complete!
~47side~
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『彼が楠木幸三。自らの理論で自らを滅ぼす哀れな科学者。手早く始末しましょ。』
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ターゲットは意外に早く見つかった。というのも、制御室からさほど離れていない部屋。実験炉を挟んで反対側になる位置の部屋にいた。ここは実験炉へ送り込む冷却剤や各種燃料パイプが置かれている部屋で、ターゲットはそのうちの一つのタンクの前で作業をしていた。どうやら加圧装置を弄くっているようだ。ブツブツ独り言を言いながらパイプの隙間に潜り込んで作業をしている。
「クッソ、なんでこんなに硬えんだよっと・・・」
「でもコレでこっちはOK。後はこっちを・・・こっちも硬えじゃねえかよ・・・」
私はターゲットが潜り込んでいる隙間のすぐ上に蒸気弁があるのに気がついた。勿論堅く閉じられてはいるが、ここを開ければ高熱の蒸気がターゲットに直撃するか、もしくは直撃と行かなくとも部屋全体がかなり高温の蒸気で満たされることだろう。本来はその直ぐ側にある排気パイプを通じて蒸気は外に出るようだが、肝心のパイプが繋がっていない。時折パイプがあったであろう隙間に手を突っ込んでいるところを見るとターゲットが外したのだろう。
私は静かに近づいた。ついでに壁にかけてあったロープも手に取る。私はターゲットに気が付かれないように後ろから慎重に近づき、蒸気弁のレバーにロープを掛けた。そのままスルスルとターゲットから離れ、扉の近くまで戻った。扉を開けて外に誰もいないことを確認すると、素早くロープを引いた。
ビュシューーーーー!!!
ギャアアアッ!!
引いた瞬間弁が開かれ、超高温の蒸気がもろにターゲットに直撃した。私は部屋が蒸気で一杯になる前に外に出て扉を締めた。
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『ターゲットダウン。部屋は高温の蒸気で満たされて蒸し焼きになったようね。外にも漏れ出てくる可能性が高いわ。すぐに離れたほうが良いわね。』
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私は残る仕事、助手の暗殺と部屋のサーバーデータの抹消のため外に出て電子励起爆薬を起爆しようとした。しかしそこでバーンウッドの通信が入った。
『47。今制御室にはこの世界の主要人物が来ているようよ。起爆するのは待って頂戴。』
「何?」
『主要人物の殺害は認められていないわ。なんとか引き剥がして。』
また面倒なことになった。この世界の主要人物というと十中八九戦闘経験があり一筋縄ではいかない。しかし対処しないわけにも行かないので急いで制御室へと戻った。
制御室前に到着すると慎重にドアを開けようとした。その時中から声がした。
~ネギside~
「こ、これは・・・!」
楠木ラボに入るとすぐに床に倒れている大学生と思われる人たちを見つけた。僕たちはとっさに駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
「こちらの方も気絶して・・・ネギ先生!アレ!」
「な、何よアレ?!」
刹那さんが見つけたのは奥のサーバーラックに取り付けられている異様な形の機械だった。ネジ穴のない半透明の箱で中には色々配線が見えるけれど、ひときわ目を引くのは中央のディスプレイだった。そこにはディスプレイいっぱいに大きく「STANDBY」と書かれている。
「葉加瀬さん、アレなんだか分かる?」
「待ってください・・・これは!?」
「なんですかそれは?」
「マズイですネギ先生!これは爆薬です!」
「なんですってぇ!?」
「っ・・・!」
「あわわ・・・。どないしよ!ネギくん!」
「葉加瀬さん、爆発までどのくらいかわかりますか?」
「それが、これは遠隔起爆式のようです。タイマー式ではないので正直いつ爆発してもおかしくないです・・・。」
「解体とか出来ないの?」
「無理です!半透明で中身を見せてるのでわかりますが、外箱にまんべんなくセンサーが取り付けられてます、箱を開けようとした瞬間に爆発すると思います。」
「解除の方法はないのですか?」
「仕掛けた本人が遠隔起爆装置を持っているはずです。それを奪取して止めないことには・・・。」
くっ・・・、このままここにいてはかなりマズイ。部屋がそれほど荒らされていないのに制御盤が壊されていてなおかつ人が気絶させられている。つまり犯人のここでの目的は達せられている可能性が高い。つまりいつ他の目標が完了して証拠隠滅のために起爆されてもおかしくない状況。
「急いでここを離れましょう!」
「で、でもネギくん。この人たちは・・・。」
「あっ・・・。」
そうだった。数は全部で5人。全員で運び出せば間に合うかも知れないが・・・。
「と、とりあえず治すえ?」
「そうですね、そうすれば一緒に逃げれますし。」
「じゃあ・・・」
ガチャ
「そうはいかないな。」
!?
~47side~
「そうはいかないな。」
私は中の会話的に気絶させた5人を復活させようとしているのがわかった。それは色々と困る。仕方ないのでこちらから姿を表すことにする。
「くっ・・・貴様!」
「あなたが襲撃者ですか。」
桜咲刹那があからさまに殺気をみなぎらせてこちらを見ている。私はネギ先生と呼ばれた子どもを見つつ答えた。
「そうだ。ネギ・スプリングフィールドくん。」
「どうして僕の名を・・・!」
「君はずいぶんと有名人だからな。そして刀を構えている桜咲刹那、そしてその後ろでもカードを構えている神楽坂明日菜。」
「私たちの名まで・・・!」
「あんた一体何なのよ!」
私はポケットから先程のUSBを収めていたケースを取り出して言った。
「これが起爆装置だ。スイッチを押せば爆発する。」
「・・・!」
まあこのスイッチは単にケースを開けるためのスイッチでしかないが。そんなことは彼らにはわからない。
「・・・あなたの目的はなんですか。」
「ネギ先生・・・。」
「(刹那さん、抑えてください。あの人、相当な手練です。雰囲気でわかりますよね。)」ヒソヒソ
「(ええ・・・しかし、)」ヒソヒソ
「(まず相手の出方を見ましょう。)」ヒソヒソ
「私の目的か。それはそこのサーバーを破壊することと、この部屋で気絶している人間全員の抹殺だ。」
「抹殺!?」
「・・・その目的はやめてもらうことは出来ませんか?」
「不可能だ。しかし同時に君たちを傷つけるなとも言われている。」
「何?」
「うちらは殺しちゃあかんってこと?」
「そういうことになる。近衛木乃香。」
話している間に桜咲刹那と神楽坂明日菜が静かに側面に回り込み始めた。
「私は君たちを傷つけたくない。しかし目的は達せられなければならない。どうかここは何も見なかったことにして立ち去ってくれないか?」
「その場合この人たちは・・・。」
「無論死んでもらうことになる。」
「それは・・・承服しかねます。」
「そうか。そうだろうな。ならば・・・。」
「「実力行使!」」
言うが早いか、左右から日本刀と巨大ハリセンが降り掛かった。私は手にしていたケースを上へ放り投げると、攻撃を軽く身を捩って躱し、武器を振るった二人に裏拳と蹴りをお見舞いした。倒れ込む2人を横目に、落ちてきたケースをキャッチし、そのままポケットへ仕舞った。
「がっ!」
「あだっ!」
「せっちゃん!」
「明日菜さん!」
「もう少し汚い部類の体術も習ったほうが良いな。型にはまりすぎだ。」
「小癪な!」
桜咲刹那がすぐさま体勢を立て直してこちらに向かってきた。私は近くにあったスパナ、先ほど殴打するのに使ったものだが、これで日本刀を受け止める。魔法で強化されていればスパナも一刀両断だっただろうが、まだ一般人と侮っているということか。それはそれで都合がいい。
「ラス・テル マ・スキル マギステル・・・」
おっとマズイ、呪文の詠唱を始めた。相手が一般人だと侮っているということは攻撃呪文と言うより拘束呪文である可能性が高い。私はすぐさま桜咲刹那を合気柔術の要領で同じく向かってきていた神楽坂明日菜のほうへ投げ飛ばした。と、同時に近くのテーブルの上においてあった瓶をネギ・スプリングフィールドへ投げつける。勿論呪文詠唱中であってもその程度の攻撃は手で軽く振り払ってきた。だが、その衝撃で瓶は割れて中の液体が周囲に飛び散った。
バリン!
シュゥゥゥ…
「ぐっ!これは!」
「マズイですネギ先生それは!」
「ネギ!」
「ネギ先生!」
どうやら瓶に入っていたのは四塩化チタンだったようだ。彼はすぐに後方に後ずさると即座に無詠唱で風を起こして換気ダクトへ散らせた。
私はその隙を見逃さずに懐から先程部屋に入る直前に作った“紙飛行機”を葉加瀬のほうへ飛ばした。投げた直後にそのままバックステップ。部屋から飛び出した。
そのまま研究棟内を走って一旦その場を離れた。
「バーンウッド、彼らの戦闘力はかなりのものだ。一時作戦を中断して退却、態勢を整える。」
『了解。彼らの位置情報は把握できるわ。何をしているかまではわからないけれど。』
~ネギside~
「くっ・・・しまった逃げられた!追います!」
「ネギくん!大丈夫?」
「大丈夫です木乃香さん。それよりも刹那さん!追撃は待ってください!」
「え?」
部屋を飛び出していこうとした刹那さんを寸前のところで呼び止める。
「どういうことよネギ?」
「ネギ先生?なぜです?アイツが起爆装置を持っている限り安全ではないのですよ?」
「それは・・・これです。」
僕が瓶を割って中の液体が飛び散った時、奴は何かを葉加瀬さんの方へ投げた。とっさにそれを阻んだけれどそれはただの紙飛行機だった。一瞬なぜ?と疑問が浮かんだけれど、手に取った紙飛行機には何やら文字が書いてあった。
“5分後に起爆する。助けたければそれまでに脱出しろ。”
「どういうことです?」
「あの人・・・もしかしたら命令されてやらされてるだけなのかも。」
「どういうこと?」
「殺したいのであれば気絶させずに最初に殺すほうが手っ取り早いはずです。それなのに気絶にとどめた。」
「確かに妙ですね・・・。」
「葉加瀬さん、爆弾の解除はできますか?」
「ちょっと無理そうですね。今改めて見ましたが位置を動かすだけでも起爆してもおかしくない構造をしています。」
「となればまずけが人を助けるのが最優先です。木乃香さんの魔法で起こす手もありますが・・・。」
「ちょっと時間的に微妙ですね。すでに奴が去ってから2分が経過しています。」
「くっ!急がないと!けが人を抱えて外に出ます!明日菜さん刹那さん手伝ってください!木乃香さんと葉加瀬さんは先に外へ!」
「了解!」
「オッケー!」
「わかったえ!」
「わかりました!」
僕が1人、明日菜さんと刹那さんが2人ずつ抱えてダッシュで外へ出る。警備室の人たちにも伝えて一緒に研究棟から離れた次の瞬間。
ドガァァァァァァン!!!
「キャアア!!」
「わわわ!」
「くっ・・・!」
予想外に大きな爆発が起こった。爆弾の大きさはサーバーラックの空きスペースの半分も使ってなかったはず。なのに僕たちが危うく吹き飛ばされかけるほどの大爆発が起こった。
「どうしてこんなに大きな爆発が?!」
「おそらくサーバーラックに仕掛けた爆弾の威力が予想外に高く、隣の実験炉まで吹き飛ばして連鎖爆発した可能性がありますね。それにしてもコレほどの威力になるとは・・・。」
「この前茶々丸さんを工学部に送ったときも爆発したけどそれの比じゃないわよコレ!」
シュウウウンスタッ
「みなさん。ご無事ですか。」
「茶々丸!」
「茶々丸さん!」
「マスターの用事が終わってここまで飛行して向かっていたら突如工学部の近くで大規模な爆発が視認できたので。何があったのですか?」
「襲撃者です。目的はラボのデータと人員の抹消ってところでしょうか。」
「私と刹那さんが同時に襲いかかっても結構簡単にいなされちゃったからかなりの手練れよアレ。」
一体何者だったのだろう。アレから姿を見ていないからおそらくどこかに逃亡したと思うのだけど・・・。
「そういえば葉加瀬。先ほど爆発がある直前、不自然な電磁波を観測しました。また、それとは別件で爆発に際しても別の不自然な電磁波を観測しています。」
「それ本当?茶々丸。こっちの端末に出せる?」
「はい。」ピピピ
「むむむ・・・多分直前の方は楠木ラボの実験のせいね。波長が私の研究室で観測されたのと似てるわ。」
「そういえば結局楠木ラボ?ってところは何研究してたのかしら?」
「“波動”って警備員のおっちゃんたちは言ってはったけど・・・。」
「私も詳しいことは。・・・ん~?こっちの爆発時の波長は今まで見たこと無いタイプの波長です。これは機械が発すると言うより爆弾のほうが発している可能性が高いですね。」
「特殊な爆弾だったってこと?」
「ありえますね。私も専門外ではありますが神鳴流の仕事で何回か爆弾は見たことあります。あの部屋にあった爆弾の大きさでは通常なら部屋がめちゃくちゃになる程度で、建物自体を吹き飛ばすほどの威力は出せないと思います。」
「でも実験炉が隣にあったんでしょう?」
「それにしてもです。原子炉とかならまだしも、学生の実験に使う程度の実験炉でここまでなるでしょうか?」
「う~ん・・・なんとも言えませんね。確かに壊れると爆発する可能性のある実験炉は工学部でも特殊な許可が必要なですが無いことはないです。ですが本棟から離れているとは言え他の研究室と共同で使っている施設内に許可が降りるとは・・・。」
僕たちが疑問に思ったことを話し合っていると遠くからサイレンのようなものが聞こえてきた。
ウーウー
「やば、工学部の即応対処部隊が来たっぽい。急いで離れましょうネギ先生!」
「え?なんでぇ?」
「ああそっか。あの時木乃香は工学部までは行ってないんだっけ。」
「捕まった時は根掘り葉掘りしつこく尋問されて数時間は帰してくれませんでした・・・。」
「そうなん?それはマズイわぁ。」
「三十六計逃げるに如かずです。」
「いくわよ!ネギ!助けた人はとりあえずここにおいておきましょ!」
「あ、待ってください!明日菜さんー!」
タタタ
~47side~
「・・・行ったか。」
あの後、館内を一周して入口に戻ったが、警備員は案の定起こされており、来た道を戻るのは若干苦労したが、なんとかネギ一行が外に出るタイミングに合わせ、彼らの死角を縫って出入り口を通過できた。通過後、すぐさま近くの茂みに入り、スマホを取り出して電子励起爆薬を起爆した。
彼らは横の実験炉に誘爆したと思ったようだが、あの時実験炉は作動しておらず、誘爆するような構造でもなさそうだった。純粋に電子励起爆薬800gの為せる技ということだ。茶々丸が観測した不自然な電磁波は励起させる際に発生したものだろう。
爆発によって建物は半分以上崩壊し、ラボがあった部分にはクレーターまで出来ている始末。建物の反対側だったが、こちらにも十分に衝撃波と爆風が来ていたし、入口前の道路にはガラス片や様々な資料の書類やらタブレットの残骸などが散乱している。
私もその即応隊とやらに出くわすわけには行かないので早々にその場を立ち去った。
~~~5時間後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『47、ちょっといいかしら?』
「なんだ。」
『先の作戦のことでちょっと。』
「珍しいな。デブリーフィングは先程終わったはずだが。」
『ええ。上級委員会は満足していたわ。実験炉からは大量の死体の残骸。学園当局はまだ被害者の正確な人数を把握しきれていない。ターゲットが居たボイラー室も一緒になって吹き飛んでるからターゲットの遺体も粉々。すべて要求通り。・・・に見せかけたんでしょう?』
「・・・。」
『キャロラインが気がついてるわよ。あとAIたちも。ネギ・スプリングフィールドに助手達の一部を逃がすように助言をしたようね。』
「何のことだ。」
『とぼけなくていいわ。断罪するつもりも告発するつもりもないから。』
「ほう?」
『AI達によって記録は抹消。知るものも他には居ないはずよ。』
「良いのか?命令に逆らっているわけだが。」
『いいのよ。私だって今回の任務に疑問がなかったわけじゃない。AI達も正当性には疑問が残るって判断だったしね。でも懸念事項はあるわ。』
「懸念事項?」
『ウィートリーよ・・・。』
「ああ・・・。」
『うっかり漏洩しそうな箇所筆頭だからね。』
「・・・記憶を削除することは?」
『無理ね。AIのシステムに干渉するのは上級委員会の承認がいるシステムになってるから。』
「・・・うっかり喋らないことを祈るしか無いな。」
~~ミッションコンプリート~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・「この手に限る」
【+1000】『警備室のサーバーを破壊する。』
・「オーバークロック」
【+1000】『制御室に爆弾を仕掛ける。』
・「陳腐化した技術」
【+3000】『ターゲットをボイラー室の蒸気で殺す。』
・「取捨選択」
【+5000】『研究助手を何人か殺し、何人か助ける。』
「人には、正しい法には従う義務がある。しかし同時に、不当な法には従わないという道徳的責任も負っているのだ」~マーティン・ルーサー・キング・ジュニア
次は重要な調査に赴きます。全員集合回の予定です。