気がした。

 

 

 

……だが、リザールが指し示した岩盤はすっかり乾き切っていた。

湧き水の名残すら、どこにも見当たらない。

 

 

 

「それじゃあ……まずは、ここらへんの地表の調査から始めるとするか。」

 

俺はルーナ達を引き連れ、村外れの岩肌をじっと見つめる。

 

「前に見た時にも、ところどころに植物が生えていましたが……そこを直接掘っていくのではダメなんですか?」

 

ルーナが不思議そうに首を傾げる。

 

「うーん……まあ、最終的にはそういう場所を掘ることになるかもしれないけど、意外と単純じゃないんだよ。」

 

俺は岩肌にへばりつくように生えている植物へ近づき、その根元を観察する。

 

「植物が生えてるってことは、その下に水分がある可能性は高い。でもな――」

 

岩肌に手を当て、軽く指の先で叩く。

 

コン、コン。

 

「地下の亀裂を通ってきた水が、たまたまここから滲み出てるだけって可能性もある。」

 

「だから、この真下を掘れば水が出る。ってわけでもないんだ。」

 

「ふむ、なるほど……。」

 

ルーナが感心したように頷く。

だが、すぐに眉を顰めた。

 

「……じゃあ、どうやって探すんですか?」

 

「うん。それを今から調べるんだよ。」

 

俺は岩盤全体を見渡し、記憶を辿るように目を細める。

 

「師匠と災害救助をやってた頃も、最初から闇雲に掘ったりはしなかった。……まずは地面を見て、水がどこを通っていそうかを探すんだ。」

 

「植物だけじゃない。土の僅かな湿り方、岩の色、亀裂の入り方……そういう細かい痕跡を一個ずつ拾っていく。」

 

リザールが表情をパァッと明るくして、父親のズボンの裾を引っ張る。

 

「お父さん!! よくわからないけど、農夫って凄いんだね!!」

 

息子の言葉に、リザルガンが鼻で笑った。

 

「ふん……まだ、水が出たわけじゃない。どれだけうんちくを語ったところで、結果が伴わなければ何の意味もない。」

 

その発言に若干イラッとするが、なんとか気持ちを抑えて地面の観察を続ける。

 

違和感を一つ一つ確かめるように、ゆっくりと歩いていく。

 

「…………」

 

しゃがみ込み、岩の隙間へ深く指を差し込む。

指先に触れた土は、周囲の砂よりほんの僅かに冷たかった。

 

「……ん?」

 

俺はその場の土を少しだけ摘まみ、指先で擦り合わせる。

 

「レオン様、何か分かったんですか?」

 

セシリアが後ろから尋ねてくる。

 

「いや、まだ何とも言えない。でも……」

 

俺は立ち上がり、周囲を見渡す。

 

「ここの土、他の場所より少し湿ってる。」

 

「他の、場所より……?」

 

ルーナもしゃがみ込み、俺の手元を覗き込む。

 

「ああ。……とはいっても、水が湧いてるほどじゃない。これだけなら、雨が染み込んだだけって可能性もある。」

 

「では……なんだというのだ?」

 

リザルガンが神妙な表情のまま、腕を組む。

 

「俺の読みが間違ってなければ……きっと、ここだけじゃないはずだ。」

 

俺は立ち上がり、数メートル離れた場所へ歩いていく。

 

「ここもだ。」

 

さらに、その先へ。

 

「……ほら、ここも。」

 

地面にしゃがみ込み、指先で土を確かめる。

 

「うん。やっぱり、同じ湿り方だ。」

 

「……だから、一体それがなんだというんだ。」

 

吐き捨てるリザルガン。

だが、その表情は僅かに動揺を見せていた。

 

俺は三か所の位置を指で繋ぐ。

 

すると――

 

「……この付近を、水が僅かに通ってる可能性があるな。」

 

俺は岩盤に走る亀裂を指差した。

 

「この亀裂も、バラバラに見えるけど……よく見ると、全部同じ方向に伸びていってる。」

 

「つ、つまり……?」

 

ルーナが、ゴクリと息を呑む。

 

「地下で、一本の大きな亀裂に繋がってる可能性がある。……もしかしたら、その先に水源があるのかもしれない。」

 

「……ほ、ほんとっ!?」

 

リザールが目を輝かせる。

 

「じゃあ!! ここを掘れば――」

 

「……いや、まだ分からない。」

 

俺はすぐに釘を刺した。

 

「地面に水分がある。亀裂もある。……けど、それだけじゃ水源がある証拠にはならないんだ。」

 

「……師匠が、言ってたんだ。」

 

俺は岩盤を見つめ、目を細める。

 

「水を探す時は、期待をしすぎるなって。」

 

「期待をしすぎるな、ですか……?」

 

ルーナが疑問を浮かべる。

 

「ああ。」

 

俺は苦笑する。

 

「水があると思い込んだ瞬間、人間は都合のいいものばっかり見始めるからな。」

 

「だから、実際に掘って確かめる。……結局、これが一番大変なんだ。必ず出るって保証がないのに、延々と何回も同じ作業を繰り返していくわけだし。……マジで、心が折れそうになるんだよ。」

 

昔、カイルと一緒に血豆を潰しながら、それでも泣いて地面を掘っていた苦い思い出が、ふと脳裏をよぎる。

 

……師匠は、ケロッとしながらずっと掘ってたなぁ。

俺たちがちょっと手を止めただけで、「お前ら、子供のくせに体力無えな!! ダサ!!」

……なんて、いちいち煽ってくるもんだから、休んでる暇もなかったんだよな。

 

今考えたら……鬼畜すぎんだろ、アイツ。

 

はぁ……。

まさか、またこの作業をすることになるとはな。

 

記憶の内容とは裏腹に……何故か、自然と口角が持ち上がっていた。

 

ピッケルを勢い良く肩から下ろす。

 

「よぉし!! じゃあまずは、ここを試してみよう!!」

 

「俺とリザルガンが掘削!! その他は出た石や土を運搬!! これでいこう!!」

 

ガァン!!!!

 

俺は地面に思い切りピッケルを叩きつけた。火花が散り、破片が弾け飛ぶ。

 

「しばらく掘って、穴が深くなったら補強班に分ける!!」

 

「それまで、とにかく掘って掘って掘りまくんぞ!! リザルガン!!」

 

俺の声に、リザルガンの額に青筋が走る。

 

「馴れ馴れしく俺の名を呼ぶな、農夫!!」

 

そう吐き捨て、負けじと力強くピッケルを振り落とす。

 

ガァン!!

 

「「うおおおおおおおおおおお!!!!」」

 

固い地面を叩く二つの音が、ラグナ渓谷の乾いた空気に高く響き渡る。

 

「えーーー!! ぼくも、お父さんたちと一緒に掘るのがいい!!」

 

俺たちを見ていたリザールが、不服そうに口を膨らませる。

 

「ほらほら。危ないから、リザール君は私たちと一緒に石や土を運びましょうね。」

 

セシリアが優しく宥める。

 

リザールは納得できないようで、ジメッとした目で見つめ返す。

 

「それじゃあ、私は荷車を持って来ます!!」

 

ルーナが勢いよく右手を上げ、そのまま村の方へ駆け出そうとする。

 

「あっ……ルーナ様!まだ、お怪我が――」

 

セシリアが慌てて止めようとするも、ルーナは既に走り去った後だった。

 

「ふふっ。なんだか……とても、嬉しそうですね。」

 

小さくなっていくルーナの背中を見ながら、セシリアが微笑む。

 

……ここまで、本当に長かったからな。

 

ラグナ渓谷のリザード族の村まで来て。

港町アクアリールにピッケルを買いに行って。

アウルム鉱山のゴブリン達を止めて。

 

それで、ようやく……

魔族達を、直接助けることができるんだ。

 

そりゃ、嬉しくないわけがないよな。

 

弾む気持ちのままに、俺は再びピッケルを地面に叩きつける。

 

……

 

俺たちは、それから日が暮れるまで、ひたすら地面を掘り続けた。

 

リザルガンが疲れて手を止めるたびに――

ひたすら腕を動かし続ける俺を恨めしそうに睨み、悔しそうに地面を叩く。

 

ルーナとリザールは、掘削で出た土や石を楽しそうに運び、

 

セシリアは、ちょっとした怪我を治療する役に自然と落ち着いた。

 

……

…………

 

「うん。……じゃあ、今日はここまでにするか。」

 

空が暗くなり始めた頃、額の汗を拭ってそう言うと、それを皮切りに、リザルガンが電源を切られたようにバタリとうつ伏せに倒れた。

 

「お父さぁん!!」

 

「り、リザルガン!!大丈夫ですか!?」

 

リザールとルーナが慌てて駆け寄る。

 

セシリアも近づき、手から魔力を飛ばしてゆっくりと目を閉じる。

 

「これは……。疲労困憊ですね。」

 

セシリアの笑顔に、ルーナが安心したように息を漏らす。

 

「ひ、ひろうこんぱいってなに!? お父さん、しんじゃうの!?」

 

泣きそうになるリザールの頭を、俺がそっと撫でる。

 

「んー……まあ、めちゃくちゃ疲れてるってことだ。大丈夫。死なねえよ。」

 

その言葉に、リザールが表情を明るくして胸を撫で下ろす。

 

「よ、よかったぁ……」

 

ルーナが優しく微笑んで、ぐったりしているリザルガンに水のボトルをそっと手渡す。

 

「リザルガン……。これをどうぞ。」

 

「う……ぅ……っ。ま、魔王様……かたじけない……っ」

 

地面に顔を埋めたまま、リザルガンが唸るような声で返す。

そして、ゆっくりと腕を上げ、水の入ったボトルを受け取った。

 

……

…………

 

「よぉし! じゃあまた明日からもガンガン掘ってくから、覚悟しとけよ、リザルガン! リザール!」

 

帰っていくリザルガンとリザールの背中に、明るく声を掛ける。

 

「……ふん、農夫に言われるまでもない。」

 

振り向きもせずに、ボソリと言うリザルガン。

 

「うん! おやすみ! 農夫レオン!!」

 

こちらを向いて、元気に手を振るリザール。

 

……農夫言うな。

勇者や、俺は。

 

てか、まだ農業してないやろがい!!

今はせめて、インフラ開発お兄さんと呼べや!!

 

リザルガンはフラフラだったが、リザールは元気にぴょんぴょん跳ねるように歩いていた。

 

子供の体力って、マジですげえのな。

 

だが——

多分、それだけじゃない。

 

何かが、変わる……

もしかしたら、幼いながらにも、そう思ってくれているのかもしれない。

 

 

 

……ガキの期待には、応えてやらねえとな。

 

 

 

父親と手を繋いで帰っていくその姿は……なんだか、とても楽しそうだった。

俺たちはそのまま手を振り続け、二人の姿が見えなくなるまで見送った。

 

 

 

……

…………

 

それから、俺たちは簡単に食事を済ませた後。

村の外れにテントを二つ建てた。

 

ルーナとセシリアは一緒のテントに入っていき、俺はもう一つのテントに一人で入る。

 

なんだか、二人はとても和気藹々とした雰囲気だった。

 

……くそ、俺もあっちが良かったにょ。

男臭くて嫌になるわ!!プンプンやで!!

 

ヤキモキした思いを抱えながら横になり、目を閉じると⸻

極度の疲労から、一瞬で意識は眠りの底へと引きずり込まれていった。

 

 

 

 





今回は、良い場面が浮かばなかったので挿絵無しですにょ。

挿絵要ります?
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