手柄は全て人に譲っていたら解雇されたので、僕は競合他社で働くことになった。なんか普通にやっていたらいつの間にかプロデューサーまで上り詰めてしまった。   作:主義

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渕上レイ

渕上レイにとって三橋晃一という存在はとても大切だ。

 

切っても切れない関係と口にしてもいいかもしれない。

 

 

それは渕上レイが一方的に思っていただけだったのかもしれないが、少なくても彼女にとって三橋晃一との縁は切れないのだ。

 

 

これからも一緒にこのVTuberの世界を一緒に歩いていくはずだったが、ある日、三橋晃一は会社をクビになる。

 

 

 

これは渕上レイに会社への不満を抱かせるには十分な出来事だった。

 

彼女がこの事務所に入り、初期の頃からずっと支えてくれていた。VTuberとしてやっていく上で色んなことで悩むこともあったが、それに対しても真摯に寄り添い、一緒にやってきたのだ。

 

 

三橋からお世話になったのは渕上レイにもたくさん存在するのだ。

 

大なり、小なり悩み事は活動をしていれば一つや二つはあるもの。

 

その時に多くのライバーが相談する先として選ぶのは三橋だった。その理由はそれぞれだが、何より物腰が柔らかくライバー間の中で一番信頼されているスタッフというのがあるだろう。

 

 

 

元々、三橋晃一はこの事務所の中でライバーと接する機会が多かった。それは彼のコミュニケーション能力や相手との距離感などを活かす上で一番良いのは、ライバーと接する者だと入社した時に判断されたのだ。

 

 

そう判断した会社の判断は正しかったが、三橋を辞めさせるという決断は会社にとっては悪手だったと言わざる負えない。

 

 

各故、ここに渕上レイというライバーが事務所に対しての不満を募らせているのだ。

 

 

―――――

 

あるマンションのある部屋。

 

 

仕事場として使っている部屋で一人の女性が体育座りをしていた。その女性とは渕上レイだ。

 

「なんで三橋さんがクビになるの。あの人のお陰で、ライバーと会社の関係が良好になっていたことも分かってないの」

 

渕上は誰もいない部屋で事務所に対する不満を口にする。それほど渕上にとって、三橋が会社を辞めさせられたのは許せないことなのだ。

 

 

「何をするにしても、三橋さんが相談にのってくれた。どんな無理難題でも決して最初から無理と言わずに、どうやったら出来るかを一緒に考えてくれた。あれだけライバーに対して親身になってくれる人は多くないのに…」

 

ライバーからここまで想われるほどに三橋は信頼されていた。それは彼の日頃の接し方が彼女たちの信頼を少しずつ勝ち取っていったのだろう。

 

 

「正直、今すぐにでも私は三橋さんのところに行きたい。VTuberとしてやっていくのにはあれぐらい信頼できる人が側にいてくれた方がいい。それに三橋さん無しでやっていくのはちょっと考えられない」

 

そんな風に渕上は思っているが、それには問題がある。その問題というのは三橋の居場所が分からないということだ。渕上は三橋から仕事を辞めるという連絡はもらったが、転職先やこれから先どんな風にしていくかも聞いていなかった。

 

 

あの時は辞めるという単語が衝撃的過ぎて、これからのことなんて聞けなかった。

 

 

「念のためだけど、せれなにも聞いてみようかな。せれなが三橋さんのことについて知っているわけないとは思う。でも、聞くだけなら損はない」

 

そして渕上は新崎に対して、三橋について知っていることはないかと聞く。そこまで期待していないものの、万が一の可能性を踏まえて彼女はしばらく返信が来るのを待っていた。

 

 

数十分した後に新崎からの返信がきたが、その文面に渕上の顔は驚きを隠せなかった。

 

「…え……せれなのところにいるの」

 

 

その文面にはせれなの事務所に三橋さんがいるらしい。別に同じ系統の事務所に行こうと私はどうでもいい。

 

私としては三橋さんの居場所が分かっただけで十分。それにあの事務所だったら会おうと思えばいつでも会えないわけじゃない。

 

 

 

でも今までみたいに気軽に連絡が出来る感じじゃなくなる。他の会社のスタッフさんと連絡を取るなんて、あんまり良いことではない。

 

 

私自身は別にいいですけど、三橋さんに迷惑を掛けてしまう。今まで散々お世話になった身としては三橋さんに迷惑だけは掛けたくない。

 

 

「やっぱり…あっちの事務所への移籍も考えようかな」

 

私は元々個人勢として活動していて、企業にスカウトされる形で今の会社に来た。だから独立するという選択肢もある。

 

独立さえすれば、三橋さんと連絡を取っていても別に問題ないし。

 

 

 

だから今のところ、私には三つの選択肢がある。一つはこの会社に留まること、二つ目は三橋さんのいる会社に移籍、三つ目は独立する。

 

二つ目に関しては移籍できるかは未だの段階じゃ分からない。

 

あと三つ目はもし独立したら三橋さんのことを専属のマネージャーとして雇ってもいいかも。三橋さんが私の提案を飲んでくれるかは分からないけど。

 

 

色んなことを考えつつも、やっぱり一番は三橋さんに会いたいという気持ちが消えることはない。

 

 

「…一先ず、三橋さんに会いたいな」

 

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