ランナー   作:Zizzi

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第五章:棘ソーン(1)

配電ステーションのメインビル奥深くの空気は、外の廃墟よりもいくらか希薄だった。廊下の突き当たりでは、薄暗い黄色の警戒灯が断続的に点滅しており、まるで死んだ魚の目に残る最後の一筋の反射光のようだった。壁沿いのエネルギーパルス線はとうに枯渇しており、たまに点滅する微光だけが暗闇の中でもがいていた。

一戸の足取りは軽やかで緩やかだった。遠くから不規則なカチャカチャという音が聞こえてくる。何か劣化した機械がまだゆっくりと稼働しているかのようだ。空気中には強烈な金属の錆の匂いと、消毒剤の残留物による化学的な刺激臭が蔓延していた。

義眼・オラクルが環境スキャンのインターフェースをポップアップさせた。

【マイクロ動能捕捉デバイス:アクティブ】【電磁誘導式レールガン:2門——キャリブレーション完了】

一戸は冷笑した。やはり簡単には通してくれないらしい。

次の瞬間、頭上の電磁レールガンのロックオン警報が唐突に鳴り響いた。2本のレーザー照準線が天井の両側から交差して降り注ぎ、彼の胸元に迫る。

彼は猛然と側壁に向かって飛び込み、足元のケーブルを踏み砕きながら転がって起き上がった。2発の高エネルギー弾が瞬時に空気を切り裂き、彼が先ほど立っていた位置に椀ほどの大きさの溶融穴を2つ穿ち、鋼板の縁には煮えたぎるような焦げ跡が浮かび上がった。

土埃が晴れるのを待たず、彼は軽率に動くことはせず、眼差しを沈め、わずかに首を傾げた。義眼・オラクルが微かに光り、戦術インターフェースが【侵入プロトコル】モードへと切り替わる。

電磁ストリーム捕捉モジュールが密かに起動し、急速にデコードされるプログレスバーが彼の視界の端で狂ったように跳ね回る。次の瞬間、内部のセキュリティポートがハッキングされ、一条のコマンドが神経リンクの中で密かに実行された。

【遠隔権限の奪取に成功——サーボ基台の電源切断——レールガン停止】

頭上の砲口が微かに止まり、ロックオンの赤い光が瞬時に消えた。一戸は口角をわずかに上げ、手を上げて2発の震盪弾(コンカッショングレネード)を抜き出し、そのまま天井の予備制御モジュールに向かって投擲した。

爆裂音が連続して鳴り響き、破片と火花が降り注ぐ。彼はその勢いに乗ってダッシュし、廊下の縁に沿って転がり、跳躍しながら進んだ。

【自動防御——完全無効化】

義眼・オラクルのプロンプトが浮かび上がる。一戸は濁った息を吐き出し、戦術スキャンでロックオンした熱源の軌跡に沿ってさらに前進した。

ついに、半開きになった安全ハッチの前で、彼は足を止めた。中からは、まるで檻に囚われた獣のような、切羽詰まった低い喘ぎ声が聞こえてくる。

彼がハッチを押し開けると、目に飛び込んできたのは床一面に散乱した工具、データケーブル、そして破損したインプラントだった。作業台の中央には、ボロボロの白衣に身を包んだ痩せこけた長身の人影がうずくまっており、その胸にはデータモジュールがしっかりと抱き抱えられていた。

「く、来るな……」その声は掠れて干からびており、狂気を帯びていた。「俺は何も持っていない……リストは、リストはもう俺の手にはない……奴らが……奴らが持っていった……お前らがとうに持っていったじゃないか!」

一戸はゆっくりと歩み入り、打刀を自然に下ろし、冷徹な眼差しでその人物をロックオンした。「棘ソーンか?」

相手の身体がビクッと震え、まるで喉を絞められたかのように硬直した。

「お、お前も俺を殺しに来たのか?」棘ソーンは喉を詰まらせ、錆びた鉄がこすれるような声を出した。彼の瞳孔は激しく収縮し、恐怖と絶望に満ちていた。

「はっきり言え——『リスト・プロジェクト』のデータはどこだ?」一戸の声は低く、まるで廃墟の奥深くから滲み出る寒気のようだった。

棘ソーンは全身を震わせ、いつでも首が折れそうなほど激しく首を横に振った。「俺のところにはない……もうここにはない……誰かに奪われたんだ! 俺はただの……ただの捨て駒だ!」

一戸はゆっくりと肉薄し、冷ややかに遮った。「データはいくつある?」

棘ソーンは隅に縮こまり、指でデータモジュールを死に物狂いで掴んでいた。血走った両目は狂ったように震えている。「マスター……マスターしかない……コピーはとうに消去された……お前ら……お前らに俺は騙されないぞ……どうせ俺はもう生きられないんだ……」

「誰がコピーをいじった?」

「知らない! 俺は知らない!!」

一戸は眉を微かにひそめ、眼差しに一抹の焦燥感をにじませた。目の前の男がすでに崩壊寸前であり、情報の価値が急速に失われつつあることを彼は理解していた。

「リストの名前……俺は見たぞ……そこには…………お前が……お前がいた……」

言い終わる前に、部屋が突如として激しく震動し、遠くから金属が引き裂かれるような音が連続して響いた。一戸が猛然と振り返ると、義眼・オラクルが廊下の突き当たりで起動した重い扉がゆっくりと開いていくのを捉えた。

 

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