『今回向かってもらうのは日本の東京郊外の府中市にある“日本ウマ娘トレーニングセンター学園”通称“トレセン学園”よ。』
『この世界では我々の世界で言う“競走馬”にあたる馬が人間の女性の姿をしている世界でね。主に日本国内で活躍した競走馬の名前を冠する“ウマ娘”という存在が走りを学ぶための施設がこのトレセン学園なの。』
『私たちの世界でも競馬やその他レースに関する新聞社や出版社は数多く有る。この世界でも例外ではなく、ウマ娘に関する情報を専門に取り扱う巨大なメディア市場ができあがっているわ。今回のターゲットはそのうちの一つ、“週刊ストライド”の記者、堀越和馬。ああ、この場合の和馬の馬の字は下の点が4つじゃなく2つになるらしいわ。馬がおらずウマ娘がいる世界らしいと言えるわね。』
『彼は週刊ストライドのなかでコラムを書いているのだけれど、最近発表された“暴君オルフェーヴルの弱点”というコラムが賛否を巻き起こしていてね。正当な見識が多いけれどいくらか誇張表現が過ぎたようね。オルフェーヴルのファン、曰く“臣下”からはかなり目の敵にされてるみたい。』
『クライアントはそんな臣下さんの一人よ。記事の内容がよほど許せなかったようね。彼を葬るだけでは飽き足らず、取材中の彼の持っているであろう荷物をすべて焼却してほしいそうよ。商売道具もすべて葬り去り、功績すら残したくないということね。』
『準備は一任するわ。』
~準備~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・メンバー
【エージェント47】
装備:小型望遠鏡
服装:愛用スーツ
『トレセン学園へようこそ。』
『ここは日本中から将来有望なウマ娘たちが集まってくる国内最大規模の“走るための学校”よ。中等部と高等部があって、ここからトゥインクルシリーズというレース界へと羽ばたいていくことになるわ。』
『取材用プレスカードを所持していないと取材することはおろか中に入ることもできないわ。警備も教育機関にしては厳重だから注意して。』
『今日は地方でG1レースが開催されていて学園内のウマ娘はいつもよりは減っているわ。それでも相当数のウマ娘と職員と警備員が居るから目立たずに侵入してことを進めるのは至難の業ね。でもあなたはそのほうが燃えるかしら?』
『幸運を祈ってるわ。』
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ガタンゴトン
「なあなあ、例の記事見た?」
「見た見た。オルフェーヴルって意外に可愛い所あるんだな。」
「なー、確かに姐であるドリームジャーニー?だっけ。それとよく一緒に写ってるのは見かけるけどさ。まさか普段からべったりなシスコンだったとは。」
「まあそれがコンディションの向上につながってあの成績ってんだからお姉さん様々だな。」
扉横の座席で男が二人話しているのが聞こえる。おそらくそれがブリーフィングでも言っていた“暴君オルフェーヴルの弱点”という記事なのだろう。先程駅の売店で見かけた例の雑誌に載っていた写真ではブリーフィングで見た写真よりもくたびれた印象だ。
“マモナクー トレセンガクエンマエー トレセンガクエンマエー オリグチハー”
電車はトレセン学園前駅に到着した。扉が開き、私はそのままトレセン学園正門を目指して歩いていく。情報部によるとターゲットは今日もトレセン学園で取材を行うらしい。取材許可が降りているということはトレセン学園側としてはあの記事に文句はつけていないということになる。その部分も含めてクライアントは許せないのだろう。典型的な“法が裁けないのなら私が”というやつだ。
しかし外壁が見えてきたところで問題が発生した。この学園は周囲を高さ3m近い垂直壁で囲われている。それはまだいいのだがそれに沿うように通る道路があまりにも見通しが良すぎるのだ。正門前など片側2車線道路だ。街路樹などもなく、塀を乗り越えようとすればどうあがいても目立つ。どうにかして正面から入る方法を見つけなければならないだろう。
正門付近までやってきたが、正門には緑色の服装をした女性が立っていた。おそらく生徒であるウマ娘たちの登下校を見守るのだろう。
すると、正門前にタクシーが一台止まった。中から出てきたのはターゲットだった。
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『アレが堀越和馬。結構敏腕記者として通ってるらしいわ。でも古今東西、現実でも創作でも、知りすぎた記者は消される運命に有るものよ。』
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「おはようございます。たづなさん。」
「週刊ストライドの・・・。おはようございます。」
「やだなあ。そんな身構えないでくださいよ。ちゃんと取材許可は貰ってますよ。」
「・・・。」
「大丈夫です。規約通り後ろの学生寮には一歩たりとも踏み入れませんし、写真も撮りませんよ。」
「それならいいのですが・・・あまり派手には書かないでくださいね。」
「わかっています。前回のあの記事は編集部でもちょっとやりすぎ論が出てましてね。今回は自重する予定ですよ。それに・・・」
「それに?」
「ああいや。なんでもありません。こちらは裏が取れたら理事長さんに直接お聞きしますよ。」
「理事長の手を煩わせるようなことないようにお願いしますね。」
「わかってますわかってます。ではでは。」
ターゲットはそのままスタスタと学園内に入っていった。私もどうにかして中にはいる方法を探さねばなるまい。
しかし、待てども待てどもたづなと呼ばれた女性が正門から動く気配がない。それどころか同じく周囲をうろついているこちらを薄目で見ているような気さえする。ここは一旦退散しよう。
私はそのまま外周をぐるっと周ることにした。しかし職員用の通用口は警備員と監視カメラにID認証で入ることはできなさそうだ。外に出てきた職員からIDを借りるのも一つの手だろうか。そう思い目立たないところから窺っていたその時だった。
ドガァン!
少し離れたところで大きな音と土煙が上がった。私はそちらへ小走りで向かうと、なんと外壁に大穴が空いていた。そして近くには小さな鉄球のようなものが転がっている。おそらくこの鉄球が壁を貫通したのだろうと推測できる。好都合だ、この穴を通らせてもらおう。
私は穴の周囲に人影がないことを確認して素早く穴を通り抜けて中に侵入した。その後すぐに足音が聞こえてきたのでとっさに近くの茂みへ身を隠した。
タッタッタッ
「あー!やっぱり!どうするんですかこれ!」
「あらあら。」
「あらあらじゃないです!体育の砲丸投げで外壁破壊とか前代未聞です!もうちょっと手加減というものを知っていただけないかしら?!」
「この鉄球が軽すぎるのがいけないのですわ。まるでピンポン玉のよう。」ヒョイ
「一応その鉄球50kgはあるはずなんですけどね・・・。あとピンポン玉みたいな大きさにしたのはあなたでしょう・・・。」
ダダダダ
「コラー!!またお前達か!!」
「ヒェ!」
「あら。副会長。ごきげんよう。」
「ごきげんようじゃない!ジェンティルドンナ!お前また備品を破壊したな!?しかも今度は外壁まで・・・!」
「この備品の性能が悪いせいですわ。」
「うるさい!とりあえず生徒会室まで来てもらうからな!ヴィルシーナ!君もだ!」
「ええ!?なんで私までぇ!?」
ウマ娘達が壊れた外壁の周囲で騒ぎ始めた。そのうち警備員も駆けつけてきた。騒がしくなったので多少音を立てても問題なくその場を離れることができた。
周囲は森に囲まれており、身を隠す場所はいくらでもある。しかし我々の世界の馬は嗅覚に優れている。であるならばその派生とも言えるウマ娘たちも嗅覚が人より優れている可能性もある。慎重に事を運んだほうがいいだろう。少なくとも血の匂いをさせながら学園内は歩き回らないほうがいいだろうな。
私はとりあえず森を抜け、学園の本棟と思われる建物の近くまで来た。ここから先は見通しがいいためこの服装では目立ってしまう。どうするか思案していると近くの道を一人の男が歩いてきた。手には雑巾がかかったバケツ。もう片方には長いモップ。明らかに清掃員だ。とりあえず彼の服を借りることにしよう。
ガサッ
「ん?なんだ?誰か居るのか?」
ガサガサ
「今は授業時間のはずだぞ。そこにいる悪い子は誰だ?早く授業に」ガサガサ
ゴッ!
「うぐっ!」
ドサッ
首尾よく気絶させることに成功した。やはりただの人間はウマ娘のような力も嗅覚も備わっていないようだな。その点は安心材料だが、彼の服を借りるだけでウマ娘に対してもちゃんと偽装できればいいのだが。
私は茂みに男を隠すと服を借り、バケツとモップを持って学園の中央広場へ向かった。服が少しキツかったため少し手間取っている間にチャイムが鳴った。
キーンコーンカーンコオーン
ぞろぞろと建物からウマ娘たちが出てくる。時間的に昼休みだろうか。出てくる者たちは手に包みを持っていたりビニール袋を持っていた。ランチタイムのようだ。
私は彼女たちのじゃまにならないように中央広場の外周にある回廊の柱を掃除するふりをして彼女たちの会話に耳を傾けた。一番近くのベンチに機械的な特徴のある髪飾りをした高身長の子と黒髪にバラのコサージュを付けた子が並んで座った。ベンチの上で各々包みを広げ、サンドイッチを食べ始めた。黒髪の子のほうが若干多いだろうか。
「・・・ライス。サンドイッチの咀嚼ペースが、規定値を上回っています。消化器官への負担を軽減するため、ペースダウンを推奨します。」
「むぐっ・・・モグモグゴクン ご、ごめんなさいブルボンさん。ライス、今日はお腹が空いてて、サンドイッチが美味しくてつい・・・。」
「謝罪の必要はありません。午後のトレーニングメニューから逆算したエネルギー消費量を考慮すれば、ライスのそのサンドイッチ量は適切と判断します。」
「えへへ・・・。あ、あのね、ブルボンさん。今日の午前中のトレーニングの時なんだけど……。」
ライスと呼ばれたウマ娘は、手にしたサンドイッチを一旦膝の上に置き、少しだけ不安そうに周囲を見回してから声をひそめた。
「グラウンドを走ってたら、キラッって・・・カメラのレンズの反射光みたいなのが見えた気がしたの・・・。」
「私も視認しました。学園の許可を得た公式の撮影記録のスケジュールには該当していません。」
「ブルボンさんも見えたの? どの辺り・・・?」
「第3コーナーを過ぎた先の、外周にある藪の中です。樹木の迷彩に溶け込もうとする不審な対象物と、望遠レンズ特有の光の屈折を確認しました」
「やっぱり・・・。ライスたちの練習の邪魔をしてくるわけじゃないから、別に構わないんだけど・・・。でも、少し不気味だなって・・・。」
「脅威レベルを算出・・・。現時点で、対象からの直接的な物理的妨害は確認されていません。ですが、ライスのメンタルパラメータにエラーが生じるようであれば、即座にマスターへ報告し、警備部門による排除プロセスを申請します」
「ううん、そこまでしなくて大丈夫だよ。ただの熱心なファンの方かもしれないし・・・でも気のせいかもしれないんだけど、レンズはこっちに向いてなかったような・・・?」
「はい。明らかにコース外を指向していました。ウマ娘を撮影しているのではないのかもしれません。」
####情報を取得####
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『ウマ娘2人が練習用トラック第3コーナーの先の藪の中に望遠レンズの反射光を視認したようね。学園の公開している取材予定表だとその付近は報道関係者立ち入り禁止区域のはず。ターゲットだとしたらずいぶん大胆ね?』
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スタスタスタ
「おーっす!お米サイボーグのお二人さん!元気に24万大栄養素を摂取してっかあ?」
「あ、ゴルシさん。こんにちは。」
「こんにちは。そこまで大量の栄養素は摂取していませんがいわゆるランチタイム中です。」
「実はまだ人類が見つけてない栄養素ってのがゴロゴロ有るもんなんだぜ。パララウロサウルス菌とかメガロドン菌とかな!」
「それは白亜紀の生物では…?」
「ブルボンさん。深く考えたらだめだと思うよ。」
これ以上有益な話は聞けなさそうだ。私は怪しまれないように用具を片付けながら出来る限り気配を殺しつつその場を後にした。
グラウンドに向かうわけだがグラウンドで掃除用具を持っていても怪しまれてしまう。幸いなことに道具を持っていなければただの整備員に見えなくもないので適当な植え込みに掃除用具を隠してそのままグラウンドへ向かった。屋内プール施設や簡易ステージ。この学園は実に様々な設備が充実している。その一番奥に広大なレーストラックが現れた。
レーストラックは周囲より一段低い場所に設置されており、事前情報によると一周は2400mあるらしい。今まさにレーストラックでは昼休憩を利用して2人のウマ娘が走っていた。遠目からでもわかるそのオレンジ色のショートヘアと、赤毛のショートヘア。オルフェーヴルとウインバリアシオンだ。今は並走トレーニングを行っているようだ。その気迫はさながらレース本番とも思えるほどだ。
2人が第3コーナーに差し掛かる。そのまま何事もなく通過して第4コーナーに入っていくが、私はミホノブルボンとライスシャワーが言っていた第3コーナーの先の藪を注視した。そこに人影が潜んでいるのを見逃しはしない。持参した望遠鏡を使って確認するとたしかにターゲットだった。しかしコースの近くにいるにも関わらず、後ろ向きで撮影どころかレースを見もしていないようだった。何をやっている?
ターゲットはそのまま藪の奥をおもむろに2~3枚写真を取ると満足げに外周を通ってこちらにやってきた。
「ふへへ・・・いいのが撮れたぜ・・・これを記事にすれば・・・」
ターゲットはカメラのディスプレイを覗いたままこちらに気が付かずすれ違った。このままここでターゲットを暗殺することも可能かもしれないが、ウマ娘は耳もいい可能性が高い。ここで悲鳴の一つでもあげられればもしかしたらレーストラックに居る2人に気が付かれてしまうかもしれない。脳幹を撃ち抜けば悲鳴もあげさせることなく葬れるが、発射音に気が付かれる可能性がある上、そもそも今回は硝煙の匂いを勘付かれたくないためにシルバーボーラー自体持参していない。仕方なく私はグラウンドから離れていくターゲットを距離を取りつつ尾行することにした。
そのまま機会を伺いつつ尾行していったが、学園内を歩き回っているだけで一向に人目につかないところへ行く、もしくは誘導する機会に恵まれなかった。そうこうしている間にウマ娘たちの午後の授業も終わり、私も最初の広場に戻ってきてしまった。
このままでは埒が明かない。私は一計を案じることにした。幸いターゲットは広場のベンチで缶コーヒーを飲みながら手持ちのノートパソコンで何か作業をし始めた。
私はまず清掃員を隠した茂みに戻った。そこではまだ清掃員が伸びていた。しかし時間的にいつ目覚めてもおかしくない時間だ。私は急いで愛用スーツに戻り、清掃員に元の服を着せた。周囲を警戒し、ウマ娘たちに見られないように回廊へ出た。
私はそこであえて少しだけ気配を出してターゲットの注意を引いた。と言っても視線の端を横切っただけだが。
「・・・うん?あいつ・・・なんだ?」
よし、ターゲットがこちらに気がついたようだ。私はそのまま周囲を見渡して警戒している風を装いながら回廊沿いに広場を横切った。
「あいつもしかして・・・よしっ。」
ターゲットが立ち上がった。どうやらこちらを尾行してくれる気になったようだ。私は途中意味深にスマホを見つめたり、時折ターゲットが隠れやすいタイミングで立ち止まって周囲を警戒してみせた。ターゲットの尾行能力は正直褒められたものではなかったが、気が付かないふりをしてウマ娘や他の職員を避けつつ屋内プール棟近くの古い倉庫に入った。鍵がかかっていたがこの程度の鍵なら片手でピッキングすることは容易かった。
「あいつあんなところで何を・・・」
タタタ
ターゲットが倉庫に近寄ってくる。周囲を警戒しつつ中を覗き込んでくる。私は気が付かれないように扉と天井の間の壁に張り付いて入ってくるのを待った。
意を決してターゲットが中に入ってくる。扉が勝手にしまっていくのと同時に私は飛び降りつつターゲットの頭に倉庫内にあった鉄パイプで殴りつけた。
ガッ
「うぎゃ!」
ドサッ
ターゲットはそのまま気絶してしまった。このままここで首を折ることも出来るが・・・ついでだからサブ目標も同時に達成することにしよう。丁度良くこの倉庫の裏に簡易的では有るが焼却炉が有るようだ。
私は窓から倉庫を出て裏の焼却炉に火をつける。近くに後でまとめて燃やすつもりだったと思われる紙ゴミや材木の切れ端などがあったのでそれを火種にして火を大きくしていく。ある程度大きくなったら倉庫へ戻り、ターゲットを抱きかかえた。急がなければ煙に気がついて不審に思った者が見に来てしまうかもしれない。急いで焼却炉の中にターゲットと彼が持っていたカバンを放り込んだ。放り込むと同時に焼却炉の扉を締めてかんぬきをかける。これで外には出てこれないだろう。中で気がついたのか何か叫んでいたような声も聞こえたが、この焼却炉はコンクリート造りなためそこまで大きな声で響いてきたわけではなかった。そのうちに声も聞こえなくなった。
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『ターゲットダウン。ついでに仕事道具の焼却処分も完了ね。お疲れ様。帰還してちょうだい。』
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ふと足元を見ると学園取材許可のプレスカードが落ちていた。持ち上げて放り込むときに外れたらしい。丁度いいので付けさせてもらう。これで堂々と正門から帰還することが出来る。私はそのまま夕焼けに染まりかけている空に立ち上る煙を背にその場を後にした。
すれ違う生徒たちは私の首元のカードを見て「取材の記者」だと認識し、特に気にする素振りも見せない。このまま何事もなく正門を通過できるはずだった。
「――おや。見かけないお顔ですね。」
不意に、横から静かな、しかしひどく通る声で引き留められた。
立ち止まって視線を向けると、そこには小柄なウマ娘が立っていた。小柄な体躯とは裏腹に、その眼光は周囲の生徒たちとは一線を画す、得体の知れない深さを湛えている。
「そのプレスカード・・・なるほど。本日は学園の取材ですか。」
「ええ。ですが、本日の予定はすべて終えました。これより失礼するところです。」
私は記者としての穏やかなトーンを完璧に作り上げ、短く返答して歩みを再開しようとした。しかし、彼女は優雅な所作で一歩前に出ると、私の進路をふわりと塞いだ。
「それはお疲れ様でした。ですが、妙ですね。」
「何がでしょうか?」
「先ほどそのカードを首から下げていた方とは、随分と『気配』が違う。あの方はもっと・・・そう、何かに飢えたような、浅ましくも騒がしい足音を立てておいででしたから・・・。」
彼女は、私の目を真っ直ぐに見つめて微笑んだ。確たる証拠などないはずだ。だが、彼女のその瞳は、私が「カードの元の持ち主」をどうしたのか、薄々勘づいているように見えた。彼女はフッと小さく笑うと、塞いでいた道を譲るように一歩身を引いた。
「まあよいでしょう。世の中には知らなくて良いことも多分にある。あなたも私も、それをよく心得ている。そうでしょう?」
「・・・ええ。私は少しばかり、足音を消すのが得意なもので。それなりには。」
「フフフ。おっと、お邪魔して申し訳ありませんでした。それでは、良き旅路を。」
そういうと彼女はスタスタと学園の方へ歩いていってしまった。事前情報で多少は知っていたつもりだったが、アレがオルフェーヴルの姉であるドリームジャーニーか。たしかに底知れないものを感じる。今度この世界に来たときは注意したほうが良さそうだ。
私はそのまま正門を抜け、駅前にあるコンビニのゴミ箱へプレスカードを捨てて電車に乗ってセーフハウスへ帰還した。
~~~1時間後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『お疲れさま。・・・どうしたの?』
「いや・・・なんというか・・・。」
『珍しいわね。47が煮えきらないのは。』
「よくわからないが得も言えぬ違和感のようなものを感じることが有る。」
『違和感?医療班に伝えましょうか?』
「いや体の不調というわけではない。任務についてだ。」
『具体的には?』
「例えば今回の任務だ。ターゲットはあの学園でウマ娘ではない何か別の目的で動いていたようだ。」
『別の目的?』
「ああ。グラウンドの第3コーナーの先の藪の中。あそこでなにかしていた。」
『それなら多分思い過ごしよ。衛星映像で確認したけれど本当にただの藪。植生も周辺と相違があるわけでもない、赤外線でもX線でもタキオン波による観測でも不審な点は見つからなかったわ。』
「タキオン波でも調べたのか?」
『ええ。実はあなたと同じようにキャロラインもおかしいって思ったらしくてね。そのときに調べたのよ。結果は今言った通り、変な祠が有るわけでも空間の歪みがあるわけでもなかったわ。近くに有るのは配電盤くらい。』
「そうか・・・。」
『まあでもあなたの勘は当たらないことのほうが珍しいくらいだからね。念のため後で情報部の方で追加で現地調査させるわ。何かわかったら知らせるわ。』
「ああ。頼む。」
~~ミッションコンプリート~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・「規格外」
【+1000】『ジェンティルドンナが開けた穴から侵入する。』
・「取材」
【+1000】『トレセン学園内の主要な建物をすべて周る。』
・「一石二ウマ」
【+4000】『ターゲットとその持ち物を同時に処分する。』
・「火中の栗」
【+1000】『オルフェーヴル・ドリームジャーニーのいずれかに会う。』
ウマ娘の世界の話は書きたかった話のひとつでした。また来る・・・かも?
次は過去に行った場所に行く第2弾です。