ブルアカの世界に転生したけどもう終わってました!? 作:MIKAZUKIN2525
「痛っ!」
業務中の静かなオフィスに一つの声が響いた。
「? 先生、怪我ですか。」
「ああ⋯⋯紙でちょっとね。」
どうやら、先生が紙で手を切ってしまったらしい。紙なのでそこまで深くはないが、ヒリヒリとした痛みを先生は感じていた。
「絆創膏とってきます!」
そうレオが立ち上がったときだった。
ヒュンッ!!
軽い風切り音が聞こえた。
「先生っ!」
そして、気づけば先生の隣にナース服を着た1人の生徒が立っていた。キヴォトスではそうめずらしくもないビンク色の髪に一本の羽が垂れている。
レオが”ブルーアーカイブ”の中でも知っている生徒だ。
「怪我したところを見せてください。」
「ああ、セリナか。いつも助かるよ⋯⋯」
そう。トリニティ総合学園2年、救護騎士団に所属している鷲見セリナである。
「(ちょいまって、あれ瞬間移動!?この目で見ても信じられないな⋯⋯)」
セリナが先生の手当を始めレオがやることはなくなり、その光景を眺め、目の前で起こった謎の現象に考えを巡らせていた。
「⋯⋯はい、終わりです。こういった小さな傷も危ないんですからね?」
「うっ⋯⋯気をつけるとするよ⋯⋯」
セリナは手際よく手当を終わらせた。
すると、少し困惑したように先生へと質問をした。
「えっと⋯⋯さっきから気になっていたんですけど先生、あちらの方は⋯⋯?」
セリナの視線の先にはレオがいる。レオはゲームの知識として彼女を知っていただけであって、ここでは初対面だった。
「ああ、彼はレオと言ってね。私の右腕のようなものだよ。」
「なんですかその紹介⋯⋯まあ、はい。桜木レオと言います。」
「レオさん⋯⋯」
紹介を受けたセリナはレオをじっと見つめる。
「⋯⋯」
「あの⋯⋯?」
「⋯⋯鷲見セリナです。怪我をしたときは遠慮なく言ってくださいね。」
「何だったのその間は⋯⋯」
何を見ていたのか、何を考えていたのか。それは本人にしか分からないことだ。
「というか、セリナはどうしてここに?」
「たまたま近くを通っただけですよ?でも、こうして先生の手当をできましたから。」
「それもそうだね。」
そう言うと先生とセリナはお互い微笑んだ。
「(え、何今の会話!?あの瞬間移動をあたかも普通みたいに⋯⋯。いやでも⋯⋯言及するのも野暮なのか⋯⋯)」
目の前で起こった異質な会話にレオはほんの少しの恐怖を覚えながらも、結局は”そういうもの”として受け入れることにした。
「では先生、また。」
「ああ、気をつけて。」
先生の手当という仕事が終わったセリナはオフィスを後にした。
「ふう⋯⋯。いつ見ても彼女には驚かされるね。」
彼女が去った後、先生は椅子に深く沈み、そうつぶやいた。
「えっ。」
「? どうしたんだいレオ君。そんな変な声出して。」
「変な声って⋯⋯いや先生、あの瞬間移動は普通の事みたいに言ってたじゃないですか。」
驚かされたと言うのはおそらくセリナの瞬間移動のことだろう。だが、先程の彼女と先生の会話では先生はそれを受け入れているように話していた。
だからこそ、レオは疑問に思ったのだ。彼自身も”そういうもの”として受け入れたから。
「いや、驚かないわけないだろう?ただ、別に悪用しているわけでもないし、特段何も言うことがないってだけだよ。」
「は、はぁ⋯⋯」
「む、なんだい、そんな妙な顔をして。」
「いやまあ⋯⋯別に⋯⋯」
レオは内心ほっとしていた。だが結局、あの瞬間移動については何も分からずじまいだが。
「まあ、彼女はいい子だからね。レオ君も今後トリニティに行く機会があったら救護騎士団に行ってみるといい。」
「⋯⋯そんなこと言って、俺は先生についていくだけなんですけどね。」
「ははっ、それもそうだったね。」
■
数日後。
「はぁ⋯⋯先生も人使いが荒いもんだよ⋯⋯」
レオはシャーレの廊下を1人で歩いていた。
目的地は倉庫である。先生に頼まれ、保管されている備品を取りに行くために。
「こほっ⋯⋯埃っぽい部屋だなぁ⋯⋯」
倉庫に到着したレオは目的の物を探して中を進んでいく。
「えーっと、3番目の棚の一番上⋯⋯⋯⋯あ、あれか。」
棚の一番上にある段ボールが目当てのものである。
だが、棚は想像以上に高く、脚立無しじゃ到底手も届きそうに無かった。
「脚立、本当に必要だった⋯⋯」
レオは脚立を開いた。何故彼が都合よく脚立をもっているのかと言うと、先生がこの状況を知っていたため、彼に脚立を持たせたからである。
『あれ、高いところにあるから脚立を持っていくといい。』
「⋯⋯まぁ、なら先生が自分で行ってくれって話でもあるけど⋯⋯」
そうつぶやきながらも、レオは自分に仕事が与えられていることに少しの安堵を覚えていた。
「よっこいしょ⋯⋯⋯意外と重い⋯⋯」
レオは段ボールを持ち出すが、予想外の重さにふらつく。
そして。
「っとと⋯⋯⋯うわぁぁっ!!」
レオは脚立から転落した。
「いっっっっってぇぇぇっ!!!」
強く腰を打ち、そこに追い打ちを掛けるように段ボールの中身が襲った。
「う、動けない⋯⋯」
痛み、そして小物の山が彼が動こうとするのを拒んでいた。
どうしようかと困っていた時、どこかで聞いたことのある小さな風切り音が鳴った。
ヒュンッ!!
「大丈夫ですかっ!!?」
そして、レオの目の前にセリナが現れた。
「⋯⋯天使様?」
「! ⋯⋯いえ、セリナです。」
「ああ、セリナさんですか⋯⋯助けに来てくれたんですね。(相変わらず、原理の分からない瞬間移動だったけど⋯⋯)」
セリナはうんしょうんしょと小物の山を片付けていく。
「レオさん、どのように落ちたんですか?痛いところは?」
山を片付けたセリナは救急箱を取り出しながら、レオに質問する。
「後ろ向きに倒れちゃいまして⋯⋯腰をかなり強く打っちゃいましたね⋯⋯」
「分かりました。とりあえず怪我の具合を見たいのでうつ伏せになれますか?」
「ああ、はい。」
レオは言われた通り体を回し、うつ伏せの体勢になる。
そして、セリナはレオの服をめくり、怪我の具合を確認していく。
「(う⋯⋯恥ずかしすぎじゃない⋯⋯?)」
「かなりひどいですね⋯⋯とりあえず湿布は貼りますけど、2日くらいは安静にしてください。」
肌を見られ触られ恥ずかしく思っているレオの反面、セリナはテキパキと手当を進めていく。
「はい、終わりです。」
「ううっ⋯⋯ありがとうございます⋯⋯助かりました。」
そして、レオは立ち上がろうとする⋯⋯が。
「いててて⋯⋯」
痛みが酷く、上手く立てない。
すると、レオの横にスッとセリナが入った。
「とりあえず、オフィスまで行きましょうか。先生にも伝えたいので。」
セリナはレオの腕を自身の肩へと回し、優しく支える。
「すいません、わざわざ⋯⋯」
「いえ⋯⋯これも約得⋯⋯じゃなくて役目なので!」
そうして、2人は歩き始める。
「すぐに来てくれて助かりました⋯⋯あのままだったと考えると⋯⋯」
「ふふっ。レオさん、この前会ったときから思ってたんです。危なっかしい人だな⋯⋯って。」
「えっ。」
「だから、ちょっとだけ監視してたんです。そしたら、ちょうど。」
「な、なるほど⋯⋯(何この子。ちょっと怖いんですけど。)」
結果的に助かったからよかったのではないだろうか。⋯⋯まあ、監視されていると言うのは恐怖ではあるが。
そう話しているうちに先生のいるオフィスへと到着した2人。
「レオ君、遅かったじゃない⋯⋯か⋯⋯」
「先生、すみません、ちょっとドジっちゃいまして⋯⋯」
「先生、レオさんのことについてなんですけど⋯⋯」
「⋯⋯」
先生はフリーズした。
先生を起こすのには、かなり苦労したそう。
■
「ふむ⋯⋯桜木レオさんですか⋯⋯」
救護騎士団の部室。1人の少女のつぶやきが響く。
「確かに、セリナの言うとおりですね。先生と同じようにヘイローはありませんし、それに⋯⋯危なっかしい。」
少女は盾と銃を持つ。
「いずれ、会いに行ってみましょう。セリナがあそこまで気に入っているのも気になりますし⋯⋯」
ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。
お久しぶりです。お気に入り登録、評価いつもありがとうございます。