ロードス戦記のロードス島を舞台にした二次創作小説 作:シットライヌ
主人公パーティー
役割・種族名前・特徴・設定
マーモ黒騎士(人間・男)弦九郎(ゲンクロウ)幕府体制のマーモ出身。遍歴の旅を続ける鎧武者。
戦士(ドワーフ・男)バルゴ。豪快で義理堅い歴戦の戦士。
レンジャー(ハーフエルフ・男)リュート。槍を操る、パーティーの斥候役。
精霊使い(エルフ・女)フィリア。マイペースだが強力な精霊魔法の使い手。
魔術師兼神官(人間・女)リアナ。知識神ラーダの神官。冷静に事態を分析したいが、常に周りの騒動に巻き込まれる苦労人。
鬱蒼と生い茂る木々の隙間から、青白い陽光が僅かに差し込む。「帰らずの森」——エルフたちの聖域であり、一度迷い込めば二度と生還できないと言われるロードス島屈指の魔境である。
「あーあ、完全に迷ったな、こりゃ」
ハーフエルフのリュートが、手にしたコンパス代わりの魔石を放り投げてぼやいた。
「エルフの血を引くお前でも駄目なのかよ!」
ドワーフのバルゴが短い脚で巨大な木の根を乗り越えながら毒づく。
「仕方ないだろ。ここは森そのものが幻惑の魔法帯になってるんだから。ねえ、フィリア。エルフのお前なら道がわかるんじゃないのか?」
リュートが振り返ると、エルフの精霊使いフィリアは、ふわりと宙を舞う光の玉(ウィル・オー・ウィスプ)を指先でつつきながら無邪気に笑った。
「うーん? 精霊さんたちも『みんな迷子〜』って言ってるよ。あはは、楽しいね」
「楽しくないわよ!」
知識神ラーダの神官リアナが、木の枝に引っかかったローブの裾を引っ張りながら叫んだ。
「カノン王国への近道だからって、こんな危険な森に入るなんて……そもそも誰よ、このルートを提案したのは!」
四人の視線が、先頭を歩く漆黒の鎧武者に一斉に注がれる。
マーモ黒騎士・弦九郎は、振り返ることなく淡々と答えた。
「武士たるもの、常に困難な道を選ぶことで己を鍛えねばならん。それに……道が無くば、切り開くまで」
「そういう脳筋なところが一番厄介なのよ!」
リアナの悲鳴が森に響き渡った直後、弦九郎の足がピタリと止まった。
「……開けた場所に出たぞ」
弦九郎が兜を上げて見据えた先には、周囲の自然とは明らかに異質な、白亜の石材で組まれた巨大な遺跡がそびえ立っていた。壁面には苔がびっしりと生え、気が遠くなるほどの長い年月を感じさせる。
「こいつは……古代魔法帝国(カストゥール)時代の遺跡か?」
リュートが警戒しながら弓に手を掛ける。
「野宿するよりはマシだな。よし、中を調べてみようぜ」
バルゴが斧を担いでずかずかと遺跡の入り口へと足を踏み入れた。一行もそれに続く。
しかし、五人が遺跡の広間へと足を踏み入れた瞬間——。
ズズズンッ!!
背後で轟音が響き、入り口の巨大な石扉が猛烈な勢いで閉ざされた。それどころか、扉と壁の境目が魔法の光とともに溶け合い、一枚の分厚い壁へと変化してしまった。
「なっ……入り口が消えた!?」
リアナが慌てて壁を叩くが、びくともしない。
「空間を歪める転移の罠ね……! 出口のない迷宮(ラビリンス)に閉じ込められたわ!」
「おいおい、冗談じゃねえぞ。どうすんだ大将!」
バルゴが叫んだその時、広間の奥からふわりと青白い光が漏れ出した。
冷たい空気が流れ込み、五人は一斉に武器を構える。
光の中から姿を現したのは、透き通るような肌を持った、絶世の美女の姿だった。古代の豪奢なドレスを纏い、その体は半透明に透けている。間違いなく、この世に未練を残した「生霊」であった。
美女の生霊は、虚ろで悲しげな瞳で弦九郎たちを見つめると、消え入りそうな声で紡いだ。
「ああ……貴方様たちは……あの方の使いの方ですか……? あの人は……いつ、私を迎えに来てくださるのでしょうか……」