ブルアカの世界に転生したけどもう終わってました!? 作:MIKAZUKIN2525
「(拝啓、母さんへ。助けてください。こんな高貴な場所に俺がいていいんでしょうか。)」
「先生、最近のご活躍も耳にしています。」
「ありがとう。そっちはどう?目立った事件とかは聞いてはいないけど⋯⋯」
「別に大丈夫だよ?まあ、確かにそれぞれの派閥争いは相変わらずだけど。」
「だが、それは永久の問題だ。解決はないものと考えるべきだろうね。」
日の射すテラスの長テーブルの各辺に座るティーパーティーの面々。そして先生。それぞれが会話に花を咲かせ、紅茶を嗜む。
その所作には高い気品が感じられ、自認が庶民であるレオにとってはかなり居た堪れない気持ちになってしまう。
「それで、そちらの男性が。」
「うん。うちでよく働いてくれるレオ君さ。」
ティーパーティーの1人、桐藤ナギサからの質問により、全員の視線がレオへと向く。
だが、この部屋に入る以前から、トリニティの上品な空気感に当てられているレオはずっと固まっている。視線が向けられたともなれば尚更だ。
「へぇ〜⋯⋯かっこいいじゃん☆」
「興味深いね、自己紹介でもお願いしようか。」
もちろん、他のティーパーティーの聖園ミカ、百合園セイアの興味もレオへと向いた。
余計にレオの緊張感が高まっている。
「(助けて⋯⋯!)」
「(無理だね。というか、自己紹介するだけだろう。)」
レオは視線を先生へ送り、助けを求めるが、呆れた顔が帰ってきただけだった。
結局の所、レオは深く呼吸をし、おずおずと口を開いた。
「ご、ご紹介にあずかりました、桜木レオと申します。よ、よろしくお願いしましゅ。」
「「「⋯⋯」」」
数秒の沈黙が流れた。
「(お、終わった⋯⋯付け焼き刃のマナーなんかじゃダメだったか⋯⋯噛んだし⋯⋯)」
「ふふっ、よろしくお願いします。レオさん。」
レオが終わったと思う反面、穏やかな空気が流れ始める。
「うーん、レオさん?レオ君?どっちがいいかな⋯⋯」
「レオ君はなんて呼ばれても気にしないさ。だろう?」
「は、はい。」
「そっか!じゃあレオ君で!」
「私も、よろしく頼むよ、レオ。」
レオが心配していたほど恐れることは無く、皆は微笑み、優しくレオに接した。逆に恐れていたことをレオは後悔するほどだ。
「それにしても、先生、良い殿方をお捕まえになられましたね。」
「ん?ああいや、どちらかと言えば彼の方から来たというべきかな。というか、捕まえたって⋯⋯彼はただの職員だよ。」
「そ、そうですか⋯⋯」
「ふーん、2人は別に特別な関係じゃないってこと?」
「はい、そうですよ。」
「まあ、共に一夜を過ごした仲ではあるけどね。」
先生の爆弾発言が投下された。
「「「!!?」」」
「してないです。先生、嘘はやめてくださいね。」
すぐに消火された。
「ほっ⋯⋯よかったぁ⋯⋯」
「ミカ、何がよかったんだい?」
「な、何でもないじゃんね!!?」
ミカの発言からは何か特別な感情が感じ取れた。まあ、レオがそれに気づくことは無かったが。
「それでは、良い時間ですので本日はこれでお開きにいたしましょうか。」
「分かったよ。今日もありがとう。」
「こちらこそ先生、それにレオさんも。本日はありがとうございました。」
「レオ君、また会おうね〜!」
「レオ、いつでも私は待っているからね。」
「えっ、は、はい。じゃあ⋯また⋯⋯」
そうして、レオたちはテラスを後にした。
レオたちが去った後のテラスには、一つの声が響いた。
「あ!!レオ君と連絡先交換するの忘れちゃった!!!」
バンと机を叩き、立ち上がったミカの声である。
「落ち着きたまえ、ミカ。いざとなれば先生から聞けばいいだけさ。」
「むぅ〜⋯⋯でも、本人から直接聞きたかったんだもん⋯⋯」
「ふふっ。」
ミカが落ち込んでいると、ナギサが微笑んだ。
「え!?ナギちゃん⋯⋯まさか⋯⋯」
「ええ。ミカさんが来る前に聞いておりました。」
「私もだ。」
「え!!?」
ナギサとセイアはスマホを取り出し、”桜木レオ”と表示されたトーク画面をミカに見せた。
「嘘!?あり得ない!!」
「あり得ないも何も、ミカさんが来るのが遅れたのが原因じゃありませんか?」
「そうだね。これに関しては何も言えないね。」
「ぐ、ぐぬぬぬぬ⋯⋯」
「では、彼を今度アフタヌーンティーにでも誘いましょうか♪」
「ぬううぅぅぅぅううう!!!」
どこまでも上機嫌なナギサ。落ち着きながらも内心はとても喜んでいるセイア。悔しさで頬を膨らませ、どうしようかと悩むミカ。
3人の恋心は、始まったばかりである。
■
「はえ〜⋯⋯どこを見ても、”お嬢様学校”って感じだな⋯⋯」
別の日。今度は純粋な観光目的でトリニティ自治区を訪れていたレオは、建っている建物や行き交う生徒を見て、トリニティという場所の高貴さを改めて実感していた。
前世、高貴⋯⋯言うなればお金持ちというものはレオにとって夢のまた夢、天上の存在であったため、この光景は目新しいものだらけだった。
「次はこっちの道に行ってみよう。」
そしてレオが別の道を歩んでいく。そこは先程までとは違い、幾分かの自然を感じられる場所だった。
「ん〜⋯⋯はぁ〜⋯⋯。空気が美味しい⋯⋯」
レオは大きく深呼吸をする。爽やかな風が吹くこの場所には他の人影は無く、とても静かだった。
ただ⋯⋯
「あ、あれ⋯⋯って⋯⋯」
道端の草むらに、どこかで見たことのある大きなヘイローとピンク色の髪が見えた。
レオはその見えた少女の元へ歩いていく。すると、足音で気づいたのか、少女は振り向いた。
「あれ、レオ君!?」
「やっぱり、ミカさんでしたか。」
その少女とは、ティーパーティーが1人、聖園ミカであった。2人が会うのは、この前の茶会以来であった。
「やっと会えたね!シャーレの当番は最近無かったし、ほんとラッキー!」
「それはよかったです。⋯それで、ミカさんは今何を?それは草むしり⋯⋯ですよね?」
「うん。そのまんまだよ。ボランティアで草むしりをしてるの。」
言われてみれば、ミカの服装はいつもの制服では無く、ジャージ姿で、髪も左右2つのお団子に結っていた。おそらく、動きやすく、邪魔にならないようにするためだろう。
「それは⋯⋯すごいですね。」
「! ほんと!?」
褒められたミカはパッと笑顔でそう言った。
「はい。ミカさんはティーパーティーですけど、こうやってボランティアで草むしりをしている⋯⋯どう見ても良いことだし、すごいじゃないですか。」
「う⋯うん⋯⋯ありがと⋯⋯」
様々な理由があるこのボランティアでも、褒められれば素直に嬉しいものだ。ミカの顔はほんのりと赤くなっていて、声も小さくなっていた。
「もし一段落していたら、少し休みませんか?」
レオは近くのベンチを指さしながらそう言った。
「あ、うん!ちょうど一段落ついたところだったんだ〜⋯⋯。」
「それはよかった!じゃあ、一休みということで。」
そうしてレオとミカは近くのベンチに座った。
「そう言えばミカさん、飲み物とかありますか?荷物とか見当たりませんが⋯」
「実は、今日忘れちゃってて⋯⋯」
「なら⋯」
そう言うと、レオはカバンから水筒を取り出した。そして、ミカに差し出した。
「飲みかけですが、よければ。」
「え!?う、うん⋯⋯もらうね。」
何故彼は気づかないのだろう。デリカシーがない⋯⋯というわけでもなさそうで、ただただ鈍感、もしくは天然ということなのだろうか。
「これって⋯⋯か、間接⋯⋯」
ミカは一瞬ためらうも、一口飲んだ。
草むしりで疲れた体にその水分はとても沁みる。ただ、別の感情が邪魔をするのであった。
「あ、ありがとう⋯」
「はい。」
ミカはレオに水筒を返す。そして、2人の間に沈黙が訪れた。
「(ま、まずい⋯⋯休憩しましょうなんて言った手前、何も話すことがない⋯⋯)」
「(うぅ⋯⋯緊張で何も話せないじゃんね⋯⋯)」
そして、沈黙を破ったのは⋯⋯
「れ、レオ君!」
ミカであった。
「は、はい!」
「あの⋯モモトーク、交換しない?」
そして提案したのは、この前やりそびれ、後悔として残った連絡先の交換であった。
「! ぜひお願いします!」
「ほんと!?やった!」
2人はスマホを取り出し、せっせと操作をして交換を済ませる。
「おぉ〜⋯⋯」
「そ、そんなにですかね⋯」
ミカはスマホに映し出されたトーク画面を宝物を見るような目で眺めていた。
「レオ君!これは私にとって命よりも大切なものだよ!!」
「だからどうしてそんなに!!?」
当たり前と言えば当たり前だろう。ミカにとってこれは好きな人と話すことができるツールなのであるから。それに、先を行くナギサ、セイアにも追いつくことができるというのも理由の一つだろう。
「あ、もうこんな時間。この後完了の報告とかもいかなくちゃいけないの。だからもう行くね!」
「あ、はい!俺の方こそ、引き止めてすいませんでした。」
「もう!謝ることじゃないよ!じゃあ、また連絡するね!!」
そう言うと、ミカは足早に去っていった。
そして、1人残ったレオ。
「やっぱ、かわいいなぁ⋯⋯」
どうやら、このままミカがリードしていくようだった。
ここまで読んで読んでいただきありがとうございます。
皆のレオの呼び方はそれぞれです。だけど、レオから皆に対してはほとんどがさん付けです。
ちなみに、今の目標は各学園の生徒と絡ませる、です。ですので、リクエストの消化はそれが済んでからになってしまうと思いますが、募集を止めはしないので、何かあればぜひ。
最後に、いつもお気に入り登録、評価ありがとうございます。欲張りをすると感想が欲しいです。
では。