ブルアカの世界に転生したけどもう終わってました!? 作:MIKAZUKIN2525
「⋯⋯眠れねぇ。」
桜木レオは緊張で眠れなかった。
それは数時間前、今日の業務の終わり頃のことであった。
『あぁ、そういえば、レオ君。明日から当番制を復活させるから、よろしく。』
『はい、わかりまし⋯⋯た⋯⋯って、えぇっ!?』
『どうしたんだい、そんな驚いて。ただこのシャーレの中が少し賑やかになるだけさ。』
『え、えぇ⋯⋯』
先生から告げられた「当番制」という言葉。シャーレに存在する制度のことで、最近までは休止されていたのだ。
そしてその制度の内容は希望の生徒1人がシャーレに訪れ業務の手伝いなど様々なことをするといった内容だ。
つまりだ。これはレオがキヴォトスの生徒と会うチャンス⋯⋯なのだが、彼にとってはそうはいかなかったらしい。
「先生と話すのは慣れてきたけどさぁ!生徒と話すのはほとんどないからむりだって!」
レオは枕に顔を埋めながらそう叫んだ。
彼はコミュ障であり、人見知りでもあった。といっても、そこまで重度のものではないため本人はあそこまで心配する必要はないだろう。
「というか、結局誰が来るかは聞けなかったし⋯⋯。⋯⋯うん、明日のことは明日考えよう、そうしよう。」
そうしてレオは無理やりにでも眠ることにした。
■
翌日
結局のところあまり眠ることのできなかったレオは、なんとかしてその眠たく重い瞼を開け、業務の準備をしていた。
「おはよう、レオ君。⋯⋯って、どうしたんだい、今にも死にそうな顔してるよ?」
「誰のせいだと思ってるんですか⋯⋯」
「えっ、私かい!?」
相変わらずオフィスに少し遅れて入ってきた先生との会話を交わし、少しは緊張がほぐれる⋯⋯わけもなく。
「(うへぇ⋯⋯心臓バクバクだよ⋯⋯ほんと誰が来るんだろう⋯⋯こっちに来て、生のネームドはカンナだけだったからな⋯⋯)」
「レオ君?おーい、レオくーん!」
先生がレオの目の前で手を振っていても気づかない。それほどまでに緊張、そして考え事をしていた。
「(来たらまずはどうする?もちろん挨拶だよな。後は自己紹介⋯⋯でも、そんな事俺にできるのか?『おはようございます。』?それとも『始めまして』?⋯⋯いやいやいや!無理ゲー過ぎないか!?)」
「ダメだこりゃ。」
先生はレオを正気に戻すことを諦めた。
そんなこんなで数分が経った時、オフィスの扉が再び開いた。
そして入ってきたのは、銀髪にケモミミが生えた少女、砂狼シロコであった。
「ん、先生、おはよう。」
「おー、おはよう。シロコ。」
シロコはオフィスに入り、いつもの定位置であるソファに向かおうとするが、オフィスのどまんなかに立っている1人の人物に目が留まった。
ブツブツと何かをつぶやきながら立つ”男性”。ただ単純に気になっただけかもしれない。でも、シロコの視線はその人物に釘付けになっていたのだ。
「シロコ、どうした?」
先生の呼びかけには答えず、シロコはその男性、レオに向かって歩いていた。
「あなたは、誰?」
とんとんとレオの肩を叩き、声を掛ける。
「は、はいっ!?」
肩を叩かれたことにより一気に現実に戻ってきたレオは、肩を震わせ返事をした。
「ん、驚かせた?ごめ⋯⋯」
シロコの言葉がそこで止まる。
振り向いたレオと目が合う。そして、シロコは自分がなぜこの人物に視線が釘付けになったのかの本当の理由が分かった気がした。
「(なに⋯⋯この感覚⋯⋯この人から目が離せない⋯⋯それに⋯⋯胸が、どきどきする⋯⋯)」
そう、いわゆる一目惚れというものだろう。シロコはレオに惚れてしまったのだ。
「あっ、あの⋯⋯」
「はっ!⋯⋯ご、ごめん、何?」
「とりあえず⋯⋯⋯⋯自己紹介でも⋯⋯」
「あ、うん。そうだね⋯⋯」
そうして、少しは落ち着いた2人はソファに向かい合うように座り、自己紹介を始めた。
「じゃあ俺から⋯⋯。⋯⋯ついこの間からシャーレで勤務することになりました、桜木レオと言います。」
「ん、私はアビドス高等学校の2年生、砂狼シロコ。よろしく、レオさん。」
「は、はい。こちらこそ、シロコさん。」
2人は握手を交わした。
⋯⋯ちなみに、お互いの心臓の鼓動はありえないほど早くなっていた。
「はいはい。自己紹介が終わったら業務に入ってね、レオ君?」
ぱんぱんと手を叩き、少しばかり固くなっていた空気を先生は和らげた。
「あ、すみません!すぐに!」
レオは自信の机に向かった。
「先生、私は?」
「ん〜⋯⋯シロコは好きにしてていいよ。今日はそんなに忙しくないし。」
「そう?じゃあ⋯⋯」
シロコはちらりとレオの方を見た。既に仕事を始めていて、黙々と進めている。
そして⋯⋯
「ん、私はレオさんのお手伝いをする。」
「えっ、あっ⋯⋯そう?じゃあ、お願いしようか。」
「任せて。」
シロコは立ち上がり、レオの机へと向かった。
「ん?ああ、シロコさん、どうしたんですか?」
「ん、レオさんのお手伝い。」
「え?そ、そんな、悪いですよ。」
「いや、私がやりたいと思ったからやる。私だって、ある程度のことはできる。」
書類をいくつか手に取り、シロコはレオの隣に座った。
「そう⋯⋯ですか。なら、お願いしますね、シロコさん。」
「ん!」
■
「ふぅ⋯⋯お疲れ様でした、シロコさん。」
「ん、ちょっとだけ疲れた。」
何事も無く書類がすべて片付いた。
「シロコさん、今日手伝ってくれたお礼をしたいんですけど⋯⋯」
「ほんと?」
レオが言ったその言葉に、シロコは目を輝かせた。
「じゃ、じゃあ⋯⋯」
うーん、とシロコは悩み始める。
レオの目には、見えないはずの尻尾が揺れる様子が見えた。
「(⋯⋯やっばい、ここまで緊張と集中でちゃんと見てこなかったけど⋯⋯可愛すぎるわ⋯⋯さすがメインヒロインと言ったところか⋯⋯?)」
そして数秒後。シロコが決心したように口を開いた。
「⋯⋯と。」
「?」
「で、デート、しない?」
「は⋯⋯」
「ごめん、やっぱ⋯」
デート。それは主に男女が待ち合わせをし、お出かけをするというもの。もちろんだが、レオにその経験はない。また、キヴォトスには男性というものがいないためシロコも同様である。
恥ずかしくなり、顔がほんのりと赤くなっているシロコは、言葉を撤回しようとした。
でも。
「⋯⋯いいですよ。」
「え?」
「俺は構いません。どこに行きたいですか?」
「え、あ、じゃあ⋯⋯⋯⋯銀行⋯⋯とか?」
レオの思わぬ返事に、シロコは動揺して変な返答を始めた。
「わか⋯⋯え、銀行?」
「れ、レオさんと⋯⋯銀行強盗してみたいな⋯⋯って。」
⋯⋯だとしても、デートとして銀行強盗を提案する人間が他にいるのだろうか。
「(そうだ⋯⋯シロコは暇さえあれば銀行強盗のことを考えてるんじゃないかってくらいの子だった⋯⋯!)」
「ちょいちょいちょーい!!!」
レオが返事に困っていると、先生が割って止めに入った。
「銀行強盗はアウトだから!というか、デートするって話じゃなかったの!!?」
「あ、ご、ごめん⋯⋯」
正気に戻ったシロコは少しばかりしゅんとし、落ち着いた。
「じゃ、じゃあ、また考えたらお願いしますね?シロコさん。」
「ん⋯分かった⋯⋯」
このまま考えてもいい案は出ないだろうということで、この日は一旦変えることにしたシロコ。
「あ、レオさん、これ⋯⋯」
帰り際、シロコはメモの切れ端を渡した。
「私の連絡先。いつでも連絡して。」
「! ありがとうございます。じゃあ、また。」
「うん。またね。」
そうして、シロコは帰っていった。
■
次の日
「あ、シロコ先輩、おはようございます。」
「ん⋯⋯」
「?」
「シロコちゃん、何かありました?」
体調が悪そうではない。ただ、何かを想っている雰囲気がシロコからは出ていた。
「昨日の当番で何かあったんじゃない?久しぶりだったし。」
「それもそうですね〜」
「ん⋯⋯好き⋯⋯」
ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。
本作はこのようなスタンスで行こうと思います。
バンバンいろんなキャラを出していきたい。